次の階層はラスボスでした。その5
ネイドは滴る汗を舐めて現実の時へと帰る。
28番の笑みを見て思わず怯んだ心を取り戻す為に。
口の中に汗の塩からさがネイドの気分をいつもの状態へと戻す、まだコピーキャットは発動中で緋波は新しく大剣を手にしている。
さすがはドラゴンといったところか、結構いい時間が過ぎている筈だが与えたダメージはごくわずかでしかない。
それでも、28番は怒りを表しているようにネイドには見える。
撃沈させた二人には目もくれず28番はネイドと緋波に意識を向ける。
心の底から湧き上がる感情が28番を動かす、それじたい初めての事なのだが感情で動くのも悪くはないと28番は頭の片隅に記憶する。
「ネイド様、これで終わりにしますよ。貴方の可能性を私に見せなさい」
その言葉と同時に28番の姿が消える。
周りに28番の気配はない、ネイドは両目を瞑りその場でただずむ。
緋波は動かずにネイドからの指示を待つようにじっとネイドを見つめる。28番が姿を消して10秒程。ネイドは突然、メタルスライムで強化した右拳を上空に振り上げた。
ゴン!
重く鈍い音が響く。
ネイドの拳は人型ドラゴンの顔面を見事にとらえた。
しかし28番は気にせずに、そのままの状態で口から炎を吐く。
それをネイドは体を後方に引いてかわす、炎は地面の上を走り広範囲に広がりネイドと緋波に迫る。
緋波はいち早くレヴィとシェスカを地面から拾い上げて、その場を急いで離れた。
ネイドは迫る炎の限界まで引き28番の次の行動を待つよう構えをとる。
人型ドラゴンの放った炎はすぐに消えた、空中から静かに地面に着地してネイドを見る。
「やっぱり。ネイド様、未来予測に近い事をしていますね?あの攻撃をカウンターで当てるなど不可能なはずですから」
その言葉を聞きネイドは自分がもつ優位の一つが失われた事を自覚した。
「主様よ、どうする?」
「はぁ~、やっぱりばれるよね。時間をかけすぎたよウズメ、彼女の能力は?」
「見ての通りじゃな。読み取ってみると、あやつは火竜の能力をコピーして使っているようじゃ。攻撃力と防御力はドラゴン並、それとあの速さはやつ自身が工夫して動いておるようじゃ」
「そう、頭を使って戦っているんだね。厄介だな」
「そうなるのぅ、主様どうする?」
そう問われてもとネイドは思う、チラリと緋波を見るとレヴィとシェスカをかなり離れた位置に寝かせているのが見えた。
少なくとも緋波の方に28番の意識がいかないようにしないといけない。
動かずにいる28番を視界に入れてネイドは魔法コピーキャットに意識をむけたときに脳裏の28番が弾けて魔法が解けてしまった。
「えっ?コピーキャットが解けた」
「主様よ、今のは回避不可能な攻撃を受けて魔法が解けたのじゃ、!くるぞ」
ウズメの指摘通りに28番がゆっくりと近づいて来る。
「ネイド様、厄介な魔法は打ち消さしてもらいました。これで終わりですね」
無造作に右拳をネイドの顔面を狙って突き出す28番は笑みを浮かべていた、繰り出された拳にはスピードはないが吸い込まれるようにネイドの顔面にヒットした。
「がぁ!」
吹き飛ばされるネイド、見た目とは裏腹にスピードのない拳とは思えない破壊力を人型ドラゴンは見せた。
地面に擦れながら転がるネイド、それでも立ち上がろうと足に力を込めた。
「グッハ……………はぁはぁ。凄いなあの拳は師匠と互角にやりあえそうだ。緋波は凄いな、あのクラスの敵に勝ったんだから」
「?………何を言っているんじゃ?」
「ハァハアハァ、過去の迷宮制覇をしたのは緋波さんだろ?僕は気を失っていたんだし」
「ほう!どういう事ですかウズメさん、ネイド様に何をしました」
いつの間にか28番が意識が朦朧としているネイドの側にいた。
「お主には関係ない事じゃ!それに妾は何もしてないし、主様が妾達のはなしを信じないだけじゃ!」
「?、よくわかりませんがこれで終わりですね」
人型ドラゴンの口が開き炎が灯ると火炎放射のようにネイドとウズメをめがけて炎が広がる。
