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空気な不死者  作者: 末吉
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 用具箱(ロッカーみたいな大きさ)を開けたら何故か階段があったという不思議については考えずに僕はその扉を外し、バックが入らなそうだったので無理矢理はこの中を広げ――ただけじゃ進めないので、極めて遺憾ながらその前にリュックを置き、トラップを置いて先程までと同じ装備で下におりることにした。

 カツン、カツンっと音がする。どうやらこの階段は鉄らしく、結構古いものだと認識する。

 それこそ、一歩間違えたら崩れそうな感じが……って怖いねそんなことになったらさぁ!

「おわっ!」

 うっかりというより、どう考えても錆びていたとしか思えないような抜け方で僕は落下する。別につかまっても良かったのだけれども、さすがにそれも抜けたらと思うとつかもうと思えなかった。

「いてっ」

 腰を打った。上を見ると高さはおそらく2メートルほどかな。おかげでそこまで痛いと思えなかったから大丈夫だけどさ。

 腰をさすりながら立ち上がる頃にはもう痛みがなくなったので、苦痛に顔をゆがめずに周囲を見渡す。

 うーん。どうやらここは発電施設かなんかみたいだ。その丁度予備ケーブルの上に落ちたみたい。

『大丈夫ですか』

「ああ、はい。大丈夫」

 彼女が心配そうな顔でこちらに現れた。というより、何か知らないけどより一層はっきりと見える気がするんだけど。

 僕が首を傾げながらそう思っていると、彼女も首を傾げた。なぜ首を傾げているのか不思議なのだろうか。不思議なんだろうね、きっと。

 だから僕は思わず聞いてしまった。

「なんか、さっきよりよりはっきり見えるんですけど。どうして?」

『……それはきっと、核コアが近いからですよ』

「そうですか……ところでなんだけど」

『…何です?』

 僕が敬語を使わなくなったのに普通に返事が返ってきたので、別に大丈夫かなと思いそのままの口調で質問してみた。

「仮にコアを壊せたとして……君はどうなるの?」

『…………』

 答えられない・・・・・・、ね。悲しい思いをさせると思っているからか、悲しい思いをするからなのかはわからないけど、そんなことは僕基本的にどうでもいいし、分かりきってなくても特に何が不安なことがあるという訳ではないのでだんまりは不要だったりする。

 ま、言いたくないのなら別にいいかと思い僕は彼女に「この後どこに行けばいいの?」と訊くと、『その前に、少し話をしてもいいですか?』と訊ね返されたので、別に僕自身は時間という概念にとらわれていないために何年いても大丈夫だったりするので頷いておく。

 彼女がケーブルの上に座ったので僕もそれに倣って座ったところ、それを見計らってからか口を開いた。

『私は400年前には普通の地球人でした』

「だろうね。どことなく同郷の顔立ちだし」

『そうですか? 異世界人と似てる気がどことなくしてます』

「あぁ確かにそうだけど、細かいパーツ、特に目元は違うよ」

『…細かいところまで見てますね』

「それで? 一体何があったの?」

『……はい。授業を受けていたその日。空がとても暗くなったと思った途端、急に幽霊たちが空から降ってきたんです』

「……」

 そういえばニュースでそんな現場が流れていた気がするな。突入するまでは空から流れてる白い幽霊が延々と学校にいるシーンを。

 思い出すと連鎖的にそれに関することを思い返すのでこれ以上思い出すのをやめ、僕は「続けて」と先を促した。

『最初は白い光が差し込んできたのだと思っていましたけど、それが直線に伸びず、様々な教室に飛び込んできて…そのうちの一つの音楽室――私がいた教室にその幽霊が窓ガラスを通ってきたんです』

「…なるほどね。それでパニックになった上に学校に結界が張られたせいで人が出れなくて、幽霊に乗っ取られた人間が大量に出たのか」

『……そして、除霊される被害者も・・・・・・・・・』

 ここで豆知識というかなんというか基礎知識。

 幽霊というのは実体がない。それは当然だけど、それでも彼らを『白い何か』と僕達は認識できる。より明確に認識できるのは幽霊側の力が強いか、巫女か陰陽師の力(彼らは霊力等と呼ぶらしい)を持つ人間、あるいは魔法が使える人間のみ。そこで霊力=魔力だという証明になるのだけど、陰陽師側は肯定しないという頑固ぶりをずっっとしている。

