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理想のペットライフ  作者: ミイナ
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残念な兄妹

試合も無事に終わり、エリーナさんから合格よとのお言葉を頂き三階の貴賓室まで連行させらた。

どうも絶対に逃がさないという強い意思を二人から感じる。

豪華なソファーにテーブル。

様々な貴重品などが存在する部屋はネイド達には重度のプレッシャーとなって襲いかかる。

ここに来るまでに紹介されたエルフの少女。

名前はクリエ(もう、知っていたけど)と言ってエリーナさん達とは古い付き合いらしい。

そのクリエに資料室での伝言のお礼を言おうとすると、すぐ後ろを向いてしまう為、きちんとお礼を言えずこの少女は人見知りが激しいのか と思い、後でエリーナさん達に伝えてもらうかと思った。


そんな中、エリーナさんが今回の依頼の経緯を説明する。


「ネイド君。 おめでとう。 貴方はこの度、厳正なる試合の結果。 ハートミーツの町の迷宮遺跡に領主様のご子息様、 ご息女様と一緒に潜る権利を獲得したので、黙って受けなさい」

こちらに視線を合わせず、だがニッコリと微笑んでいると分かるエリーナを頭が痛くなる思いで見つめる。

チラリとミリー副長を見ると窓の外を見ているし、隣のクリエは何故か呆然とした表情になっていた。

「はい!質問じゃ」

勢いよく手を上げるウズメ。

「どうぞ、ウーちゃん」

「その呼び名も却下じゃ。迷宮に潜るの に何故?領主ごときの許可がいるのかえ」

ウズメの疑問は最もだとネイドは感じた。

まず帝国に限らず、どこの国も迷宮遺跡が発見された場合は速やかに討伐すべし、との命令が出ている。

その為、冒険者ギルドに所属している者は戦争などが無い限り、国境など関係なく自由に動ける。

勿論、その特権を利用し悪用した者は冒険者ギルドの存続を賭けて処罰する。


国とギルドはお互いを利用し上手くやってきたのだ。


この世界には魔物と呼ばれる生物は一匹も存在しない。

少なくとも自然繁殖はしていない。

だけど魔物被害の報告は後を絶たない。

魔物は迷宮遺跡の内側より現れる。


迷宮遺跡は長く放置すると、その存在を示すように魔物を外に放つ。

最初はスライムやゴブリンなど弱い魔物を。

だが、一年以上も放置すると軍団単位。

合計一万の数になり、強力な魔物ドラゴンや巨人なども解き放つ。


その為、魔物を発見したら近くに迷宮遺跡の入口がある。

その報告を受け迅速に冒険者が派遣され とりあえず迷宮遺跡の中に入り、直ぐに外に出る。

それで数ヶ月は魔物は外に出てこなくなる。


では、今回の件はどうだろうとネイドは考える。

地方領主、たぶん下級貴族だろう。

ハートミーツは小さい町だ。

人口も3万に満たないだろう、その領主が迷宮遺跡を独占し管理している?


帝国の命令に背いてまでする事だろうか?

「あ~それはね、領主様と私達ギルドの利害が一致したのよ。 農業主体のハートミーツでは多くの金を産み出せない。 私達は交通も便利で 経験値とお金が稼げる。 冒険者ギルドと領主様、利益は5対5で分けているのよ」