それを防ぐようにメタルスライムがネイド達を守るように銀色の膜を張る。
もう、5分近く人型ドラゴンの炎を受けているだろうか、炎の勢いは弱ることなくネイド達に襲いかかっている。
さすがのメタルスライムの膜も溶けだしてきていた。
「ハァハァ、よくもっているよ。偽物とはいえドラゴンの炎を防いでくれるなんて」
「主様よ、メタルだけでは熱さは防げぬ。ほれ前を見てみるがよい」
熱さで意識が朦朧とするなかでネイドは霞む視界でウズメの言う前を見る。
鋼色の中に水色が薄く見える、初めはそれがなにかわからずに?を浮かべたが次第に思考が理解の色を示す。
「水玉?」
「そうじゃ、水玉め姿を見せないと思っていたがこんな所に潜んでいたとはな。しかし………………長くは持つまい」
ウズメの言葉に反論はできない、ネイドの目にも水玉の幕が薄く小さくなっているのが分かる。
「緋波さんは?」
「緋波なら近くにいるじゃろ、ただ攻撃はできまい。今、攻撃をすれば緋波は死ぬじゃろ。緋波の大剣では奴を退かせる事ができないからのぅ」
「そう、なら少しでも長く耐えるしかないのか」
諦めの気持ちがネイドを支配する。
それを察している28番は余裕を取り戻しネイドを攻撃する。
ネイドは思う、これで終わりだなと。
緋波とウズメはネイドに言った、迷宮を制覇したのは貴方です、だから報酬は貴方が受け取るのです。
と言われ迷宮制覇のときに気を失っていたネイドは困惑しながらも報酬を受け取った。
ネイドは思い返す、迷宮制覇のときに出会った魔物達をウズメの力を借りて友達となり、いつか自分の土地で一緒に過ごして欲しいと約束をしたことを。
そしてネイドは思い返す幼き日に出会ったネイドの心を奪った魔物の姿を。
薄れていく意識の中でネイドは皆に出会えた事を感謝した。
「!!!」
「え」
何かがネイドに訴えかけた。
ネイドは自然と前を見ると水玉が光り輝いていた。
それに呼応するようにネイドの黒い指輪も輝きだす。
なにを?と薄れゆく意識でネイドは見つめていると水玉がメタルスライムが開けた穴から28番にめがけて攻撃をする。
小さい穴からでた水玉は槍のように28番に向かう。
玉砕と思われる水玉の攻撃は自身を蒸発させながら人型ドラゴンの喉に突き刺さったと同時に首に巻き付き爆発した。
「え?水玉?」
人型ドラゴンの炎が消え周りに熱風が淀む。
爆煙から顔をだした28番は口端を歪め笑っている、しかしネイドの右手に光る指輪を見て驚愕した。
?28番が自分を見て驚いている?ネイドは訳がわからずにいると右手から振動を感じる。
朦朧とする意識の中でネイドは自身の右手を見ると黒い指輪が光り召喚ゲートが開いている、???。
ネイドの理解が追いつかないまま指輪は強く光り、ネイドの見つめる中で召喚ゲートから無数の魔物が飛びだして人型ドラゴンに向かっていった。
ネイドは召喚ゲートから飛びだした無数の魔物が人型ドラゴンに突撃して弾けて消えるのを呆然と見つめた。
無数の魔物達は人型ドラゴンの喉をめがけて突撃攻撃をしている、一体一体が弱い魔物だ。
弱小レベルの魔犬やスライム、一角馬とか様々な魔物が人型ドラゴンに攻撃をしている。
それら全てがネイドの友好を約束した魔物と知ると同時にネイドの意識が闇に沈んだ。
「なんです?この子達は、ネイド様の指輪から出たと思ったら私に攻撃を仕掛けるなんて」
28番は自身の喉に攻撃をする魔物達を鬱陶しく思いながら魔物達を攻撃する。
力の弱い魔物達は簡単に28番の攻撃で消え去る。
28番が気づいた時には魔物達は消え去り、涙を流しているネイドが立ち上がっている姿が見えた。
「?なんの涙ですかネイド様」
「………………」
28番の問いには答えずにネイドは左手に持っていた魔銃を自身の頭の近くに銃口を向けると引き金を引いた。
バンバンバン。
連続で三発の銃声が28番の耳に届く。
ネイドの体がグラリと揺れて28番の視界から消えた。
ドン!
