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理想のペットライフ  作者: ミイナ
9/44

裸の領主様

目の前で土下座をしていたのは、

兄妹の父親でハートミーツの領主

ロイカー・アーレス 53歳。

銀髪のオールバック

全裸に高級生地の下着を履いている

ソファーに座りネイドと対談する事になった。


「ネイド殿、不出来な息子達が無礼な行動をとり、

本当にすまない」

頭を下げる領主に

笑っていいのか

真面目な対応していいのか悩む。


「謝罪を受け取ります。

領主様のその格好を聞いても?」



「私の責任の取り方ですので、気になさらずに。

本来なら下着さえ着用しないのがモットーなのですが。

流石に若い女性が多い場所では紳士的によろしくない」

「うむ。流石は領主殿、見事なり」


「うん。 その姿勢は好感をもてる。

それにナイス筋肉」


う~ん。

二人には大好評なようだ。


「あの~お父様。

私達は何時までこの姿勢を続ければ」


情けない声をだすのは、ソニア。

土下座から立ち上がった領主に烈火の如く怒られ

ディッツ、ソニア、 エリーナ、ミリーと

横一列に正座をさせられた。

クリエが正座組にいないのはソニア達の 芝居に加担してなかったからで、

本人は一人、離れた場所でソファーに座りニヤニヤしている。

「ディッツにソニア。 お前達は屋敷に帰ったら、その根性を叩きなおす。

エリーナとミリー。お前達も私が帰る前に礼儀を叩きこんでやろう」

その言葉に絶望感を漂わせうつ向く四人。

改めてネイドを見る 全裸の領主。

その痛々しい光景に ネイドは額を押さえた。

「ネイド殿。馬鹿共の茶番に付き会わせて申し訳なかったが改めて依頼をお願いしたい。」

そう切り出す領主に先ずは依頼の内容を 聞いてからと領主を促す。


「ネイド殿にソニアが言った町を救ってほしいと言った言葉に嘘は無い。

今、ハートミーツは 存続の危機にある」


「それはアレかのぅ。 迷宮の暴走かぇ?」


「うむ。まさしくウズメ殿の言われた通り、

2ヶ月前から兆候が出てはいたのだが止められなんだ」


「調子に乗って、限界突破?」


その緋波の言葉に頷く領主。


「きっかけは、家の馬鹿息子共が調子に乗り、迷宮に入りすぎたのだ」


あれ程、最新の注意をしろと言ってあったのに…………

と疲れた表情で呟く領主様。

迷宮遺跡の暴走。

迷宮遺跡には中に入った者を記憶する機能がある。

産業として迷宮遺跡で 富を得るやり方は昔から存在する。


迷宮に潜り、素材や 技カードなど定期的に浅い階層に潜れば それなりに金になるので、

その国に存在する迷宮遺跡が多い程、金になる。

最初は広く浅く

迷宮遺跡を探索し20階の中ボスの手前で引き返し外に出る。


これを繰り返せば、

腕に自信のある者や富を得たい者は迷宮遺跡を独占したいと考える。


なにせ、楽して儲かる。

だが迷宮遺跡の罠はそこに仕掛けられている。


迷宮を使用した回数がある程度になると 迷宮から危険信号が 警告される。


迷宮遺跡の入口は普通の扉が一枚、ポツンと存在するだけで 町の中に現れると間違えて入る者がいるくらい普通の扉だ。



その扉があの有名など○○もドアの様に 入るパーティーを様々な場所に飛ばす。

扉の上部中央に子供の顔ぐらいの水晶が はめられていて、

迷宮の使用回数が一定値を超えると

青く光る水晶が

黄色く光る。

その変化が迷宮からの危険信号で黄色になるとまず、中にいる魔物の強さが一段上がる。

例えば、体当たりしかしないスライムが 体の一部を飛ばす攻撃をするぐらい強くなる。

次に魔物と遭遇する回数が増え、罠も増える。

迷宮の難易度が上がり

魔物を外に放つ期間も、放置状態で数ヶ月後だったのが1ヶ月後に放たれる様になる。


だが、ここまでは注意してれば攻略も難しくない。


問題なのは水晶が黄色から点滅状態になり

そして赤色。

赤色からの点滅状態からの黒色になると

最悪の事が起こる。

なんと、世界に存在する迷宮遺跡の扉が 全て大爆発を起こす。

威力は100メートル程周囲を吹き飛ばし浅いクレーターを作る。


警告を解除するには 迷宮遺跡を完全制覇するしかなく、

制覇すれば迷宮遺跡は消えてまた世界の何処かに現れる。



…………だが不思議と数十年も攻略しているのに青い水晶のままだったりと理解できない謎が多い。