エリーナの説明でネイドは納得?した。

このように迷宮遺跡を産業として利益を得るやり方も確かにあるのだが…………。


「なるほどのぅ、危険な遊びに手を出して喜んでおったとはな。 主様よ、この話し無かった事にした方が良いと思うがの」

「ウズメに賛成。自業自得、ケジメは当人がつければ良い」


二人の意見を聞きネイドが思案してた時、部屋のドアの近くで控えて、聞いていたクリエが口を挟む。

「エリーナ~、私~その話し~初めて~よ~。親父さんも~ そんな事~してなかった~よね~? 何時から~なの~」


「クリエ、それについては私が話すわ。 エリーナギルド長が 直接、関わってない事なの」

そう言うとミリーが 語り始めた。


「クリエ、エリーナの父親で前ギルド長が亡くなった日を覚えている」


「えぇ~、覚えて~いますよ~?」


「その時に亡くなったギルド長の次の後任をエリーナにするのに、半年程ギルド長の席が空席だったでしょ」


「えぇ~、確かに~そう~でしたね~。 ですが~その期間に~悪さを~した人~いないですよ~」


「そう、貴方でも気がつかなかったのね。まぁ、あの時のクリエは迷宮遺跡の制覇時に手にいれた、 スロット6の鞭を手にいれて大喜びだったものね」


「へっ!なっ~なっ~にを言ってるか~ 解らない~のよ」


突然、ワタワタとするクリエはチラチラとネイドを見て顔を赤くする。


「クリエのその反応は予想外だけど、続けるわね。 迷宮遺跡も制覇直前、エリーナのギルド長もほぼ 決まり。そんな時に親父さんが信頼していた参謀役のカタリーナさんが内密に私をこの部屋に呼んである計画を話したのよ」


カタリーナって人が話した内容は明らかに穴だらけの話しだったが、ミリーはそれに乗った。


いくら亡くなったギルド長の娘だからといってその座に収まるのを快く思わない人が居たのも事実であり、排除することも難しい。

それなら多少の事には目を瞑りエリーナの実績を確かな事にしようとした結果が 今にいたる。


「はぁ~。そう言う事だったの、ごめんねミリー。クリエも 隠していて悪かったわ」


深いため息を漏らし二人に頭を下げるエリーナ。


「いいえ~謝る~必要は~無いです~その話を~聞いて~気づけなかった~あの~当時の~私が~おかしかった~の」

「謝罪など無用よエリーナ。私は自分の意思でカタリーナ様の計画に乗ったのだから」


三人は納得したのか晴れ晴れした表情をしているが、ネイド達の表情が暗い。

今の話しでネイド達に声がかかる意図が読めなかった。


「それで、自分達に 声が、かかった理由を教えてもらえますか?」

もしウズメ達の予想通りなら、厄介な自体が発生したので尻拭いをネイドにという事なら断って、他国にでも逃げようとまで脳裏によぎった。


「そうね。きちんと話すわネイ」 バタンと貴賓室の扉が開き エリーナは途中で言葉を止め、入ってきた乱入者を見つめる一同。



「待たせすぎだぞエリーナ。飯を食ったら喉元通せと言う程、時間は貴重だぞ」

「お馬鹿の兄の言葉は気にしないで下さい。私の言葉だけ聞いていればいいのです。冒険者の方々、わかりますわよね?」

扉から入ってきた二人。

一人は銀髪を短くした筋肉質の男。

もう一人は場違いな紅いドレスを着た

緋波ぐらいの年齢で 長い銀髪を頭の上でお団子の様に纏めている少女。

突然の二人の登場に固まっていた一同の内、

近くに居たミリーが最初に動いた。


「困ります。 ディッツ様。 ソニア様。

お二人には話が纏まりましたら相手に会う約束でしたはず」

「ミリーよ、冒険者は迅速に行動すると聞く。

だか、遅い。

これは話し合いがもつれているのでわ?

