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空気な不死者  作者: 末吉
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少々おかしな空欄がありますが、気にしないでください。

 はてさて。学校の授業が始まって、部活動説明会や委員会説明会、入部締切が終わって結局どこにも入ることなく始まった僕の四度目の高校生活。

 授業暇。はっきり言って暇。歴史なんてみんな体験して知ってるし、数式なんてものは大々的にテレビで紹介されてた記憶があるから覚えてるし、外国語なんて全部知ってるし翻訳機があるから困ったことがない。

 そして僕の席は窓際。さらに存在感の薄さが相まって、指名されることなど無きに等しく居眠りし放題!

 ……なんて嬉しいわけないじゃん。僕は生徒とお話ししたいの。名前を覚えてもらいたいの。

 でも成功したことなんてありません。近寄ったけど話し掛けられず、呼びかけようとしたけど声すら出ない。

 集団という枠にいるはずなのに、というかその枠にいるせいか、すごい緊張して話せません。

 こんなんじゃダメだと分かっているんだけどなぁ。そう思いながら机に突っ伏している僕。


 学校生活が始まって三週間。はっきり言おう。僕はまだ、誰とも会話できていない。

 もうね。ここまで来たらまたボッチで三年暮らすのもやぶさかではないと思えてしまっている自分がいるんだよね。どうやら僕のボッチ根性は根深いようで。

 そのせいで現在プチ鬱状態。私今、学校来なくてもいいんじゃないかと思っています。

 そりゃぁね? 人見知りだから頑張ろうと意気込んだよ? でももう心が折れそう。なんか不登校でもいい気がしてきた。どうせ誰も僕に気付かないだろうけど。

 あーやだやだ。最近の若い子の趣味などの話に聞き耳を立ててるけど、それのどこがいいのかわからないよ。流行のファッションとかの話されてもさ。そもそも僕は不死者になる前からファッションに理解が乏しいせいでそんな雑誌見たことないし、不死者になってからは目立つような服を買おうとさえ思わなかったもん。あとどうにもゲームの話とかもついていけない。VR装置? 目視的ネットサーフィン装置とどこが違うの? 状態。ははっ。

 だからもう……いいかなぁって。

「あ、あの……」

「…………」

 疲れたよ、大型犬…………って、近所で声が聞こえた気が。

 一瞬そう思って顔を上げかけたけど違うかとすぐさま思い直し、再び突っ伏す。

 どうせ話し掛けられたと思ったのは幻聴だったんだよ。だって人影見えなかったし。人見る前にすぐ戻したからかもしれないけど。

「あの…」

「…………」

 触られているのもきっと気のせいだ。なんか人の温もりを感じるのは僕の幻覚に決まっている。

 だって不死者になる前ぐらいにしか温もりを感じたことなかったし。

 べ、別に寂しいわけでも僻んでるわけでもないし? ただいい加減現代人と触れ合ってみるのも悪くないかなーっと思っただけだし?

 ……はい見栄はりましたすいません。本当に寂しくなったので友達というものが欲しいのです。ガチで。

「む、無視しないでください…」

「………はへ?」

 思わず顔を上げて声のした方を向いてしまう。

 そこにいたのは、いつぞや僕を轢いた女の子だった。




 現在はどうやら昼休み。僕はそこまで机に突っ伏していたようだ。

 で、その少女はなぜか僕を恥ずかしそうに見ていた。僕も今恥ずかしい。

 そしてなんだなんだと集まる視線。空気だった僕にとっては数の暴力に等しい。

 今までで一番の緊張。喋ることすらしていないのにみられているという事実による緊張。

 やばいやばいやばい。もう心臓が高鳴り続けてるし、気が遠く……

「あふん」

「……って、え!? あ、あの、大丈夫ですか!?」

 もう…限界です……。寝させてください……。

 そこで僕の意識はなくなった。




 ――――記憶を見ている。

 ここら辺過去形にならないのは、意識が存在する僕が気を失ったと理解した後の事だと認識しているからである。

 と、なんか哲学っぽい話になっているのは置いといて、ともかく。

 僕は昔の昔、とんでもなく昔――――僕が不死者になる少し前の記憶を見ている。これが夢というものに分類されるのであれば、僕の夢は果たして何を意味しているのだろうかなんて考えてしまう。

 考えたくないわけではないのだけれど、どうにも昔の事が鮮明に思い出すことが難しい僕にとって、こうして記憶を見るのはきっと意味があるのだろうと思えてしまうのだから仕方がない。どうでもいいけど人間の記憶力は140年分あるそうだ。不死者の僕にそんな際限はない。ただ、だいぶ昔の話は記憶が薄れているというだけ。なんというか、こういうのを理解してしまうと僕って隠れてた方がいいのかもしれないと思えてしまうのが不思議だ。

 それで昔の記憶の話か……教えてもいいのだろうけれど、僕としてはこの記憶は自分だけにとどめておきたいと思う程自分にとっては大切なものなので、詳しく語りたくない。

 なのでここはそのまま起きてしまおう。というより、今この場で語るのは無粋な上に現状の自分がどうなっているのかを知らないとまずい気がするのだ。

 そう決意して目を覚ます。


 僕の目に映っていたのは、先ほど僕を恥ずかしそうに見ていた黒髪おさげの少女のアップされた顔だった。丸眼鏡の奥に映る澄んだ瞳がなんか素敵。ていうか美人といっても過言ではないだろう。基準がなんなのか分からないので断言もしくは明言できないけれど。

