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空気な不死者  作者: 末吉
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ここから先は一時間ごとに行きたいと思います。あと、直しはしていないのでそこら辺は考慮してください。

「さて来たなー大阪府堺市」

 転移停で過疎地帯の田舎から700ヘルで到着した場所。江戸時代に港町として栄え、それにならって長崎と比肩する貿易都市――大阪。

 僕は帽子をかぶってリュックサックを背負い直し、地面を見ながら言った。

「さ、さぁ頑張るぞー……」


 人通りがものすごくて直視できなくて。


 僕達地球人は未だに都道府県で呼んでしまうけれど、外から来た人には一括りにされるため都道府県制度は何の意味もなくなっているのが現状。

 でもま、そんなことは関係ない。僕がなぜこんな(人が多い)ところに来ているのかというと、


 ここ最近の通信・通話機器を買うため。


 ……買ってないんだよ文句あるか! 仕事してた時は支給されたけど返したし、ぼっちで誰とも連絡を取らなかった僕は最終的にそういうのを買わずにずっと過ごしてきたのさ!! 笑わば笑えっ!

 で、今転移停の上から少し歩いたところで立ち止まっています。目指す店の場所は昨日家に帰ってから調べたから知ってるけど、いかんせん人が多すぎて流れに混ざろうにも混ざれない! なんでこんなに人が多いのさ!!

 僕が目指す場所は、僕が降りた転移停の正面にある「SAKAIストリート」という名の商店街にある携帯アンテナショップ。

 そんなの近くに行けば買えるだろって? 甘い甘い! 世界情勢が変わりに変わりまくったこの時代、学園国家となった日本を表す言葉を知らないからそんなことが言えるんだ! 東はド田舎、西は都会、中央集まる子供たちって言葉をなぁ!!

 ……そんな訳でここに来ているのだけれども、想像以上の人の数に早くも僕の心は折れかけてとんでもなく緊張してきた。果たして僕は今日一日倒れたり失神したり気絶したり放心したりしないで平穏無事に家に帰れるのだろうか。無論、不死者であることを知られずに。


 ……とりあえずは、骨董品店にスマホ、売って来ようかな。







 で、数分が経ったけれど……。

「この人ごみのお蔭で地図も何も開けたもんじゃないよ……」

 もはや人並みの流れに身を任せて漂っているような感じで息が続かなく、なんか川が見えかけてきてる気がするのに通行止めという立札が見えて吐きそうになるのを堪えていた。

 入るのは簡単だった。ただ体をねじ込ませればね。でも移動することがとんでもなく難しい。難易度的に言うと、一対多人数で会話する時ぐらい難しい。

 空気という称号(自称)は伊達ではなく、行きたい場所に行くことができないという有様。

 …なんか「レンティアちゃーん!」とか近くで聞こえたけど。テレビで聞いたことあるような気がしたりしなかったりする名前だなーと思いながらもちゃんと歩こうともがいていると、人の波が止まったのでチャンスだと思い「すいません! すいません!!」と連呼して脇へ逸れるように移動。

 あ、暑苦しい……なんだなんだなんなんだ一体。熱という熱がここに籠ってる気がするぞ。

 数分で何とか人影のない店先にたどり着いた僕は、その場で呼吸を整えながらそんなことを思う。

 額から流れ出てる汗を袖で拭う。四月・・だというのにこの熱気の理由が分からず帽子を煽って涼みながらため息をつく。

 そりゃ確かにゴールデンウィークではあるけれども。何も僕が来ようと思った日にピンポイントで集客率がおかしなことにならなくていいじゃないか。まったくもって不快で面倒で帰りたくなるような場所だよここは。

 しばらく戻れないなーと思いながら僕が前にいる店の中を見る。

 なんと、僕が目指していた店だった。

 なんという幸運! 神様は僕が不死者になってからずっと見放したのばかり思っていたけれど(無神論者だけれども)偶には仕事してくれるね憎いね、本当!!

 と、いう訳で店の中へ入る。

「「「いらっしゃいませーーー!!」」」

 店の中にいたのはみんな女性。しかも、火星人、地球人、異世界人など、バリエーションも様々。ま、見た目が小さい人がいないから一安心かな。

 ……安心できなかったよ、よく考えたら。

 僕ギルフォードさんとちゃんと話せるようになったけれども! それ以外の人と話すなんてまだやったことなかったじゃん!! なんかもう膝が笑いだしてきた! 僕の精神状態までおかしくなりそう!

「あの、お客様……」

「ひゃ、ひゃい!」

 思わず跳び上がり、声が上ずる。なんというか、本当にやばい。ガチでマジ(二つとも死語)の緊張してる。

 って、目の前に店員さんいますけどぉ!? い、いやいやいやいやいや無理無理無理無理無理無理無理!