と妹が言うのでな、ならば我らが助け船を出さねばと思い参上したまで。

礼は不要ぞ」


「我が兄は行動派ですから、

私が必要なのです。

それで、エリーナ。

そちらの殿方が依頼を受けてくれる

冒険者の方々ですのね」


呆然と成り行きを見守っていたネイドは

ソニアが自分達を見ているのに気づいた。


エリーナが立ち上がり、ソニアに答えようとしたが

ソニアは真っ直ぐにソファーに座るネイドの横に立つと

紅いドレスの両端を軽く摘まみ優雅に挨拶をする。


「ソニア・アーレスと申します。

この度は町の窮地を救って頂く依頼を受けて貰い父に変わり感謝致します。

ネイド様」


「何故? 自分の名を。 それにまだ依頼を受けるとも答えてませんが」


「はぁ?…………

エリーナ。 父との約束事を反故にするつもりかしら?」


ネイドの言葉に顔を上げたソニアはエリーナを睨み付ける。


「おいおい、妹よ

怖い顔をしなさんな。

ネイド殿がビックリしているぞ」


「兄さんは口出し無用にお願いしますわ。

エリーナどうなの?」

いつの間にかソニアの隣に来ていたディッツをピシャリと黙らせると更にエリーナを追求する


エリーナは立ち上がったまま下を向いてうつ向き

何も言えないでいた。


ネイドはさて、どうしようかと考える。

何も言えないエリーナ。

壁際で悔しそうに唇を噛むミリー。


状況についていけてないクリエはオロオロしている。



ネイドは左右に居る

緋波とウズメに目で問いかける。


緋波はネイド様のお好きに。


ウズメは勿論、口に出す。


「カッコ悪い小娘だの。

恐怖に怯えて吠える相手を間違えておるわ。

お主が助けを求める相手は主様じゃろに」


「はぁ!私が怯えている? 兄さんあの子面白いわね」


「あぁ!そうだな。

お嬢ちゃんには大人に対しての礼儀を教えてやらなくちゃな」

ソニアの言葉に隣にいたディッツが一歩前に出る。

それを見たエリーナが、慌ててソニア達の前に出た。


「やめて下さい。

ミリーも、そんな所で固まっていないで お二人をお止めして」

エリーナの言葉にミリーも動きだし、

ディッツを止めるべく、ネイドとディッツの間に入ろうとしたが緋波に止められる。


「そこで見ていて。

身内の世話を他人に任せない」

「よう言った緋波よ 妾だけでも十分だが 露払いを任せてもよいぞ」


ソファーに座ったままの気楽な二人のやり取りにディッツの怒りに火をつける


「てめぇら。

覚悟ができてんだろうな!

腕の一本は授業料として貰うぜ」

一触即発の状態に耐えきれず、

ミリーがネイドに止めるよう進言する。


「心配しなくても、大丈夫ですよミリー副長。

この二人も強いですよ。

貴方よりも」

「そうじゃよ。

そこ筋肉兄さんを叩きのめすのに数秒あれば可能じゃよ」

その言葉に切れた

ディッツの拳がウズメを狙って放たれる。


エリーナとミリーは思わず目を瞑り。

ソニアは笑みを浮かべている。

クリエはと見るとソニアの影でよく見えないが右手を背中に回し冷笑を浮かべているように見えた。


誰もがウズメが殴られる様を想像したが 部屋には乾いた音が響き。

次にディッツが空中を扉の方に飛んでいき激突。

そのまま気絶して動けなくなった。

ネイド達とクリエはその一連の流れを平然と見つめ。

エリーナとミリーは何が起こったか、解らない顔をしていた。


そして、ソニアは自分を狙ったように飛んできた兄を避けたときに座りこんでしまい立つことが出来ないでいた。


「まぁ、こんなもんじゃろ。

妾ならあの小娘に当てたがの」


「ネイド様が肩に手を置かなければ、

キッチリと当てた」

緋波の恨みがましい視線を頭を撫でる事で帳消しにしてもらいソニアを見るネイド。


「なっなっ何ですの!あなたは。

兄さんに何をしたんですの」


「何も?拳を止めて 掴んで投げた」


「はぁ。それだけ…………」

絶句したソニアから視線を反らし、

エリーナに依頼は無かった事にしてほしいと告げると席を立つ。

扉の前で気絶しているディッツをクリエが鞭を使って運んでいたのが気になったが、

目が合うと

お気になさらず~と言うのでお言葉に甘えた。

扉を開けると目の前に大人の男性が土下座をしていた。

驚いたネイドは、何も言わない男性に声をかける。


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