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空気な不死者  作者: 末吉
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 現在一階職員室前の廊下。僕は銃撃装備で辺りを見渡しながらその場を動けずにいた。

 というのも、ギルフォードさんが近くで気絶しているからである。

 まぁバックあるから大丈夫だろうけどさ。なんとなく置いて行ったらあとあと面倒なことになるのが小説では定番だから怖いんだよね。彼女気絶してるからさ、ほら、色々と、ね?

「でも行かなきゃ先輩見つけられないしなぁ」

 本当にどうしよう。とりあえずマガジン一個空になるまで壁や飛んできたもの撃ってたけど、これじゃ全く持って進まないのは明白。

 ……しょうがない。とりあえず彼女は置いて行こう。きっと何もしないだろう。

 マガジンを交換し、銃身をスライドさせる。オートマチックじゃないので一々やらなければいけないのだけど、別にそこは気にしなくても構わない欠点なので放置。

 銃を構えながらヘッドライトで照らされている道を進み始める。

 ……なんか。二十世紀前に流行ったガンアクションを思い出す。気分は国連調査官だ。それで間違いはないはず。

 歩き続けていると階段を発見したので、とりあえず先に上る。奥の方は降りてからでも別に大丈夫だし。

 カツン、カツン……自分の靴の音が反響するだけで辺りから音が一切聞こえない。緊張感というのはあるといえばあるけど、今の僕は平常心だ。伊達に物騒な時代の夜を、一人さびしく歩いていたわけじゃない。……戦時中なんてとくにね!! もうあれのせいで大概のホラー映画怖くなくなったよ!!

 あ、今はこっちに集中だね。とりあえず何かの気配がしたところに一発ブチ込んでもう一度スライドを引き、周囲を警戒しながら階段を上る。

 二階に着いた。ここは確か一年生の教室しかない。

 まぁ上から探していけばいいかな。

 そう思った僕は、脇目もふらずに上へ行くことにした。

「にしてもこんな空間でよくもまぁ生活できるものだ」

 僕だったら二日も持たないだろうね。そう心の中で付け足し、三階へ来たとき…カラカラカラ、と何か――具体的に言うとホラー映画でよくある骸骨が笑うような音――を耳にしたので警戒しつつ三階の廊下を照らす。

 が、照らした部分には何もない。見えるのはただ窓ガラスのみ。

「?」

 気のせいかなと思い首を傾げながら階段の方を向いたら再び音がしたけど、面倒になったのでそのまま階段を上る。

 だって特に調べようと思わなかったし。人の気配らしきものなかったし。あと面倒になったし。

 階段を上りながら、先程の事について考える。

 大体あの、音はするけど姿はないってやつ? あんなのは段々姿見えなければ別に気のせいかで片づけられるんだよ。そんなのも知らないのかなこのトラップと思しきものを設置した先輩は。まったく中途半端な知識だけを持ってる人間というのはこれだから嫌なんだよねこん畜生。やるんだったら音を鳴らして上の階段に影を映してもう一度音を鳴らして階段の上から何かを落としてから骸骨を大量に、それこそ視界を埋め尽くすかのように出現させないと。

「「「「ガラガラガラガラ……」」」」

「そうそうこんな風にね」

 四階に上がった瞬間骸骨の大群が出現したので、僕は頷きながらマグナムで一体の頭蓋骨を撃ち抜く。

 ざっと二十体ぐらいかな。今撃ち抜いたから十九体か。まぁともかく。

 もう一度スライドさせた僕はもう一体撃ち抜いてすぐさま銃身をスライドし、別な骸骨へ向けてから言った。

「じゃ、掃除の時間だね・・・・・・・」

 僕の改造エアガン(弾はBB弾)が火を噴くぜ!






「さてっと」

 所要時間五分。撃ち抜いた骸骨の数は三十を超え、残っているマガジンが六個ぐらい。ちょっと残弾が心もとない気がするけど、ま、いいよね。拾えば。

 近くにあるBB弾を拾い、空のマガジンに詰めていく。

 さすがBB弾。リサイクル性の高さは銃の中ではピカイチだ! 本当、恐ろしい程に良いよね!!

 ある程度拾ってから僕は階段を上る。ていうか、ここで足止めすることに意味がないことが分かってたから。弾が心許無いから拾ってたけどさ。

「にしても……本当に大変だな。当たりをつけて探せばよかった」

 五階に着いた僕はそう愚痴る。

 左右の道を照らしてからどちらへ行こうかその場で考えていると、急に風が吹いた・・・・・・・。

「?」

 吹くはずがない風が流れてきたことに首を傾げつつその方向へ向くと、今度は後ろから水音がしたので振り返ろうと思ったけど目に見える風の弾が飛んできたのでしゃがんでその方向へ撃つ。

 しかし当たった音がせず、今度はゴゴゴゴゴ……という音が後ろからしたために振り返る。

「えー?」

 なんか、濁流のように水が流れてきた。なので、とりあえず僕は踊り場に移動し、階段の手すりに上がる。

 水が一直線に流れていく。どうやらこちらには来ないようで一安心した。本当に。

 水が消えたのを確認した僕は屋上へ行くかどうかその場で考えていると、足元に違和感が生じたので降りると同時。手すりの部分が崩れ落ちた。

 いや崩れ落ちたという表現も適当ではないな。どっちかというと消失したというのが正しいかもしれないねどうしたものだろうか。

「似たような箇所があるのかなきっと。よっぽどここら辺を調べられたくないのか、それとも足止めにするためなのか……」

 本当にどうしよう? とりあえずここら辺から調べようかな。罠とかあるだろうけど、そんなの突破できるからね。正直不死者の強みを前面に押し出せば……ってダメじゃん。僕隠してるというのに!