 心の中で高速首振り(横)をやりながらガチガチに緊張しつつ、思考では暗示・・をかける準備をする。

 ……職場の人たち・・・・・・も言ってたじゃないか。『仕事は度胸と愛嬌』。『駆け引きされても真っ向から食らい尽くせ』って。

 ――――――ふぅ。よしっ!

「お客様、大丈夫ですか?」

「……えぇ大丈夫ですよ・・・・・・・・」

 よっしゃぁ成功!! 何とか乗り切れる!

 心の中でガッツポーズをしながら、僕は穏やかな口調で切り出した。

「しばらく見てもいいですか? 買い物がてら」

「は、はい……構いません」

「ありがとうございます」

 そう言ってきびきびと僕は店内を歩き回りながら、目当てのものを探す。

 なんで僕がこうも会話できるのか。それは、以前仕事をやっていた時に人見知りな僕を憂いた先輩がとっておきの暗示を教えてくれたから。

 どんな仕事だったかな……金融マンだったかネゴシエーターだったか詐欺師だったか弁護士だったかな? ま、今となっては思い出せないけれど、そんな言葉を用いて頑張る仕事だったことだけは確かだった。となると詐欺師は必然的に違うね。

 で、その時にはウジウジした態度をとると相手にバカにされるから強気で行けるように先輩に教えてもらったんだよな、これ・・。

 でもなんで学校の時使わないかって? いや、使ってどうするのさ。僕は普通に・・・会話(今は違うけど)出来る様になるために学校に通うことにしているんだよ? 使ったら本末転倒じゃないか。

 という訳がありまして僕は学校では使いません。少し前に使ったのは相手が教師だから。

 あ、うん。丸一日(計二十四時間という意味)が限界だからさっさと見つけないといけないんだけど……あ。

「あぁこれです、これ」

 見つけた。僕がネットで見て欲しいなぁと思った携帯。その名も『クロスフェイ』。地球製のスマホ型立体映像携帯という、その名の通り面白い機能があるんだ。

 まずスマホの画面で使うアプリをタッチする。するとそのアプリが立体映像として宙に映るという何とも面白い機能が標準搭載されているのですよ!

 そして値段が15,800ヘル!! ここの市場が平均20,000ヘルだから安いのです!!

 ……何してるんだろう僕。

 その携帯を手に取ってからなんか変なテンションだ。

「どうなさいましたか?」

「いえ別に。あ、これにします」

「ではこちらにどうぞ」

 そう言われて案内された席に向かっていると、外のざわめきが酷くなってきた。今まではただの人混みのざわめきだったのに、今じゃ歓声を含めたざわめきになっているからうるさいったりゃありゃしない。

 なんだと思いながら視線を向けずに契約の話をしようとする。が、それを店員さんに止められた。

「すいません。このお店取材が来るんですけど……顔見せとか大丈夫ですか?」

「え……」

 なんてこった。この人だかりの原因は取材か。

 正直な話顔見せとか完全にNG。というより、不死者であるために顔がばれるのが怖いのだ極端に。いや別にこれで顔がばれたところで不死者だと連想されるわけではないことは分かりきっているのだけれども、これを見て顔を覚えられ、その人の近くで殺されたらばれる。絶対にばれる。それだけは間違いない。

 だから僕はすぐさま「顔見せはダメです」と答えたのだけれども、そう答えたと同時にドアが開くものだから神様という奴は本当に仕事しないね。一瞬でも感謝した僕がバカみたいに思えてくる。

「続いてのお店は地球随一の携帯の品揃えを誇り、わざわざ他惑星から来るほどの品質を誇る大型店だよ!」

 はい終わったー。僕の逃げ道無くなったー。上行くしかないー。

 ここ六階建てなんですって。全部携帯フロア。

 という訳で僕は店員さんに「あ、すいません。これ取材が終わるまで元の場所に戻してもらいませんか? 終わるまで隠れてますので」と言った矢先にまた。

「おぉーっとここに今日買いに来た人がいるね! さっそく取材をしてみよう!!」

 やたら元気な女の子の声。はっきり言おう。僕は暗示が切れるかどうかの瀬戸際だ。

 こんな人が沢山、学校の比じゃないくらいに集まられたらもう恐怖でしかないんだよコラァァァァァ!!

 心の中でそう叫び、僕は他の人が受けてる隙にダッシュで階段を上る。

 トイレに隠れてばいいのだろうけど、さすがにそこはちょっとね……。人としてそこまで臆病になったつもりはないからね…。

 まぁ兎にも角にもダッシュダッシュ! どうせ二階から上に上がってくることはないだろうし!!