28番の頭に衝撃が走る。
「え?」
と思ったら28番は地面にめり込んでいた。
28番は訳がわからずに地面を見つめる、そして自分の近くにネイドの足を見つけた。
「なにをしたのです?」
ゆっくりと立ち上がりネイドに問う28番だが、答えの変わりにネイドから再び攻撃を受けた。
今度はかわしたと28番は思ったが、ネイドの蹴りを顔面に受けて吹き飛ぶ28番。
空中で姿勢を整えて28番は正面にいるはずのネイドを見るとネイドの姿はなかった。
「?」
何処に?と28番は辺りを探るとネイドの気配は自分の近くに感じる。
目線を素早く動かして周りを見ると頭上からの衝撃。
ネイドは28番の頭上から人型ドラゴンの頭を踏み潰した。
ネイドは踏みつけている人型ドラゴンの頭を蹴り飛ばす。
地面を転がりながら28番はネイドを見る、今までの攻撃と違い確かなダメージをくらっていることに驚く。
その証拠に人型ドラゴンの口から血が流れていた。
28番はネイドに何が起こったのかを見た。
28番が見たネイドは全身から血が流れ出ている。
血の量はたいしたことはないが28番の攻撃ではない。
ならばネイドの攻撃力が上がった結果の事だろうと辺りをつける。
「ふふふ、さすがですね。ネイド様、もっと早くお力を見せてくれても良かったのですのに」
28番は立ち上がり口端の血を拭いながらネイドと対する。
声をかけられたネイドは黙したまま答えを返さない。
それを不信に思い28番はネイドの背中にいるウズメに目で問う。
「なんじゃ、主様のことか?今の主様には言葉は通じぬぞ。お主はやり過ぎた、主様の大事な友の命を消した事により主様の意識が消えた」
「意識が消えた?それに魔物が友ですか?」
「不思議かな?だが主様は今、お主を倒す事のできる状態じゃよ。お主が死ぬまで主様の意識は戻らんしな」
「ふふ。私を殺すことが出来まして、多少はダメージを受けましたが……………グハ!」
突如、血を吐いて咳き込む28番をウズメは悲しそうに見つめた。
「緋波、終わりが近い。主様の近くには寄るなよ、最後の止めまでな」
「わかっている。今のネイド様は敵味方構わずに攻撃することも予習済み」
ネイドの背後で十分な距離をとり緋波がウズメに告げる。
28番は自身が流した血の量を見やり不思議そうな顔をしてウズメを見る。
「?………なんじゃその目は妾を見ても答えられんよ。お主に何をしたのかなんぞ主様しか分かるまい」
「そうですか。なら私も不本意ですが試しは終わりにしましょう」
28番はその言葉と同時にネイドの背後に一瞬でまわる。
速さも力も乗った一撃がネイドの首を狙う。
28番が放った手刀が届く寸前にネイドは後ろ向きのまま右手でガードすると体を回転させて左拳を人型ドラゴンの顔面に当てた。
仰け反る28番はそれでも攻撃を仕掛ける、自身の尻尾を巻き付けるようにネイドに向かい振る、下からのドラゴン尻尾の攻撃はネイドの死角から右脇腹に当り互いに後ろに下がった。
28番がネイドを見る、右手をダラリと下げて折れているのがわかる、それと右脇腹の攻撃のせいかネイドの口からも血が滴り落ちている。
打ち勝ったと28番は思ったが頭が揺れる、視界が歪む中でネイドは左手の魔銃を自分に放った。
ネイドの右手が上がり攻撃体勢をとる、28番はネイドが回復の手段で魔銃を使ったのだと推測した。
その証拠にまるでダメージがなかったかのような動きで自分に向かってくるスピードは異常なほど速い。
(ああ、そういうことですか)
28番は全てをさとる。
まだ体が動かない28番はネイドの攻撃に抵抗もできずに受ける、人型ドラゴンの首を狙ったネイドの右拳にメタルスライムが針のような鋭い形状に変化していた。
ネイドは叫び声をあげながら人型ドラゴンの首に右拳を突き刺す、今までさんざん攻撃を受けていた人型ドラゴンの首、喉には無数の亀裂があった。
その箇所にネイドは右拳を突き刺す、亀裂をメタルスライムの針が刺さり突き破ると右拳が人型ドラゴンの肉に届いた。
ネイドは喉を突き破った衝撃でまた折れてしまった右腕に構わずに力を右拳に注ぎ放つ。28番は喉の内側に不思議な力の波動を感じそれが弾けると首回りの鱗が弾けとんだ。
まるで首輪のようになった人型ドラゴンの首に後ろから緋波が跳躍しながら、あの山積みの武具の中から見つけた刃が透明な大剣を人型ドラゴンの鱗のない首をめがけて切り裂く。