 話がそれたね。『白い何か』と認識できる僕達に幽霊を成仏させるのは基本的に難しい。しかも、物理的攻撃は当たらずにすり抜けるし、下手をすると乗っ取られてしまう。

 乗っ取られ方は簡単。その幽霊が人の心臓部分を突き抜けたら終わり。

 乗っ取られたらどうなるかというと、その人は幽霊に等しい存在となり、2度と人間に戻ることができない。ただ、その幽霊もその人から離れられないからどちらかというと合体の方が言葉としては正確かもしれない。あと、彼らは何らかの力によって生み出されており、それが壊れても消滅する。何かは知らないけど。

 以上。幽霊に関する豆知識。

「それで君は助かったんだよね?」

『そうです。私は幽霊に乗っ取られましたが、存在感が何故か薄かったために除霊を免れました』

 悲しそうに笑いながら言う彼女。確かに気付かれないせいでこうして生きてる|(?)のだから悲しいのかもしれない。僕は気付かれずに死ねないからこうして生きているけど。

 幸か不幸かわからないなーと上の空で考えていると、彼女は続けた。

『それからしばらくこの建物内を歩き回ったんです。壁をすり抜けることとか体験しながら。そこでこの地下室を見つけました』

「だろうね。そうじゃなきゃこんな場所、分からないだろうし」

『そのままこの地下室を歩いていたところ、一番奥にあったんです。白く光り輝く核が』

「白く……光り輝く…核? どうしてそうだと分かったの?」

 核コアというものが公式に発表されたのは確か200年前。その間彼女はここから一度も出ていないはず。なのになぜそうだと確信してるのか不思議だ。

 それに対し彼女はにこやかに笑うだけで回答を濁し、そのまま進めた。

『その時の状態と今の状態は同じでして、近づけば近づくほど私の存在が固まるんです』

「そう。だからさっきより鮮明に形が見える訳だね……でもここまで着といてなんだけどさ」

『なんです?』

「いや、僕除霊できないと思うんだよね」

『え?』

「だって魔力ないもん僕」

『えっ!?』

 いや。そこで驚かれても困るんだけどなぁ。魔法も何も使えないのだから僕は。ただ今までに培ってきたものだけ普通に難なく扱えることができるけどさ。

『見えてますよね!?』

「見えててもそれに攻撃が通るかどうかわからないんだよ」

『私に触ってましたよね!?』

「……あ、そうだね」

『なら攻撃できるんじゃないですか!』

「…そこは分からないよ」

 そう言うと彼女は立ち上がって僕の手を引っ張り始めたので、おとなしく立ち上がって彼女が連れて行こうとする場所へ向かうことにした。


 あー普通に壁は通り抜けなかったからそこは竹光製のナイフで切ったよ。



 歩くこと数分。壁切ったり湧き出てくる骸骨撃ち抜いたりして進んだ結果。

『あれです』

「…確かにそれっぽいね」

 すこーし離れた変圧器の陰に隠れてる中、僕と彼女はちらっとそれ・・を見てから隠れて会話していた。

 直径は2メートルほど。彼女の言うとおり白く輝いている球体。核コアというのはテレビで見たことしかないけど、これはまさしく同じものだろう。

『アレを壊せばきっと私も解放され、骸骨たちも消えるでしょう』

「あー骸骨あいつのせいかー……って、なんで僕達隠れてるの?」

『場の雰囲気というかお約束、ではないですか?』

「何の? いや知ってるけどさ」

 ゲームとかテレビとかのことだろうし。伊達に何千年も見てないよ。暇過ぎて。飽き過ぎてたけど。

「さっさといこうかな」

『ちょっと待ってください。ここでまだお約束が』

「……余裕だね?」

『え、えっと…すいません』

 謝ったので僕が飛び出した瞬間。


『消えろてめぇらぁ! 雷光十槍デニーロ・レイ・ボルテッカー!!』


 そんな叫び声が上から聞こえたと同時。


 ズガァン!! と槍が球体――コアに刺さった。


「『………………』」


 どうやら終わったらしい。僕のここまでの努力はなんだったんだろう……

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