水玉召喚
ネイドの目の前。
人・人・人で大変賑わう街道馬車の乗り合い所。
ここから、帝都方面、ハートミーツ方面、メイクーリオ方面 へと行く。
帝都はターナから東に進み、ハートミーツは北、メイクーリオは南にある。
馬車には限りがある為、ここまで人が多いと順番を数日待つか徒歩で移動。
もしくは飛竜を使うかだが、一般人や冒険者でも使用許可は無く、モグリの飛竜使いを捜して高い料金を払うかなのだが……………………
ネイドは近くの乗り合い所に顔を出して聞いてみた。
「すみません、この賑わいはどうしたのですか?」
「お前さん、知らないのか?ハートミーツで金脈が出たらしくて、この通り一攫千金を目当ての奴等が集まって、こんな状態だよ」
「金脈じゃと!主様よ、早よう行こうではないか」
「お客さんもハートミーツへ?」
「えぇ。金脈とは別口で行くのですが」
「そりゃタイミングが悪かったな。
今は2日後に出る夜間の馬車が空いてるがどうするね?」
「ネイド様、どうしますか?予約をしても夜間ですと4日後になりますが」
馬車で3日。
足止めを食らって、着くのが6日。
ネイドは考えて徒歩で行く事にする。
その提案に緋波とレヴィは賛成。
ウズメが反対したが多数決で徒歩に決まった。
乗り合い所の人に断わりをして、急いで事情を手紙にして、ハートミーツ行きの手紙箱にいれる。
手紙箱は遠くに行く馬車を運転する人が 箱に書かれた行き先の箱を馬車に乗せ、到着後に役所又は村の長に渡したり受け取ったりする。
確実な方法では無いが、無料でやっているので文句も言えない。
念のため、ネイドは冒険者ギルドのミリー宛に手紙を出した。
ネイドは全員にハートミーツに行く道中の地図を見せる。
途中に村が3ヶ所あり、10日の行程で進む事を話し、売店で追加の食料や寝袋とテント、簡易調理器具や使い捨ての皿にフォークとスプーンを購入。
緋波の鞄に入れられるだけ詰め、残りはネイドが持つ。
渋るウズメを無視してターナからハートミーツへ出発した。
整備されている道をのんびりと歩く4人。
レヴィのペースに合わせて行く。
まだ日も高く、見渡しもいいので危険は少ない。
先ずは昼食できる場所を探しなから歩く。
「ネイド様、本当によろしかったのですか」
緋波の問いにネイドは。
「大丈夫だと思うよ。迷宮に入らなければ悪化しないし、魔物もあの領主なら平気さ」
「そうとしても、徒歩でとはあんまりじゃ」
「そうですか?楽しいですよ。ウズメ」
「ちょい待ち、レヴィよ。
呼び捨てとは礼儀を欠いとるのでは無いかの」
「すみません。緋波お姉さんが、ウズメさんは妹になるのだから、敬語は不要と言ったので」
「なに!緋波よどういう事じゃ。
妾の方が年上じゃろ」
「設定上、割り切って。
普段から言い馴れないと怪しまれる」
「そこまで心配しなくてもいいと思うけど?」
「ネイド様はお気になさらずに、これも必要な事ですので」
そこまで言われるとネイドも了承するしかない。
ウズメは納得はいかないが受け入れた。
「良かろう。レヴィよ、続けるが良い。遠慮はいらぬ」
「!…分かりました。
頑張ります」
「えっと、話しが纏まったなら、あそこの木の下でお昼ご飯にしようか」
街道を外れて進むと平地に大木が1本生えている場所があり、其処でリリスより貰ったお弁当を食べる。
天気も良く、美味しいお弁当だった。
「ネイド様、このまま進むとして、レヴィの訓練はどうするのでしょうか?」
「それについては考えてあるから、夜営できる場所を見つけたら、其処で話すよ」
「ほう。主様には何か、考えがあるらしいの。レヴィよ、ならば腹ごなしに妾が訓練をつけてやろう」
「ウズメ。お願いします」
「緋波さん。付いて指導してあげて、先ずは持ち方から足の運びを特に」
緋波は頷くとウズメ達の所へ行く。
ネイドはそれを見ながら夜営地の検討を 地図を見て始める。
休憩後に出発。
再び街道に戻り進む、ゆっくり景色を見ながら進む為に距離は稼げないが体力はあまり減らずに夕方まで歩き続け、ネイドは夜営地に適した場所を見つけ野宿の準備をする。
「緋波さん夕食の準備を、僕達はテントと火を準備しよう」
緋波は黙々と食事の準備をして、ネイドはレヴィに教えながらテントを組み立てていく。
街道から奥に入っている為に火の明かりも見えないだろう。
「ご飯も用意できたし食べてしまおう。