ネイドは力尽きたように地面に崩れ落ちる寸前に緋波がネイドの横に着地してネイドを支えた。
28番はそれ以上、その光景を見ることができなかった。
緋波はネイドを支えたまま人型ドラゴンを見るとスーと音をたてずに人型ドラゴンの首がおちると同時に首から炎が噴出して人型ドラゴンの体を包み込み消え去った。
「終わったようじゃな」
「ええ」
緋波はネイドを地面に寝かせて治療を開始、ウズメはその側で消え去った28番のいた辺りを見つめていた。
戦闘が終わり意識の戻ったレヴィとシェスカは事の成り行きをウズメから聞き、緋波と一緒にネイドの意識が戻るのを待つ。
「残念です。私もネイドお兄ちゃん役にたちたかったです」
「私も…………役にたてずに不甲斐ない」
「悔しがるのも良いが、お主たちはまだひよっこじゃ。今は命があることを喜ぶことじゃよ」
ジーっとネイドを見つめていた緋波は何かの気配は感じて顔を上げる。
緋波の視界の先で拳程の炎が現れると緋波達は立ち上がりネイドを守るように間にはいった。
「あっ!警戒しないで、戦う意思はありません」
炎の中から28番の声がした。
緋波は怪しみながらも大剣をしまい尋ねる。
「なにしに出てきたの?」
「あの~ネイド様にお願いがありまして」
炎の球は更に小さくなり緋波の前に移動する。
「お願い?」
「はい。その為にネイド様に接触したのです」
「その割にはいささか危うい状況じゃたがな」
「はぁ~、私も必死でしたので」
「何を言いたいのかは知らんが、主様の眼が覚めるまで待つのじゃ」
「でしたら、私が傷を癒しますよ」
そう言うと28番は炎の赤色が白く光り地面で寝ているネイドの上に行き光を注ぐ。
緋波とレヴィの治療で出血は止まってはいたがネイドの体力までは回復してはいない、28番の回復の光はネイドの傷と体力を完全に癒した。
「う~ん、………………ここは?」
寝かされているネイドは目を開ける。
心配そうに自分を見つめる緋波達を見て微笑む。
「緋波さん、おめでとう。また迷宮を制覇したんだね」
「?????」
28番をはじめ、皆がネイドがなにを言っているのかがわからなかった。
そのうちウズメがため息混じりにネイドに告げる。
「またか、主様よ迷宮を制覇したのは主様の力じゃ。いい加減、理解したらどうじゃ」
「?、僕は見た通りに戦闘不能になってるんだよ。彼女と闘った記憶もないし……………」
「ネイド様、私を倒したのは間違えなくあなた様です」
「…………………!、その声は28番さん」
「はい!ネイド様の下僕です」
「下僕?」
28番の言いように疑問を感じネイドは尋ねる。
「そうです。私はネイド様に仕えます、私を倒したのですから」
何故か自信に満ち足りた声でネイドに告げる28番。
ネイドは上半身をお越して目の前の小さい炎の球を見る。
「貴女を倒したのは緋波さんだけど、僕になにをさせたいの?」
「先ずは私に名を頂けますか?彼等の様に」
「名?貴女もなの?」
「はい。その為にネイド様の力の程を確認したのです。私は貴方の望の姿になりましょう」
またか、とネイドは思った。
迷宮を制覇する度にこうして姿を見せ名前をせがむ。
それなら緋波さんにと言っても何故かネイドに名前を求める。
これが迷宮制覇した者がするつとめかと思い制覇する度に名をつけたが、昔の迷宮制覇者の資料を見てもこの記述がどこにも載ってはいなかった。
「名前ねぇ、迷宮制覇したのは緋波さんだから彼女につけてもらうのは?」
「確かに、私に止めをさしたのは彼女ですが私はネイド様から名を頂きたいのですよ」
やっぱりか、予想通りの28番の返答にネイドは考え込む。
毎回おもうことだが、まるでペットに名前をつけるみたいだなと思う。
「なら簡単、28番だからニヤはどうだろう?」
「ニヤ、………………ニヤ」
名を貰い自分の名前を呟くニヤ、炎の球が大きく膨れあがると中でなにかの形が出来上がる。
熱さのない強い光がネイド達を照らすと炎の球の中からネイドの肩に収まるくらいの翡翠のドラゴンがネイドの目の前の現れた。
「君がニヤ?」
初めて見る翡翠のドラゴンにネイドの声は震える。
「はい。これから宜しくお願いしますね、ご主人様」
「へ?なに?ご主人様って?」
「詳しく話しを聞きましょうか!」
「そうですね、緋波お姉ちゃん!」
「私も聞きたいです」
「なんじゃ、お主等は主様の前に立ちおって邪魔じやろうに、ほれさっさと話しを進めんかニヤよ」
