バレットダンサー
遅ればせながら遊森謡子様企画の「武器っちょ企画」への参加作品です。
定義の〈マニアックな武器 or 武器のマニアックな使い方〉からは外れそうなのどうかと思いましたがマニアックな王道的使いかと云う事でご容赦、願います。
それがダメな人は回れ右をオススメします。それではお手柔らかにお願いします。参加条件は以下の通り。
●短編であること
●ジャンル『ファンタジー』
●テーマ『マニアックな武器 or 武器のマニアックな使い方』
青々とした木々。周りは緑が生い茂った木々が生えた山々。そんな木々が生い茂る中“ナニ”かいる。
葉っぱの塊のように見えるがギリースーツを被り、顔に迷彩のメイクまでして入念にカモフラージュした人間だ。
コレは街中に居たら“葉っぱのお化け”と子供が見たらガチ泣きされそうだ。
私の名前はJohn Doe。なに“名無しのジョン”だと?
嫌ならAlan SmitheeやJohn Smithとでも呼べ。
アメリカの公式には認められていない某陸軍特殊部隊員のスナイパー。
テロリストやゲリラとか“アメリカの敵”って呼ばれる連中のド頭を綺麗な吹き飛ばすのが仕事だった。
それが何の因果か任務中に味方に誤爆されてファンタジーな異世界に転移しちまった。
右も左も訳ワカメな世界に来きまって世話になったのが小国の領主のお姫様だ。
何かデッカイ獣(後で聞いたら魔獣)に喰われそうになった所を助けた恩で世話になっている。
そんな国が絶賛☆戦争中。大国と大国の狭間にある小国で普通は無視するものだが山岳地帯なものだから侵攻しようと思ったら唯一の進行ルートが小国を通るルートしかない物で侵攻されてます。
で、一宿一飯の恩義も兼ねて身元不明な不肖軍人の私が参戦している。そして今、狙っている目標は・・・
「・・・来やがったな。それにしても流石、ファンタジー世界」
スコープから覗く先には山間を飛んでくる集団。竜に乗った騎士。【ドラグーン】
たった1騎で1個騎士団に匹敵する戦力で航空戦力のないこの世界では唯一絶対最強の空の支配者。
その代わり育成には10年以上掛かり騎兵以上に金と手間が掛かる高目標。
コイツが今回の獲物だ。全く、マジモンのドラグーンと戦うとか人生解らんものだな。
身を潜めた場所から構え直しつつ、狙いを定めた。狙いはワイバーンの眉間。
普通の狙撃銃なら騎手しか狙えないが“コイツ”はそうではない。
【バレットM82A1】
全長1447.8mm、重量12.9kg(12900g)、装弾数10+1発、使用弾薬12.7×99mmNATO弾、有効射程2000m
通称「バレットライフル」1982年にバレット社(バレット・ファイアーアームズ社)が開発したである50口径大型セミオート式狙撃銃。
アメリカ軍を初めとし西側各国の特殊部隊や狙撃部隊に採用されている対物ライフルの代名詞の一丁。
「狙撃手の武器携行能力の範囲内で超遠距離の目標を確実に制圧する為の狙撃銃」というコンセプトの元に開発された。
弾薬にはM2重機関銃の12.7mm×99BMGと同規格ながら狙撃専用に再設計されたものを用い、肉厚高精度な銃身を組み合わせることで2kmに迫る有効射程と一撃必殺の威力を獲ている。
13kgという破格の重量と大型のマズルブレーキ、極めて低速で動作するショートリコイル機構によりある程度反動は押さえ込まれる為、セミオート射撃による継続的制圧力も持つ。
弱点はその重さと図体の大きさにより狙撃銃としては持ち運びしにくく、弾薬から出る大量のガスで銃口から巻き上がる砂埃やマズルフラッシュが大きく射撃位置がバレやすいのが挙げられる。
当初は全く売れなかったが、スウェーデン陸軍が1989年に危険物除去のために導入したのを皮切りに各国で採用され、その有効性が知られることとなる。
湾岸戦争では本銃を持った部隊が地上に展開。イラク軍との戦闘の際に2,000m先の装甲車を撃破したとの伝説を持つ。
