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其の陸拾陸:癒えぬ悼みと脅えの鳴き声・弐

パソコン今までぶっ壊れてた―――――!!

まじすみませ―――ん!

おっす、 フィアだ

前回からの続きで青葉の家に到着したぞ

凰輝は入ってこなかったけど、 今回は凰輝の言うことを信頼しよう

勢いよく塀を飛び越えると、 青葉がライオンらしいものと対峙していた

しかも数体

青葉は1.5mほどの鉄骨を持って戦っているが、 身体中に無数の裂傷が

いずれも紅葉って奴より傷は浅そうだし、 血もほとんど止まっている

2体のライオンもどきが青葉の脇を通り抜けようと走り出す


「……ここは……通さない……! 」


バキッ!!


1体が青葉の一撃を受けて大きく仰け反る

だが、 残りの1体が青葉の攻撃をかいくぐり、 家に飛び込もうとしている


「しまっ……! 」

「任せろぉ!! “轟炎弾(メガ・フレア)”!! 」


ゴヴゥン!!


「ぐぎゃぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?!? 」


アタシが放った凄まじい爆炎がライオンもどきを焼き払う

炎弾の直撃を受けたライオンもどきは火だるまになって転がり回る


「……助けてくれたのはありがたいけど……家に火はつけないでくださいね……」

「なんとかなるだろ! 」

「ならないと思いますけど……」

「自重しろよ♪」


いつの間に来たのか、 スチルとレナートがアタシの周りにいた

雷華は塀を必死で乗り越えようとしている

背中の翼使えよ


ここでアタシはようやくライオンもどきを詳しく見ることができた

……いや……

ライオンもどきというにはそれは醜すぎた

全身はライオンだが、 顔が老人のようにしわくちゃで、 背中にはアタシより大きな悪魔の翼

尾はさそりのように固そうなカラに覆われており、 先端には同じようにさそりらしき尾

毒がついているかまでは分からない

……分かった方がおかしいか……


数えればそんなライオンもどきとしかいいようのない生物は7、 8体程いた


「あいつらの狙いは……? 」

「……若葉です……! 」


若葉……?

後で聞けば最近生まれた青葉の妹らしい


ライオンもどきは低く唸ると一斉にアタシたちに襲いかかる

アタシたちも戦闘体勢に


「“炎弾釘(フレア・スパイク)”!! 」

「“メタル・クロスズ・ランス”!! 」

「“邪昇星(ダークネス・ライズ・スター)”!! 」


ドドドドドドドドドドドドドッ!!


アタシが放った炎の釘、 スチルが造り出した無数の槍、 レナートが召喚した黒い昇る星

それらはすべてライオンもどきに命中した

だけど、 残った1体が形勢不利と判断したのか、 塀を飛び越え、 逃走したのだ!


「しまっ……! 逃がすかぁ!! 」


アタシが炎を残った1体に放つが届く前に塀の裏に消えた


ドドドッ!!


いくばくかの破壊音が塀の外に響き渡る

凰輝がライオンもどきを退治したのだろうか


青葉がへたりこみながら、 息をつく

そのまま、 緊張の息が切れたのかぱったりと倒れ、 そのまま寝息を立てる


家の中を見れば赤ん坊が今にも泣きそうな顔でこっちを睨んでくる

うっ……どうしよう……

スチルが家の中の赤ん坊を抱き上げ、 よしよしとあやす


「好きなだけ泣きましょう、 泣くだけのことにあったんですから」

「……ふぇ……ふぇ……






 ふぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえん!!! 」


うるせぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!!!
