「えーと、はい。まずこの姿はネイド様の好みに会わせました。ネイド様は動物好きと聞いていましたから希少でネイド様の力になれる個体として、ドラゴンを選びました。あっ!変更はできませんので。それとまだ外の世界には出られません迷宮の中だけです会えるのは」
「へ~」
「ほう」
「そうなんですか?」
「なら安心です」
緋波、ウズメ、シェスカ、レヴィと、なんとなく納得しているみたいだがネイドはニヤの話しを半分以上は上の空で聞いていた。
「それで続きですが、ネイド様には全迷宮を制覇していただき私達を解放して頂きたいのです」
「解放じゃと?」
「はい。そして私達の創造主を倒して、ネイド様が新たな王になって下さい」
「ネイドお兄さんが王に?」
「なんかすごい話しなってきましたね」
「解放してお主らはどうなるのじゃ?」
「私達はネイド様と共に、迷宮に住む魔物達は表の世界で存在します」
「魔物が解放状態になると?」
腕を組み考え込むウズメ。
「はい。え~と創造主様は名前がないんですよね。う~ん………………!この際、魔王にしましょう。ネイド様には魔王を倒して私達40迷宮の守護者をネイド様の望みの姿で飼って下さい」
とんでもない事を言い出したニヤを緋波達は無言で見つめる。
ただ1人、ネイドの瞳だけはキラキラと輝きだしていた。
「どうでしょうか?」
「そうよな、どう思う緋波よ」
「私はネイド様に従うだけ。だけど何故、魔王を倒して解放を願うの?」
「もともと、迷宮の魔物達は表の世界に住んでいました。まだ人が未熟で魔物が脅威の存在だった遥か過去の時代、とある国の王女様が願いました。人が魔物に殺されない世界が訪れなあのかと。その願いに答えたのが魔王様です、永久は無理だが力ある者だけが魔物と戦える場を用意しようと」
「うん?なら、それでよいではないか?」
「そうですよね?」
「ウズメさんに賛成です」
「いいえ!もうダメなのです。魔王様は人達が迷宮で苦しみ、死ぬ姿を楽しみだしました。この契約が原因なのです、期間が決められていない契約は魔王様の精神を長い時間をかけて歪めました。ネイド様、現魔王を倒して新たな王になって下さい。お願いします」
翡翠のドラゴンは地面に降りネイドに頭を下げる。
その姿を見つめネイドはニヤに四つん這いなって詰め寄ると興奮した声でニヤなに言う。
「もし、他の迷宮を解放すればニヤの様な姿になるの?」
「?……姿ですか?はいネイド様の望ままに」
「まっまさか主様よ、受けるのかニヤの申し出を」
「うん!やる!」
「ほっ本当にやって下さいますか」
「こんな綺麗な子達に囲まれて生活できる。夢のようじゃないか!」
もはやネイドを止められそうにないとウズメは思った。
ただウズメはネイドに確認しておくべき事がある。
「主様よ、世界の敵になる覚悟があるのじゃな?。迷宮を解放すれば世界は混乱するじゃろう、主様を恨むやからもいるはずじゃ」
「世界の敵?」
「そうですよ、ネイドお兄さん。皆さんが迷惑します」
「辞めましょうよ、流石に世界を敵にはまわせません」
「私はネイド様の望むままに」
ネイドを見つめる四人の瞳をネイドは見る。
不安そうなレヴィとシェスカ、覚悟を決めている緋波とウズメ。
ネイドはそれらの瞳をみて笑顔で言った。
「大丈夫!迷宮は解放する。そして全迷宮の魔物も僕の造る世界で飼うよ!世界はそれでいままで通りだ!僕は新しい魔王になってみせる」
ネイドは立ち上がり拳を天に向かってつきだして叫んだ。
それを見て緋波とウズメは頷き、レヴィとシェスカは驚愕の表情でネイドを見る。ニヤはネイドの言葉に絶句したが時間がたつにつれて気持ちを切り替えた。
望み通りになったのだからと。
「ネイド様、表の世界に送ります。再びどこかの迷宮でお待ちしております」
ニヤは羽ばたきネイドの頭上をくるくると回ると飛ぶと光る魔方陣が出現した。
「どうぞこの中に」
「ありがとう、ニヤはここに残るの?」
「いいえ、この迷宮は消滅します。私は他の空間でネイド様をお待ちしております」
「そう、なら待っていてニヤ。僕は必ず夢を叶える」
ネイド達は魔方陣に入るとニヤの前から消えた。
ニヤは思う、そう遠くない未来に世界が変革するであろうと。
これで完結に致します。
拙い小説でしたが読んで下さいまして有り難う。
また、違う形でネイド達の話しを書くかもしれませんが、今は他の話しを書いていますので当分先のはなしです。
有り難うございました。




