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其の陸拾伍:癒えぬ悼みと脅えの泣き声・壱

ときに、 人には思いもよらぬ一面があったりします

これはそんなお話


「ふぁぁあぁ…!! 」

「……よしよし、 いい子だから泣き止んで」


……あ、 どうも

司会をするのは……久しぶりですね

並町青葉です……忘れている人はいません…よね?


実は私には最近妹が出来まして……

名前は若葉(わかば)っていうんですけど

かわいいんですよこれが〜〜♪

もうね♪もうこのプニプニとしたほっぺたがねぇ♪

はっ! …失礼しました……

今はその子を抱いて庭にいるんです

閑静な住宅街に立つ我が家は狭く、 小さいながらも庭があります

…猫の額ていどですけど


「グルルルル……」

「…え…? 」


…なんでしょう……?

…さっきの声は………いったい…

…獣の唸り声のように聞こえましたが……


「…なっ………! 」


思わず絶句する私

だって……だって……そこには………
















その“穴”は突然開いた


「凰輝〜♪」

「でぇい、 いきなりなんだ真美子(まみこ)

『っ! びゃぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!!! 』


叫ぶバカ共

突然その“穴”から出てきやがった(ヤツ)は毒々しい肌、 耳のあたりにコウモリの翼を模したみたいなヤツ、 そして本来足があるべきところは魚の尾がついている

簡単に言えば人魚みたいなヤツだ

禍々しい肌をしているが

名前は前述のとうり真美子

冥界の住人だ


とりあえず突進してくるそいつの顔面に蹴りを叩き込みながら、 俺は持っていた皿をテーブルに置く

そこには大量のクッキーが入っていた


『いったっだっきま〜す♪』

「あ、 じゃあいただきます」


後者がスチルで前者がそれ以外だ

大量のクッキーをパクつくバカ共は置いといて、 ほふく前進をしながら床を臭い水で濡らしていく真美子を踏んで止める


「床を濡らすなバカちん

 家庭用ビニールプールを用意してやるから動くな

 次動いたら死なす」

「あぅ〜……」


萎んだビニールプールを倉庫から引っ張り出し、 一息でパンパンにする

そして、 その中にホースで水を入れる

ある程度溜まったので、 窓を開けて、 真美子を投げ飛ばす


「あ〜れ〜」


ボッチャ〜ン!


ナイスシュート

12000点獲得!


「なんの得点ですか!? 」


突っ込むスチル


「るっせいバカ、 思考読むなボケが

 ハラワタ引きずり出されたいか」

「すみません!! 」


わぉ、 久しぶりの土下座

ん? 久しぶりって訳でもないか

まぁいいや

真美子を投げた拍子に半分近くに減った水を継ぎ足しつつ、 真美子の用件を聞く

姉貴が階段を降りる音が聞こえる


「で? いきなりなんの用なんだ? 」

「いやね…実は…」

「凰輝だれだ? コイツ…」

「真美子だ」

「よろしく♪」

「で? 用件は……」

「あぁ、 うん……

 実は…冥界にいる危険なヤツが突然逃げ出してたのさ」

「退治しろと? 」

「そう! 物分かりいいな〜♪」

「HAHAHA♪






 俺は便利屋じゃねぇぞ、 オラァ!!! 」


バッキィ!!


「ガフッ!? 」


真美子の頭を地面に埋もれるまでに叩きつける

アホ4人がビクッとし、 姉貴はクシャミをした


「第一ソイツはドコにいるんだ!? てめえらが持ち込んだ厄介事にマトモなものなんてなかったぞ!!! あぁ!?!? 」

「死ぬ…! 死ぬから……!! タ、 タンマ………!!! 」


グリグリグリ


地面に埋もれた頭をさらに踏みにじる

4人はびびって声をかけてこない

姉貴は声をかける気はなさそうだ


グリグリグリ


さすがにこれ以上やると死にそうなので、 止めておこう

足を外すと素早く頭を地面から引き上げる真美子

荒々しくセキをしながら土くれを吐き出す

う〜ん、 いいねぇ♪


ガタガタ


「ん? 」

「なんの音でしょうか? 」

「塀の方から聞こえたぞ」


以前壊れた塀だ

コンクリートとかを手に入れるのが面倒なので木材で補修している

そこを外そうとしてんのか? 泥棒か?


とりあえず、 そこに近づいて……


「入るなら玄関から入れオラァ!! 」


バッキィ!!


「……あれ? 」


補修した木材ごと顔面を蹴り飛ばしたはずなのだが……手応えは丸でなし

下をのぞけば小さい子供が倒れている


コイツは……!


「……紅葉(もみじ)か!? どうしたんだ!? その怪我!? 」


青葉の妹、 並木紅葉だ

たしか今年で小学6年のはずだ

身体中に無数の裂傷、 いずれも致命傷ではないが道には血が点々としている


「凰輝さ…誰ですかその子!? それにその傷! 」

「紅葉、 だれにやられた!? 」

「…へんな…ライオン…が……」

「…姉貴! 紅葉の怪我を診てくれ!!

 おめぇら青葉ん家に急ぐぞ!! 」

『は、 はい!! 』

「分かった! 」

「ラジャー♪」


紅葉を姉貴に任せて、 4人を引き連れて青葉の家に急ぐ

そういや、 アイツの家で一番強いのは青葉(アイツ)だったな……


間に合うか……!?
















衝撃波云々で他の場所を破壊しないようにスピードを抑えつつ、 といっても車の倍近いスピードで青葉の家につく


が、 ここで1つ思い出したことがある

アイツの家にはたしか最近………


「お、 凰輝!? なにしてんだ!? はやk「お前らだけで行け」は……? 」


一着でついたフィアを先に行くよう促す

怪訝な顔をしているが、 早く行けとアゴで促すと、 背中の羽で俺より20cmぐらい高い塀をこえていく

後から来たスチルやレナートを同じように促す


最後に来た雷華にも促すが反論される


「なんでですか!? 凰輝さんも一緒に行けば…! 」

「逃げたのを仕留めるから行け」

「でも…! 」

「いいから、 行け」

「………分かりました」


やるせない顔で塀を登る雷華

でも、 俺は入れない


「ここには……」


赤ん坊がいるから


だから、


俺は、






入れない



「入れない」訳はいずれ書きます

凰輝の新たなる一面をどうぞ

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