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空気な不死者  作者: 末吉
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 半死半生って言葉を思い出す。

 半分は死んでいて、半分が生きているような……そんな様態や状態を示すのに使われるものだった気がする。

 例を挙げるのなら、先ほど僕が撃ち抜きまくった骸骨の集団も当てはまるのではないだろうか? のんびり歩きながら、僕はそんなことを考えていた。

 ただ今は旧棟の中。二人は来た道をダッシュで引き返してしまったので。


 絶賛一人フィーバー中。


 なんかね。とりあえずもう一度五階まで上がろうと思い立った僕が階段を昇った先々でその骸骨集団が現れるもので、一人という何やってもお咎めなしだぜヒャッハー状態の僕は手榴弾で骨をまき散らし、竹光製ナイフで頭蓋から縦に真っ二つにして五階までもう一度来た。

 にしても……この骸骨ってどこから出てくるんだろう? 先輩見たことあるのかな? 改造エアガンの残弾を確認しながらふと疑問に思う僕。

 というよりも、半死半生って実際生きるか死ぬかの瀬戸際なような気がするのは気のせいでもなんでもないよね。僕とは無縁の言葉……じゃなかったよ本当。

 なぜなら、というよりこれは前にもいたことがあるけど、不死者というのは人生に終わりがないので生き急ぐことも何もない。だから何の目標もなく生きている間というのは精神的に死んでいるといっても過言ではない。

 だったら僕は半死反省のほうが似合っているのかな。目標なく生きてることに今反省しているから。あ、でも大体半死半生の人って後悔したり反省したりするから半死反省の方がしっくりくるね本当にびっくり。

 さて思考を元に戻そう。今は五階に到着した。階段は屋上に続くものが在るけれど、僕としては何もないと思われる場所に行くのは労力の無駄だとはっきり思っているので行かない。

 それに、魔法らしきものが仕掛けられていたからね。何かあると思わずにはいられないよ。

「……でまぁ左側から行ってるけども……トイレは完全に使い物にならない状態にまで壊れてるし、特別教室の中を調べているけどほとんどそのまんまみたいだし」

 どうやら濁流は一度きりらしい。まぁそう何度もあったら堪らないけど。

 現在は扉を蹴飛ばして中を調査しています。鍵はないし、あったとしても錆びて使えないことは確実だから。

 うーん。別の部屋行った方がいいかな。調べたところでなにもなさそうだし。

 あーでも、魔法を使えるギルフォードさん達なら何か分かるのかな? 僕には何の変哲もないものに見えるけど、実はそれに重大な秘密が隠されていたとか。

 うん今日も想像力は平常運転だ。まぁ特に危機と思える状況に直面していないだけなんだけどね。

「ていっ」

 隣の部屋に入る。ここはどうやら音楽室らしい。ピアノ置いてある。

 調律もクソもあったものじゃないだろうなこのピアノ。そんなことを思いながら周囲を見渡していると、そのピアノの近くに蹲っている人が、い…た……?

 ヘッドライトでその箇所を照らしつつ、僕は信じられないものを見ている気がするので瞬きを数回する。

 おかしいおかしいおかしいおかしい。なんでこんなところに僕以外の実体がある人間がいるんだ? しかもどうやらこいつ、ずっと蹲ってるみたいだし。

 …………どういうことだろう。

 考えても結論が出るわけないと思った僕は、とりあえず声をかけてみることにした。

「ねぇ」

「……」

「あの」

「……」

「おーい」

「……」

 グスッ。見事にスルーされてる。ものの見事に返事も反応もしてくれない。声が聞こえてないのかどうかわからないけれども、この扱いはひどすぎる。何この放置。僕よりひどい奴がいるとは思わなかった。

 若干心が折れそうになっている自分を何とか立て直しながら動向を見てみる。

 男か女か分からない。身長も何も分からない。唯一分かるのは、制服がこの旧棟が封鎖される前のやつというだけ。……ん?

 なんか嫌な予測が頭の中で閃いた。本当に信じたくないというか、あーあの話本当だったんだなぁと思うような予測が。


 もしかして…………幽霊?


 い、いやまだそうと決まったはずではない。たまたまそんな制服のデザインを見つけた人がって……そんなのいるわけねぇぇ!!

 予測が確信に変わる。予想が信じられない結論へと導く。


 ――――どうやら、僕の目の前で蹲ってるのは幽霊らしい。


 いやしかし幽霊が見えるなんて思ってもみなかったな。生まれてこの方実際に見たことなんて一度もないし。

 少しばかり驚きながら、仕方なく近寄ることにする。だって向こうが近寄ってくれないし、声も何も聞こえてないみたいだしね!

 そんな感じだから近づかなければ情報を得られないのは明白。なので一歩一歩確実に近づくことにしてあと数歩でその人の背中に近づけると思った時、いきなり振り返ってきた。

「「…………」」

 き、気まずい……。何が気まずいって一歩踏み出そうとした瞬間に振り返って視線が合ってしまったものだから、二人とも固まるという状況に陥ってしまった。

 あ、あー。なんて言えばいいのか分からない。どんなふうに言葉を紡げばいいのかわからない。久し振りに僕の人見知りが発動してる気がする。うん久し振り過ぎて自分でも驚いてどうすればいいのか思考能力が低下して処理が追い付かない。

 と、僕が固まっている隙に、あちらの方(よく見たら女っぽい顔立ちしてる。しかも地球人の)が口を開いた。

『……あ』

「あー」

『見えるん…ですか…?』

「まぁ、うん」

「『…………』」

 …………どうしたものだろうね?