 そんなフラグを立てつつ二階に到着した僕はそそくさと一番奥の方へ移動して息を殺す。気配を薄める。

 テレビなんて僕にはまだ早い。早すぎる。ぶっちゃけ速攻失神です。映ったりしたら。

 ……でも、あれ? ひょっとしたら僕の階段を走る映像残ったりしてるかもしれない? なんかちらっとカメラの視線を感じた気がするんだけど……。

 ま、まぁカットされること確実だから別にそこは問題ないよね、うん。そうに違いない。どうせ脇役の引き立て役だろう。ちょっと視界の端に映ったぐらいだろうし。

 なんか緊張して損したぁと思いながら息を吐いていると、思いの外早く二階にテレビカメラやマイクを持った女子が来るのを目撃。

 ………………八方塞ってこのことを意味するんじゃなかろうか。まさに僕にとって絶望的な状況に進んでいくという。

 どうしよう。本当にどうしよう。もうあの人たち飛び越えて一階に降りて携帯買って帰ろうかな。契約ぱぱっと済ませてさ。うんそうしようそれしか考えられないよ。

 あ、でも僕空気だからインタビューされることないじゃんよく考えたら。自分の体質を今更思い出した僕は、ならこのまま待とうと思いじっと彼女達が過ぎるのを待つ。

 彼女達は色々な人に話を聞きながらワイワイやってる。距離的には少し遠いぐらいなので、近づくことはないかもしれないと思う。というか切に願う。願わなければ来てしまいそうな気がするから。

 ……願っても来る可能性も捨てきれないけどね。

 一人思考に耽っていると、ぞろぞろと音がしたので顔を上げる。

 どうやら次の階に行くようで、みんな上がってるようだ。

 ラッキー! と思った僕は人ごみが消えたことを確認して下へ降り、先程の場所へ戻って自分が選んだ携帯があることを確認し、それを持って急いで先程の新規契約申し込み場所へ向かい「これ、買います」と暗示がまだ聞いてる声で店員さんに話しかける。

 すると店員さんは「少々お待ちください」と言って一人が奥へ消え、入れ替わるようにもう一人来て「新規の方ですか?」と質問されたので「はい」と答える。

「でしたらこちらをご記入ください」

 渡されたのは二十世紀と変わらぬ契約書。一分で書いた僕はその書類を返す。

 店員さんは顔色一つ変えずに(でも眉は少し広がっていた)「ではどのようなプランを選びになりますか?」と聞いてきたので、「パケ放題の制限なしで」と答えた。

 が、ちょっと渋られた。

「お客様は十五歳なので、その設定でしたらご両親の承認を受けてもらわないといけないのですが……」

 なんだとっ!? そんな枷があったのか!

 でもここで退くわけにはいかない。とりあえず夢のパケ放題WEB制限なしにするまでは!!

「うちの両親(死後の世界に)飛び立ってしまったんですよ」

「でしたらその時にご両親と一緒に来られたらよろしいかと思います」

「(もう帰ってこないけど)いつ帰ってくるかわかりませんし…高校からの連絡が来ないと困るんですよ。固定電話ありませんし」

「それはそうかもしれませんが……これも規則ですので」

 あー面倒だ! 切り札なんてありもしないからなおさら面倒だ!! しかもあっち切り札使ってきたし!

 どうする? 一体どうやって突破する? あっちの正論を屁理屈で突破できそうだけど、それやったら確実に僕の症状は悪化するに違いない。

 ……仕方ない。ここはおとなしく引き下がろう。

「すみませんでした。ですので、別プランにしてもらえないでしょうか?」

「そうですね……こちらがお客様が選べるプランになります」

 そう言って見せてきたのは、まぁ似たようなもの。こっちだと家族との割引が効いて、こっちだと同じ会社(星)のユーザーとの割引が効くと。

 僕に家族なんていないから後者だね、確実に。


 そんなこんなで、僕の携帯を買う話はここで終わる――――――はずだった・・・・・。


 けど面倒なので詳細は語らないから簡単に説明すると、


 なんか…ナイフ持った海王星人の方が振り回して向かってきたので後ろ気にせずにナイフ持った手をつかんで上へ投げただけなのに……


 この番組のMC(かな?)の女性の方(先程あの携帯ショップでマイク持ってた方)が人ごみかき分けてきたので、僕は急いで転移停に乗って帰りました。


 以上!!




 あ。初期設定終って遊んでたらスマホ(二十世紀前の)売るのを思い出した。

 急いで別な場所行って売ったね。560,000ヘルしたんだから驚きだよ!

 ……ネットで調べたけど、十五歳以上で普通に買えるみたいね、携帯。僕達の星だと。

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