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其の肆拾肆:彼女の恩人、 その力は

“あの人”登場


あと、 これ昨日投稿する予定だったのに…すいません

「お〜い、 起きろ〜」

「ん……」


私はスチル、 前回滝に投げ出された金づちの私ですが、 どうにか生き残れたようです

いや、 普通、 神や悪魔は滅多なことでは死なない

同族か“神殺しの力”を持った者しか私たちは殺せない


「だから、 起きろ〜」

「んん……」


ペチペチと誰かが私の頬を叩いているらしい

それに引き付けられるように徐々に目が覚めていく……


「早く起きろ、 犯されたいか」

「んのわぁ!? 」


突然言われた衝撃のセリフは私の浮上途中の意識を一気に引っ張り上げた

私は神だけど女です

見た目幼女だけど一応400歳はこえている

そんな私に対し無礼極まりない言葉

その言葉を言った本人を真っ直ぐに見据えつつ、 私は文句を言おうと起き上がった


「誰ですか! そんなジェラシーのな…!! 」

「よっ! 久し振り」

「……あ…」





ジェラシーのないセリフを言ったのは、


私を起こしたのは、



私の長年の憧れ


命の恩人



その名前を口にしたいのに、


思い切ってその体に抱きつきたいのに、




言葉が出ない



涙のみが溢れ出てくる





結局、 私は大声て泣き叫びながらその体に抱きついただけだった



「……うわぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ……!!!! 」

「おぉ、 子供っぽいのは治ってないなぁ

よしよし」

「もう、 子供じゃ、 子供じゃな、 ふぇ、ふぇえぇぇぇえぇぇん…! 」


文句を言いたい、 その名前を大声で叫びたい


そんな私の意思に反し、 体はただ泣いてすがることしかできなかった

彼もそれを理解したのだろう、 もうなにも言わずただ私の小さな背中をポンポンと叩いてくれた


そんな優しさが嬉しかった















涙が枯れ果てるほど泣いて、 他の人には見せられないような顔になってしまった私は、 とりあえず私が流されてきたという泉で顔を洗った

まさか、 “あの人”と会えるなんて…

私の心は踊りだしていたが、 かろうじて理性で抑え込み

顔を洗いながら私はどんなことから話し始めようかと考え込んでいた


「いつまで顔を洗ってるんだ? 」

「あ、 ごめんなさい」


知らない間に相当長いこと顔を洗ってたらしい

私は顔を洗うのを止めて、 彼に向き直る

まずは、 さっき言えなかった再会の言葉を


「本当に久しぶりです…もう2度と会えないと思ってました…(くろがね)さん…」

「まぁ、 冥界は広いしな」


鉄武神王《鐵》

私の先輩で、 今はこの冥界でのんびりと隠居生活を送っている

鉄武神の王なのにって思う人もいるかもしれないが

数が多すぎるため、 大抵の神王はどこかでのんびりと過ごしている

私は1度彼に命を救われたこともあり、 憧れを抱いている

私はもうその顔を見ることもないと思っていたが…


「……で? お前はなんでココにいるんだ? 」

「えぇ、 実は……」

《ぐぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉおぉおぉ!!! 》

『!?!? 』


ここまでの経緯(いきさつ)を話そうとしたとき、 突然聞こえてきた叫び声

1つではない、 複数

しかも、 囲まれた!


「ちっ、 久々の再会に水を差しやがって」

「半分は…任せてください! 」

「…あぁ、 頼んだ! 」


私と鐵さんは互いに背中合わせになり、 それぞれの敵に向き合う

私の前にいるのは3体

3体全員が鬼のような(つの)を生やしている


「…“アイアンウォール”!! 」


私は両手を地面につき、 鉄の壁を生み出す!

生み出された鉄の壁は鬼を2体吹き飛ばした!

残りの1体が私に迫る!


「こい! “鉄剣”スチールエッジ!! 」


鉄剣、 端から見ればただの剣

武神は己が属性の武具を呼び出すことができる

これが武神と武神じゃない神の違いだ


呼び出されたのは巨大な鉄の剣

私の身長の2倍以上はあるその大剣を私は手に取り、 一刀の下、 鬼を両断する!


ザシュ!!


鬼は真っ二つになり、 その場に崩れ落ちた

一息ついて、 鐵さんを振り返る

そして硬直した


「お、 そっちも終わったか? 」

「は、 はい……」


そこには地面から生えた無数の鉄の針……いや、 槍というべきくらいの大きさのものは私が相手した数より倍近い数の鬼を貫いていた


その姿を見たまま私はため息をついて呟いた


「まだまだ敵いませんね……」

「修行すればお前もまだまだ強くなるだろ」


呟いたはずの言葉は彼に丸聞こえだった


…本当に敵わないなぁ…









状況を説明した私は鐵さんの言葉を待った


「なるほどなぁ……」

「ドコへ行ったらいいですかね…? 」


言ってから私は失言に気がついた

彼は凰輝さんのことをまったく知らないだろう

だから、 聞いても無駄なのでは……


「…もしかして、 そいつって西上か? 」

「え? あぁ…はい、 そうです」


なんで名前じゃなく名字を?

そんな私の疑問は次の彼の言葉に解消された


「西上の奴なら辰次に聞けば分かるんじゃねぇか?

辰次はたしか……この道の先にある神殿みたいな建物の中にいたよ」

「……本当ですか!? 」

「…たぶん…な、 」

「あ、ありがとうございます!! 」


なにも手がかりがないよりは、 まだマシだ

それに、 凰輝さんのご先祖様にもお会いしたいし


私は鐵さんが指し示した道の先へと走り出す

先はまだまだ暗闇が広がっていた















鐵はスチルに手を振り続けたが、 やがてその姿が見えなくなると、 手を下ろした


「へぇ…アレが後輩? 」


突然現れた謎の女性

それに驚くことはなく、 鐵は振り返らず少しバカにしたように言い返した


「まぁな…可愛い奴だろ? 」

「………そうね」


その女性はクスクスと笑うように呟き、 そしてその声は温厚なものから剣呑なものへと変わった


「……で? どうするの? 」

「どうするって……」

「“銀の意思”…」

「!?!? 」


突然言われた謎の言葉

それに鐵は驚いたようにその女性を振り返る

女性は続ける


「彼女じゃないけど…いるのよ凰輝が連れてきた中に」

「………なんとかなるだろ」

「……ま、 そうよね」


そう呟くと、 女性は影も形も見えなくなった

残された鐵は剣呑な眼差しを孕んだまま、 スチルが走っていった道を睨み続けていた………



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