食べたらウズメは付き合ってほしい」
「なんじゃ。妾と夜のデートかや、大人の時間じゃな」
「大人の時間!憧れます。ウズメの次は私です」
「レヴィは最後。今日、教えた事を復習しなさい。朝と夜やること」
「そうじゃぞ、筋は良いが練習不足じゃ。体力強化メニューも入れねばの」
「とにかく、ウズメはお願い。
緋波さんはレヴィを鍛えて、暗闇に慣れてもらって」
その後、皆で後片付けをして各々別れる。
ネイドはウズメを連れ、タイマツを片手に少し奥に行く。
「主様よ、何をするつもりじゃ?あの毛皮まで持ってきて?」
「この辺りでいいかな。ウズメ、ゲートを繋ぐから力を貸してほしい」
「ゲートじゃと!外の世界でやるには主様の精神力だと厳しく思うが?」
「長くは繋がないよ。水玉を呼ぶだけだから」
「水玉を呼ぶ?…………何をするつもりじゃ」
「レヴィの相手をして欲しくてね」
そう言うとネイドは黒い指輪を取り出して、指にはめる。
ウズメは言われた通り、ネイドに力を流し補助。
額に汗を滲ませネイドは精神を集中する、数分後ネイドの前に黒い歪んだ壁が現れる。
「汝の主たるネイドが命じる。
名を与えし者の声に応え現れよ水玉」
静かに響くネイドの声に応える様に黒い壁の中から青いスライムが現れて黒い壁が消える。
荒い息を吐きネイドがスライムを見つめる。
魔法は精神力を消耗する為に使う人により差がでる。
ネイドは直ぐに消耗する為にあまり魔法は使用しない。
「水玉。久しぶりだね、元気だったかい?」
「…………!」
「ほう。元気にしていたらしいぞ主様よ」
声をかけられた、スライムは体を揺らして応える。
この青いスライムは、ネイドがある迷宮遺跡にて仲良くなりネイドと主従関係を結んだ。
「水玉。暫く力を借りたい、その姿だと不味いからこいつの中に入ってほしい」
ネイドが水玉に見せたのは、あの道具屋で見つけた山猫の毛皮だった。
水玉は差し出された毛皮に近づくと、その大きさに体を合わせる。
ネイドが山猫になった水玉の体を微調整をして、お腹の部分を縫ったら完成。
「体を動かしみて、 …………いや這いずるじゃなくて。
ウズメ、見本を見せて」
「へっ。妾がか?…………しょうがないの。
水玉よこうじゃ!」
ウズメの動きを見て、真似する水玉。
徐々に動きが良くなったので、今回の目的を話してその姿で戦えるように動きを覚えもらう。
ウズメと水玉、まるで猫がじゃれあってるようで面白かったが。
「主様よ、………… もう良いじゃろ。
水玉よ合格じゃ、後は了承したら体を揺らすのじゃなく、首を振るのじゃ………………そう!それじゃ」
ウズメのお墨付きを貰い、喜ぶ水玉を連れてテントに戻ると緋波達も戻っていたので、水玉を紹介して明日からレヴィの訓練相手をしてもらう告げる。
「うわ~、可愛い! 宜しく水玉ちゃん」
レヴィも気に入った様で水玉を抱きしめる。
緋波には中身を話し、今後の練習プランを組んでもらう。
目が覚めたら、レヴィが黙々とレイピアを使い型の練習をしていた。
緋波の隣に水玉が座りレヴィを見ている。
緋波は体力向上は走ること。
筋力は剣を素振りして作るため、長い時間をかけて素振りや型の練習をする。
それで、必要な筋肉だけを鍛えることが出来るらしい。
自分は師匠に稽古に色々な道具を使い筋力を作ったが、教える人間が違うだけで天と地の差があるのを痛感した。
「なんじゃ、水玉は見ているだけか?面白くないのぅ」
「ウズメ、起きたのなら朝食の準備をしようか」
「うむ、なら妾の腕を見せようかの」
無難なウズメの朝食を食べて、歩き始める。
一番近い村までは夕方頃に付く予定だ。
所々に木が生えている道を歩く。
先頭にレヴィと水玉が並んで歩き、後ろをネイド達が着いていく。
「主様よ、水玉に荷物を持たして良かったのかのぅ」
「水玉が持ちたいとアピールしてきたから大丈夫だよ」
見ると水玉の背にテントやら寝袋やらが積まれている。
「毛皮が傷つかない 様にしている。問題ない」
「さよか。なら水玉に首輪は必要じゃろ?人の中に入るなら外見はいいが、飼い主がいる事を示すのは大事じゃろ」
「一理ある。ネイド様、私に任せて下さい」
「緋波さんが、選んでくれるなら任せるよ。
ウズメは良い事に気づいたね」
村に着くまでの間、終始この調子で進み村が見える時にはネイドの予定通りに夕方になっていた。




