其の陸拾漆:癒えぬ悼みと脅えの泣き声・参
最近忙しい今日この頃
週一にしようか検討中です
〜〜夜〜〜
「よし、 全員集合したな」
「なんで夜集合? 」
「キニシナ〜イ♪」
「気にしましょうよ、 その辺は読者も混乱しますし」
どうも、 スチルです
前回キマイラを追い払うことには成功しましたが、 凰輝さんがいきなり私たちを連れ出して今、 青葉さんの家の前にいます
なんででしょうか?
「キマイラは本来夜行性だからな
まぁ、 頑張れや」
『…………
えぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!?!? 』
「凰輝さんも頑張ってくださいよ!! 」
「やだよ」
「なんでだよ!? 」
「赤ん坊は嫌いなんだよ」
『んな理屈が通るかぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 』
「通せ」
『ハイ』
鋭い目付きに言葉を返す2人
うぅむ、 最近神の威厳が落ちている気が……
だれ? “んなもん最初からねぇじゃねぇか”っていう人は
「でもいざというときに頼りになる人がいないとねぇ〜♪」
「ねぇ〜♪」
「紗、 レナート、 てめえらなに考えてる? 」
「別に〜♪」
「別に〜♪」
なにかレナートが2人に増えた気がします……
「とりあえず俺は行かねぇ、 お前らだけで行ってこい」
「それはねぇ…♪」
「ねぇ♪」
ガシッ!
「……は? 」
紗さんとレナートが凰輝の肩と腋をがっしりと掴み、 ズルズルと引き摺りだす
「おい! 放せ!! 放せってんだろうが!!! 」
暴れだす凰輝さん、 相当体格がいいのにレナートはともかく、 紗さんの細腕で凰輝さんを引き摺れますよね……
あ、 もしかして氣を使って筋力を高めているんですかね? 結構氣は万能性があるって前に凰輝さんが言ってましたから
「放せやオラ!! 」
「だったら氣でも闘氣でも殺気でも全力で放てばいいじゃない
さすがに全力で放たれたら掴まえようがないよ」
「…うっ……!! 」
軽い闘氣だけでも泣かれていたのでありましょう
全力で、 無論殺気を放てば結果は火を見るより明らかでしょう
ですが………
「うぅむ……」
どん詰まりに陥った凰輝さんをズリズルと引き摺っていく2人
後でどうなっても知りませんよ〜…
「じゃ、 私たちも凰輝さんに言われた配置につきますか」
「お――! 」
「おぅ!! 」
「任せろい!! 」
雷華ちゃん、 フィア、 そして凰輝さんの姉、 琥鈴さんが気合いの声を上げる
やはり、 あの赤子を守りたいという気迫が感じれます
でも………
今夜来るとは限ら
「ぐぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉ!!! 」
『来た!! 』
…………
って、 数が多すぎます!
「…じゅ…15体…? 」
「…まだまだでてくるぞ…」
「どんだけ〜♪」
唯一お気楽そうな琥鈴さんは一番先頭に出ています
その体に闘氣がじんわりと満ちていく
凰輝さんほど苛烈で凄まじく殺意に満ちた氣ではなく、 戦うことそのものを楽しむような―――氣
そのため、 琥鈴さんが放つ氣は凰輝さんほど威圧的、 高圧的ではありません
「メガトンキィイィィック!! 」
ダッシュから繰り出した蹴りは先頭のキマイラの右側頭部に命中
口から血ヘドを吐き散らしながら勢いよく並木家の塀に激突する
「アッパーカットォ!! 」
今度はアッパーで別のキマイラのアゴを弾き飛ばす
歯と血を吐きながらそのキマイラは空を舞う
「北斗百〇拳!! 」
凄まじいラッシュ
数体のキマイラが吹き飛んでいく
でも、 なぜ伏せ字なんでしょう……?
彼女の頑張りで次々にキマイラが宙を舞い、 地面に叩きつけられていく
それでも数は一向に減る気配はありません
「しぶとい!! 」
蹴り一発
その一撃は数体のキマイラを巻き込み、 吹き飛ばしていきますが、 他のキマイラがそのスキを縫って彼女の脇を通りすぎていく
「私が行きます!
“ボルティック・ヴァンディ”!! 」
紅い雷を右手に宿らし、 雷華は琥鈴さんが捕らえそこなったキマイラ目掛け拳を突き出す
「“紅天”! 」
最初のキマイラが額に紅い雷を受け、 一瞬紅く光ったかと思いますとそのまま音もなく崩れ落ちる
「“紅燐”! 」
次に右肩に拳を突き出す
さっきと同じ様に、 一瞬紅く光ったかと思いますとそのまま音もなく崩れ落ていきました
一方、 フィアの方も健闘していました
「“炎弾釘”!
“轟炎散弾”! 」
炎の釘、 炎の弾丸が無数の敵に襲いかかる
釘に貫かれ、 火だるまになり、 無数の敵が転げまわっていきます
しかし、 ボロボロになりながらも数体のキマイラが立ち上がっていく
「しぶとい!! 」
“炎弾釘”“轟炎散弾”を次々に繰り出していきますが、 後から後から沸いてくるキマイラの群れに神力は削られていき
ついに
「…くそぉ…! 」
神力の大半を失い、 片膝をつく
身体中から汗を流し、 息も荒々しくなっています
一方の雷華も神力を使い果たし、 倒れる
「すみません…無茶しすぎました……」
彼女が使った技“ボルティック・ヴァンディ”は相当神力を削っていくみたいです
威力もそれにみあうだけあり、 彼女の周りには動かないキマイラが多数
いずれも外傷はなさそうです
キマイラの群れから一時的に彼女たちを守るため、 私は精神を集中しました
「“アイアンウォールα”! 」
鋼鉄の壁を召喚し、 2人をキマイラの群れから一時避難させる
琥鈴さんには申し訳ありませんが、 今は2人をなんとかすることが大切です
ゼイゼイと息をつく2人
私は彼女たちが倒したキマイラを観察してある事実に気がつきました
「だんだん大きくなっている……? 」
そう、 少しずつ
本当に少しずつですが確実にそのキマイラの群れは全長に差がありました
つまり………
「どういうことですか…?
……ま、 まさか!? 」
「しまっ……! 凰輝! そっちに何体か行った!! 」
こうしてはいられません
私は鋼鉄の壁を飛び越えると、 琥鈴と合流し、 キマイラ討伐に乗り出しました
やはり、 キマイラは少し大きくなっていました