憂鬱な二人
早朝、港街ターナにある冒険者ギルドの3Fギルドマスターの部屋には二人の人物が向かい合わせに座り昼に行われる会談に向けて語り合っていた。
「あぁ~面倒くさい、いちいち貴族の頼み事を私が聞いていたら休めないじゃない」
憂鬱そうに愚痴をこぼしてるのは、冒険者ギルドのトップであるエリーナ。明るい赤髪を肩ぐらいの長さで揃え、綺麗な顔立ちは疲労感が漂っている。
「しょうがないじゃない、それが仕事でしょ」
あっさりと言い放つのはエリーナの正面に座り特に疲労感を感じさせない顔。彼女は幼なじみで補佐役のミリー、眼鏡と長い金髪をポニーテールにしている知的美人な感じの女性である。「う~……」
「そんな顔しないの、もういい歳なんだから可愛くないわよ?」
と言いつつ心の中では
(私より背が低いし、これは……アリね!)
「何か……失礼なこと考えてるでしょ」
彼女とは同い年の26歳。頭一つ分エリーナの背が低い。ミリーも背が高い方ではないが、その見た目と大人な対応から年相応の威厳と美しさが溢れている。
「そうね。同意するわ」
「すぐ認めちゃうし~、少しは私に敬意をもちなさいよ」
「では、本日の重要な案件であるネイド氏との会談を纏めてください」そのミリーの一言で再び不機嫌になるエリーナ。
「狂戦士って言われてる人には見えないよね?」
ボソッと呟くエリーナ。
「そうね、ここで働いている事務職員って感じの印象ね」
「だよね。五つの迷宮遺跡を完全制覇している風に見えないよね」
この部屋て初めて見た印象は冴えない青年が就職の紹介状でも持ってきたのかと思った。その青年が成した功績を書類で確認し、その証を実際に見せてもらったにも関わらず、大成を成した人物にはとても見えなかったのだ。
「ですが、実績では今いる冒険者の中では彼が一番です」
「わかっているわ、先方の出した条件、このギルド一番の冒険者とできるだけ年の若い冒険者にこの依頼を、と言うね」だけどエリーナは思う本当に彼で良かったのかと?
この大陸に存在する108の迷宮遺跡40の階層からなるその迷宮はカインズシア帝国に30程、各地に存在する。
20階に中級ボス40階に上級ボスという具合に存在が確認されており、20階のボスまで注意すれば倒せるレベルで一度倒すと復活しない為、早いもの勝ちで競争になる。
ちなみに討伐報酬は 金貨20万。
だがそこから先が問題になる。ぶっちゃけ攻略のレベルが3段階程高くなり、死亡率がはね上がる。 その為、20階のボスを倒して引き下がる冒険者が多い。
「普通なら勇者クラスなのに報告書を読むと異常者に近いのよね」
「その為の今回の面接です、少し突っ込んだ話しに期待します」「ハァ~……。そうなるよね、相手が相手だし」
「えぇ。相手が相手ですので」
二人は同時にため息を吐き、本日の重要案件に向けての対策と質問事項など具体的な話し合いを始めた。