 さて。僕が不死者となる前・の幽霊の認識についてはまぁ、みんな知っている通りオカルトでほぼ実在しないという認識がほぼ共通的と言うか一般的だったのだけれども。

 異世界との交流が始まったらすぐにその存在は認められることになった。

 当たり前と言えば当たり前のことで、ファンタジー世界にはスケルトンやゾンビなんて小説や映画だけの話に出てくる種族が存在してるのが公言されているのだ。オカルトの類なんてすぐに『あ、いるんだ』で認識が終わっている。……まぁ敵というか夜にしか動かない種族、というよりは、太陽が当たらない場所で暮らしているそうだ。

 そんな彼ら種族は一度、何が原因か知らないけどこの学園に大量に来て乗っ取り、色々とやらかしたためにわざわざ陰陽師や巫女さんが除霊しまくって事件がある。

 たぶん、そのうちの一体だと思うんだけど彼女……

 僕はとりあえず振り向いて固まっている少女の前に座って緊張しながら話し掛けた。

「え、えっと。君は…400年前の騒動の被害者?」

『……は、はい。……あの、なんで知ってるんですか? まさか』

「あぁいや。僕に魔を払う力なんてないよ。ただ両親が考古学者だっただけ」

 うん。もうすんなり出てきたよ両親の職業(どちらも嘘設定)。これは昔の仕事が詐欺師だと言われても僕は納得してしまうぞ?

 そんな僕に彼女(多分)は『そう、ですか……』と言ってから体をこちらに向き押し、いきなり土下座しだした。

「あの、どうしたの?」

『どうして見えるのかわかりませんが、お願いしたいことがあります! この校舎の地下にある"核コア"を破壊していただけませんか!? そうしないとまた奴らが……!!』

「え? 地下? あるのこの建物に」

『はい…幽霊になったにもかかわらず、気付いてもらえないままフラフラと彷徨っていたら地下へたどり着いたんです』

 ……なっ、なんて悲しい話なんだ。僕みたいに空気だったというのか彼女は!!

 僕はいてもたってもいられずに立ち上がり、彼女の手を握って・・・万歳させるように立ち上がらせる。

『え、えっ!?』

「さぁ行こうか案内してくれない!? さっさと壊そうそんなもの!!」

『あ、あのー。は、恥ずかしいんですけど……』

「空気でぼっちなんて僕みたいじゃないか! そんな生活は一刻も早くやめて仲良く出来る人を探そう!! だから壊しに行こう!」

『わ、分かりましたから…お願いですから、手、手を放してください』

「あぁごめん」

 そう言って僕は手を放す。

 普通に着地した彼女は顔を若干赤らめながらスカートを抑えて『……見ました?』と聞いてきたので、僕は何のことか分からないから首を横に振って音楽室を出ることにした。

 でもね。よく考えたら僕に地下室へ行く方法が分かるわけなかった! でもちょっとヒントになりそうなことはある!

 この校舎、何故か校庭側に教室が集中していて、階段側には階段とトイレぐらいしかない。ということはどこかに地下室へ移動できる場所があるんだろうって推測を今立ててみた。

 ま、結局は彼女が音楽室から出てきてくれないと分からないけどね。

『お、お待たせいたしました』

「あ、うん」

 何してたのかなんて聞かない。面倒だからじゃないよ? 興味がないから。

 これも立派な人助けだよね。そんなことを思いながら、僕は幽霊(スカート履いてるけど性別不明のため)の後を歩いて行った。


「そういえば名前……」

『名前、ですか…』

「あるの?」

『……』

 階段を下りながら幽霊に名前について尋ねると、その場で立ち止まって考え込んでしまった。どうやら思い出しているようだ。

『………思い出せません』

「そう。なら性別は?」

『私女性です!!』

「そこは即答できるんだ」

『当たり前です!』

 ありゃ。失礼な事聞いちゃった。ただまぁ、名前が思い出せないのも無理はないかと思う。

 なにせ400年前に幽霊になってしまったのだ。そこから今日まで誰とも会わなかったら、名前なんて忘れてしまう。

 僕? 覚えてるよ? ボケ防止という訳ではないけれど。なんだかんだで結構使うしね。忘れたら大変な目に遭うし。きっと。

 まぁ今は彼女の機嫌をどうにかすることを考えた方がいいのかな? そんなことを思いつつ頭を掻きながら僕は「ごめん。ちょっと確認したかっただけなんだ」と謝ることにした。

『あなたはデリカシーないですね』

「うんそうだろうね。欠如しているという点ではあってるのかもしれない。それと、僕の名前は空野明だよ。空野あきらじゃなくて」

『私こう見えても生前三年生でしたけど』

「あ、すいません先輩」

『…ま、いいです。行きましょうか空野君』

「はい」

 …………。どうでもいいけど、僕の事不死者だってばれてないよね?

 じゃなくて。なんで名前は思い出せなくて自分の学年を覚えているのだろうか? まぁ人間の記憶力というのは意外に馬鹿で、どうでもいいものばかり記憶していたりするものらしいけどね。

 そんな感じでそのまま階段を下りた僕達は1階に到着したと思ったら、その隣の扉の中に入ったので僕はそれを蹴破り、入る。

 ここは確か掃除道具入れだったはずだ。今はそんな面影すらないけども。

『こっちです』

 奥の方で手招きしているのが分かる。とりあえず言いたいことは、これが罠なんじゃないかという事なんだけど……人様の手前、いうのが憚れる。

 やるしかないか。そう思った僕は、消えて行った彼女が手招きしていた用具箱まで歩きそれを開けた。

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