「それで、現在の状態は?」

領主からの返答は、

黄色の点滅状態。


ネイドはホッと息を吐く。

「主様よ、安心するのは早いようじゃ」

ウズメの指摘に領主に目を向ける。

まだ、何か言いたそうな表情の領主。


「実は…………」


領主の話しはこうだった。


数年前に領内の洞窟に迷宮遺跡の扉が確認された。

亡くなった冒険者ギルド長とは親友であり、その娘を次のギルド長にしたいと現れた女性の話しに乗り、

迷宮遺跡を利用した。

首尾よく娘がギルド長に決まり、約束どおり自分の子供達や 騎士達をパーティーに入れて迷宮の探索に向かわせた。

約束通り迷宮に入るのに領主の関係者3人、冒険者ギルドから3人の6人で潜り、利益は山分け。


月に数回、潜るだけだったが町の財政は良くなった。

だが息子達が父親に 無断で迷宮に潜り始めた。


息子ディッツが怪我をした事により事態が発覚。

ディッツの怪我が治るまで探索を中止するとエリーナに手紙を送り、

洞窟の中にある扉を確認せずに誰も入らないように封鎖した。



異変に気づいた時には洞窟の中は魔物だらけだった。

すぐにエリーナに救援の手紙を送り

駆けつけたエリーナたちが洞窟内の魔物を討伐。

予想以上に手強かった為、扉を確認すると水晶が黄色で点滅していた。

直ぐに迷宮遺跡を制覇する為の隊が結成されたが21階層で 隊が半壊したのが2ヶ月前。

それ以降は扉から出る魔物を討伐するだけにして現在に至る。

話しを聞き終えて、

ネイドは濃い2ヶ月間を送ってたんだなと他人事ながら思った。


「それで、何故にギルド長まで巻き込んだ芝居を?」


「さぁな。本人に聞いてみるといい」

5人の視線が集中。

エリーナが耐えきれず話しだす。


「1週間前にソニア様から手紙がありました。

例の迷宮制覇した者が、この街に滞在している。それでネイド君を利用してはとの内容でした」

その続きをミリーが話す。


「エリーナから手紙を見せられ、私は困惑しました。

いかにギルド長でも ネイド様は5度の迷宮遺跡を制覇した勇者になります。

それにネイド様との繋がりも薄く私達の尻拭いをしていただく訳にはいかない事を手紙に書きソニア様に送りました」

ミリーの話しが終わり、続きをソニアが。


「私はそれを読み終え、策を練りましたわ。兄に賛同を得て具体的な内容を書いてエリーナに送り、

兄と共にターナに向かいましたわ。

勇者と呼ばれているなら人助けして当然ですもの」そのソニアの物言いに裸の領主の血管が ピクピクと動いているのが怖い。


「ディッツ、お前は言いたい事が無いのか」

「ない」


ディッツは意識が戻った後、何も言わず黙って従っていた。


「そこまで打ち合わせをして、

何故あそこまで無礼な行動をした。

ソニア」


ソニアはうつ向き

悔しそうに唇を噛む。


「領主様は解らんじゃろ。

その兄妹共の瞳には 恐怖の影が見えた。

負け犬の瞳は誰にでもわかるじゃろ


恐怖を身に宿した瞳は狂気になる。

人の持つ業じゃな。

ゆえに人に噛みつく臆病な犬になる、

そのいい例じゃな」

……………………


「ウズメの癖に、

まともな事を言うとこうなる。

ウズメは笑われキャラなのに」

「ふふ~ん。悔しいか緋波よ。

いつものキレがないのぉ」


「ふん!」


余裕の笑みを見せるウズメに顔を背ける緋波をネイドは微笑んで見ている。

部屋の空気が変わり 一同に笑みが生まれる中、

裸の領主が立ち上がり、正座させられている4人の後ろに着くと、

深々と土下座をし、ネイドに町を救ってほしいと頼む。


前で正座している4人はの内3人は領主に続いて土下座をし ソニアだけが納得のいかない顔をしてると、

領主がソニアの頭を後ろから殴り倒す。

「この!馬鹿娘がぁ!

まだ解らんのか。

ネイド殿は冒険者。

いつでも他国に行ける。 帝国の存在なしでは生きていけない 我らとは違うのだ。

お前など平民と同様の存在にすぎん。

それでも解らんのなら縁を切ってもよい」

その言葉に顔を青くしたソニアは殴り倒された姿勢を維持した。

もう。ここまで来ると全員がグルだろうとネイドは思う。


隣の二人にクリエは ニヤニヤと自分を見てる。

ネイドは溜め息まじりに領主の依頼を了承した。


(流石は貴族、というところか。

脅しに泣き落とし、領地を守る為なら手段を選ばないな)

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