 とりあえず瞬きをしてみる。するとその少女はかぁっと顔を赤くして僕の視界から顔を消した。

 天井の蛍光灯でとりあえず保健室だろうとあたりをつける。一生縁がないと思ったけど、失神して保健室とは我ながら何とも情けないものだと思ったり思わなかったり。

 とにもかくにも起き上がろう。さすがに失神している間に死ぬようなことはなかっただろうけど、我が身かわいさで異常があるか真っ先に調べたい。ま、調べたところで傷口すらないから失神してる間に殺されても「覚えがない」の一言で済まされてしまうんだけど。

 起き上がりながらも思考が平常に稼働していることに安堵する。神経毒、というか、毒全般を浴びたことがないため不死者でも死ぬかどうかわからない身としては、そんな可能性を潰したいと思えて仕方がないのだ。

 で、起きてみた。

 周囲を見渡してみた。

「だ、大丈夫…ですか?」

 幻覚でも幻聴でもなく、紛れもなく僕の視界には僕を轢いた少女がいた。パイプ椅子に座って。

 白い仕切りのカーテンが見えたので保健室で間違いない。とりあえず運んでくれたのが誰だかわからないけれど、感謝と謝罪を込めて手を合わせよう……その少女を見ないで。

 あのね? ボッチ歴ウン千年の僕が女の子と二人きりとかマジ無理ゲーなのよ。分かる? このいきなり異性と一緒にされたボッチの気持ちが。人見知りで同性にも声をかけられなかった僕が、異性だよ? なんでだっ! と天井に向けて叫びたくなるから、マジで。

 確かに名前を憶えて欲しいとか友達欲しいとか思ったけれどさ……いきなり異性はハードル高すぎだよ神様ぁ…。

「はぁ……」

「あの、」

 …現実逃避すらできないのか。僕にこの場で慣れることで対人スキルをアップさせろというのか!!

 なんかもう、この茶番飽きたからいいや。

 意識を切り替えて仕方なく少女の方を向く。そこにいたのは、失神する前と変わっていない少女の姿が。弁当食べてるけど。

 あ、お昼持ってきてない。まぁ食べなくても生きていけるからいいんだけど。

 と、とととととりあえずはな、なななななななにか喋ろう。間が持たない。

 僕はぐらぐらな決意をして口を開き、なんとか言葉を―――――

「にゃに?」

 ――――盛大に噛んだ。

「……」

「……」

「………す、すみませんでした」

「い、いえ!」

 沈黙に耐えきれず土下座を敢行。形だけは覚えてるし、ベッドの上で沈黙の間静かに正座してた。

 そして僕の正座を見て少女は両手を振って、ついでに首も振って否定してくれる。

 僕、そんなに人でなしかな……むしろ無害中の無害なんだけど………。

 心の中でそう思いながら、僕は深呼吸して話しかけた。

「ど、どうしたの? ぼ、ぼぼぼ僕に何か用?」

 深呼吸してもこのテンパり様。僕の人見知りは伊達じゃないことの証明。嬉しくないけど。

 対し少女は、僕より落ち着いていながらも――それでも少しテンパりながら――いきなり立ち上がって頭を下げた。

「ごっ、ごごごごごめんなさい!!」

「……え、いや」

 謝罪されている内容を察し、とりあえず冷静になった僕は頭を掻く。

 バイクで轢くという行為自体犯罪だからね。その罪の重さに耐えられなくてこうして僕を探してきたんだろう。

 そう思った僕は彼女をなだめる。

「アレ・・は別に問題ないよ。僕は警察に届けたりしないから」

 だって不死者だし。事件に巻き込まれて身元洗いだされたら大変な騒ぎになるし。

 だけど彼女はまだ頭を上げてくれない。

「そ、それもありますけど、さ、さっきの事も……」

「えっと……それも大丈夫。僕視線が怖いとかじゃなくて、注目されなかったから耐性がなかっただけなんだよ」

 それも2000年単位でね。

 勿論最後は口にしなかったけど、僕の言葉でとりあえず落ち着いたのか、彼女はようやく顔を上げてくれた。心配そうな顔のままだけど。

「そ、そうですか……?」

「まぁ、ね。け、結構人見知りでさ」

「そ、そうですか。じ、実は私もなんですよ」

「そ、それは、さ、最初に会った時に分かってたけど」

「そ、そうですか」

「…………」

「…………」

「「………」」

 つ、続かない…! 会話が一切続かない!! せっかくのチャンスが水の泡になる!! でもどうすればいいのか分からなーい!!

 なんて心の中で頭を抱えて首を振っている僕と同時に悩んでいると、チャイムの音が。

「「あ」」

 急いで僕達は行動する。彼女は弁当を片づけ、僕はベッドから出て。

 遅刻確定じゃないかと思いながら僕は彼女に声をかけようと思ったけれど、すでに少女はいなかった。




 遅刻? しましたよ勿論。そして視線にさらされてまた失神して保健室直行ですよ。

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