「…………」


そのころ、 凰輝は塀の外で赤ん坊の泣き声を聞いていた

いつもとは違う悲しげな顔をすると、 塀にもたれこみ静かに目を閉じた……


「……ちっ……」


悔しげに顔を歪めると、 手で顔を覆い、 空を見上げた……
















「凰輝ー、 どうだったー? 」

「すまん、 逃がした」

「珍しいですね」


悔しげに顔を歪めたようすから見ると本当に逃がしたみたいだな

ほんの少しだけ、 その顔が悲しげに見えたのは気のせいだろうか……


「しっかりしてくださいよ! 逃げ出してたのを仕止めるって言ったのはドコのドイt「ハイ、 死ね〜♪」フギャ!? 」


文句を言い出した雷華を凰輝は裏拳で近くの塀にめり込ます

悲しげな表情はもう見えない

ちなみに雷華は身体の1/3程埋もれてピクピクしている

あ、 止まった


「……助けていいですか? 」

「ダメ」

「え? でも……」

「ほっとけ」


無視して家に帰り出す凰輝

その背中にレナートがついていく

残ったアタシたちはどうするべきか悩んでいた


「なにしてんの? ……って雷華ちゃん!? 」

「あ、 紗じゃん」

「どうしたんですか? 」

「話は後。 先に雷華ちゃんを助けないと」


紗が軽く力を入れて引っ張ると、 ボコンと音を立てて雷華が塀から抜けた


「大丈夫? 」

「ケホッ! ケホッ……! なんであんなに怒ったんですか? 」

「まず、 事情が知りたいんだけど……」


簡単に事情を説明してやると、 紗は少し考え込んだ後、 あぁ、 と思い当たることがあったらしく、 アタシたちに聞いてくる


「青葉ちゃん家には最近赤ちゃんが生まれたよね? 今いくつ? なんて名前? 」

「たしか……まだ4ヶ月で……名前は……若葉……だったかな? 」

「……うん、 じゃあ仕方ないよ

 うん、 仕方ない」

「仕方ないって……私は塀に埋め込まれたんですよ!! 」

「それはお前が空気読んでないからだろ」


雷華の言動には呆れたが、 紗が嬉しそうな顔をしているのが気になる


「うん、 仕方ない仕方ない」

「なにがですか? 」

「いや、 別に

 あ、 次から私も手助けに行くから」


あ、 そう

紗の言動とかには気になるが、 まだまだあのライオンもどきは襲ってくるだろう


……あの赤ん坊は絶対に守って見せる!
















「兄貴〜♪」

「あ? なんだ? 」

「赤ん坊好き? 」

「嫌いだ」


いきなりなにを言い出すんだレナートは

おっと、 司会は凰輝が引き継いでいるからな


「私も嫌い♪」

「なんでだ? 」

「兄貴こそなんで? 」


そうきたか

このまま塀に叩きつけてもよかったが、 まぁいい

答えてやろう


「赤ん坊は嫌いだ

 すぐ泣く、 なにもせず、 己の身を守らず、 泣く

 ただ泣く、 怯えて泣く

 だから嫌いだ、 弱々し過ぎる」


脆すぎて、 儚すぎる

大人よりも


「ふぅん……」

「さぁ答えたぞ、 お前は? 」

「カラスが鳴いたらかーえろー♪」

「おいこら」

「かーえろー♪」

「殺すぞオラ」

「かーえろー♪」

「……ちっ」


仕方がない


「兄貴……逃がしたとはいえ、 姿は見たんだろ? アレの名前はなんなのさ? 」

「……あれは……」


はぐらかされた気もするが情報伝達は正確に、 だ

俺は自分の頭の中の辞書をひっかきまわす

ライオンのような全身――老人のような顔――悪魔のような翼――そしてサソリのような尾

思い当たるのは1種だけ


「あいつらの名前はたしか……“キマイラ”」


冥界の魔獣の1種で、 好戦的、 凶暴

だが、 空を飛ぶ力は生まれつき持ってはいない

持っている場合――それは……


「“魂”を相当喰いやがったな……あいつら」


しかも、 魔獣は“魂”を喰えば喰うほど強くなる

1番強くなれる“魂”は赤子――それも様々な感情を持つ人間が1番だ

今回ばかりは……ヤバイぞ


「どうすっかな〜……」


空は静かに闇を映し出していた




下手するとこの話最長になるかも……

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