 あーでもないこーでもないとその場で考えていると、大きな悲鳴が聞こえその声が置いてきた少女だと分かったので舌打ちして手摺りから飛び降りる。

 落下時間わずか十秒ぐらいで一階に到着し、特に怪我も何もなく。そこから先程おいてきた場所の方へ駆けだす。

「……いない」

 置いてあったのは僕のバックのみで、ギルフォードさんの姿はなかった。

 あーどうしたものか。ギルフォードさんはどうやら連れて行かれたか外に出て行ったのかわからないけど、とりあえず僕一人…か。

 ま、いいよね。僕一人っぽいし。先輩炙り出せればそれで。とりあえず旧棟の状態に関しては誰にも何も言われてないから。さぁ久し振りにはしゃごうかなー暴れようかなー何年振りかなー。

 身に着けていた装備はとりあえず外し、改造エアガンを内ポケットに入れてからバックの中を漁り、目当てのものを探す。

 ……これでもないなぁ。あれでもない。手榴弾(BB弾入り)も違うし電池の予備でもないし……っと。あったこれだこれ。ババーン。竹光製ナイフ〜(太い青色ロボット風)。

 そういえばあのアニメもう終わったんだよね。あとそんなロボットできなかったんだよなー22世紀に。できたのは人間みたいに動けるだけ。しゃべりもしないし、感情を表すこともできないやつ。

 ま、今じゃヒューマノイドって人間みたいなロボットも繁栄し、共存してるから特に何も問題ないといえばないね。……あまり会ったことないけど。あー秘密な道具がほしいなぁと思った時期が一時期あったけど、はっきり言おう。どこでも行けるドアはもう1500年ぐらい前に完成して身近なものになっているんだよ。転移停として。地球人だけの技術力や考え方じゃ無理だったけどね、さすがに。

 って、こんなこと考えてる場合じゃなかったね。今はかの「きゃぁぁぁぁ!!」え?

 とりあえずナイフ片手のまま振り返る。丁度僕が通ってきた方から声が聞こえた。

 ここで僕は少し冷静になる。

 あ、ギルフォードさん捕まってたんだ。なんだがっか……違う違う。よかったぁ本気で暴れようとしなくて。本気で暴れたら確実にこの建物の強度が心配なほど苛烈で熾烈だからね、多分。やったことがないからわからないけどやりたいとあまり思わなかったりする。きっと腹いせにならいたぶれる気がする。

 ……最近僕ってやたら黒いね。やはり1900年前に一年間働いてた時の影響かな。あそこまで濃いとさすがに根強く残ってしまんだろうね。まぁババァ相手に容赦する気なんてさらさらないけどね! 僕は自由に生きてるようなものなのだから!!

「た、助けてくださーーい!」

「がふっ!」

 OH…….まさかそのままの勢いで突進してくるとは思わなかったよ……。おかげで一瞬意識失いかけた。

 でもすぐに意識なんて取り戻せるので僕は目を開けると、予想通り僕の上にはというか馬乗りみたいな状態で、ギルフォードさんがいた。なんか彼女、ものすごいおびえてる。そして泣いてる。僕目を覚まして意識があるというにもかかわらず、彼女は僕に跨ったまますごい勢いで泣きながら謝っていた。

「ご、ごべんなざぁい!」

「あの……謝るか泣くかどちらかにしてくれないかな?」

「!?」

 やれやれ。感受性が高いというか感情の起伏が人並み以上というか。

 とりあえず起き上がりたいので泣いてる彼女に「どいてくれない?」とお願いして上からどいてもらい、勢いで立ち上がってから竹光製のナイフを拾って息を大きく吸い、校舎全体…とまではいかないけどある程度響き渡らせるように、僕は叫んだ。

「おいこらヒッキー! 後輩に連れ戻されたくなかったら自分でこいやボケェ!! 後輩泣かした陰鬱で最低な先輩として学校中、いや世界中に広めるぞ! それが嫌ならこの校舎ぶっ壊して生き埋めにしてやるぞこらぁ!!」

 ……あぁすっきりした。姿見せない屑な先輩相手にするとストレスってたまるものだね。本当やってられないよ。

 言うだけ言った僕は、未だに怯えてるギルフォードさんに手を差し伸べて「じゃ、外に出ようか?」と言ってみる。

 一方の彼女は少し放心状態になってたようで、「……はっ、はい」と僕の手を握って何とか立った。

 さぁ帰ろう。正直根暗で引きこもりを相手にするのは対人スキルが少ない僕たちには荷が重すぎた。

 でもこれからどうしようかなーとギルフォードさんの手を握りながら一緒に歩いていると、入り口の前に杖を持った身長150センチぐらいのちっさい人がいた。

「うるせぇ俺は小さくない! これでも種族の中じゃでかいんだ!!」

「あーよく言われてるんですね・・・」

「そうだよ! 文句あるか!!」

「いえ特には。ですが……」

「あ?」

「出てきてくれて・・・・・・・、ありがとうございます・・・・・・・・・・」

「お前が来いって言ったんだろ! せっかく気に入った場所壊されたくないからな!! ……それに、後輩泣かせたとかばらされたら堪んないし」

「じゃ、表行きましょう先輩」

「は?」

 僕は問答無用でちっさい人を蹴っ飛ばし、ギルフォードさんと外に出た。


 ふぅ。これでミッション・コンプリートだね!

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