イラク戦争では1,500m先のイラク兵を狙撃してイラク兵の体を真っ二つにしてしまったという。
このことから対物ライフル・長距離狙撃銃としての相当の威力が窺い知れる。
因みに.50口径弾を人間に対して射撃する事は、国際条約の禁止項目に抵触する恐れがあることから自粛が求められている。
が、いざ戦争となるとお構いなしに使用されているのが現状である。
ワイバーンの一騎に照準を定めた。ワイバーンの未来位置を予測しながら銃口を向ける
「さぁ、戦争の始まりだ。開戦の号砲を鳴らせ。バレットの裁きの下、12,7mm弾で奴らの顎を食いちぎれ」
そう呟きながらバレットの引き金を引き絞った。銃口からマズルフラッシュの閃光が迸り、強烈な銃声が響き渡る。反動が肩から全身に伝わる。
発射された50口径の弾丸はワイバーンの頭を吹き飛ばして、騎手ごと墜落して逝った。
他のドラグーンは何があったか分からずに居る所へもう一発、狙い撃つ。もう一発放たれたバレットの弾丸も見事に命中。
ワイバーンは大きく体をよろめきながら墜落して山の斜面に激突した。やはり山間に銃声が反響して発砲地点を特定出来ていない。
バレットを引っ提げながら隠れ場所から飛び出し、新たなる狙撃ポイントへと山間を駆け出した。
密集して群生している木々とギリースーツのお陰で上空からは見えない。
ドラグーンが一定の範囲を上空を旋回している。ワイバーンの咆哮が頭上を圧して轟いている。咆哮で木々の枝が揺れる。
怒ってる。怒ってる。今まで我がもの顔で飛んで敵を殺ってきプライド高い連中だ。怒り狂って冷静な判断を鈍らせている。
業を煮やした竜騎兵がワイバーンによるブレスで森を焼きだした。炎で炙り出そうとする気だが甘い。
スナイパーは我慢強い。待つ事には慣れている。藪の中で、雪の中で、何日も何日も蹲り獲物を持っている。
こんな炎に根負けしたり、追い出されたりしたりするもn、熱ッ!熱い!やばーギリースーツに燃え移る所だった。
ナローやりやがったな。お返しとばかりに地上へと降下していくワイバーンへと銃口を向ける。
12,7mmの弾丸は狙い違わずワイバーンに命中してそのまま地面に激突した。
スコープから目を外して上空を見上げる。3騎撃墜。残り4騎。どうやら2騎ずつ2組に分かれるようだ。
どちらの組も地上を舐め回すようにゆっくりと飛んでいる。しかも後続は前の奴より上の方を飛んでいる。
嫌な手だ。攻撃ヘリの対地攻撃ヘリ編隊に似てる。前の奴が攻撃したら上にいるもう一騎が攻撃する奴を攻撃する。
ソ連軍がアフガン侵攻した時にハインドがよく使った手だ。
利口な居るな。そして冷静だ。頭に血が昇った連中を纏めやがった。流石、精鋭部隊だ。スナイパーには厄介な相手だな。
こういう相手にはウンと遠くから一発撃ったら即逃げるに限るのだが生憎、ココで殲滅しないと不味いからな。
ワイバーンの動き追いながら先回りを掛ける。予め見つけて置いた狙撃ポイントに滑り込むように身を伏せながらタイミングを計る。
間も無くドラグーンが私の潜んでいる真上を通過する。その時が好機!
やがてワイバーンの咆哮が大きくなり始めた。近づいてきた。私はピクリとも動かず待った。
やがて巨大な黒い影が後ろから前へ通過した。まだ撃たない。そして再度、影が通過した瞬間、発砲。
先程、飛んでいったワイバーンの斜め上に付いていたワイバーンに赤い花が咲いた。
ワイバーンは猛烈な勢いで飛び抜けていき、そのまま木々の中へと落ちて逝った。
そして後ろで聞こえた轟音に竜騎兵が降り返り、ワイバーンを空中でホバリングさせた所へもう一発。
発砲!轟音と共に飛んで行く弾丸は命中して空中でのたうって落ちて行く。
ドラグーンは後2騎残っている。今ので位置がバレた。この辺りを焼き払いに来るぞ。
狙撃姿勢から跳ね起きながらバレットを掴んで走り出す。ワイバーンの咆哮が近づいてくる。
1騎は後ろからだがもう1騎は正面から来た!“ブレスが来るぞ!”そう直感した瞬間、真横へ身を投げ出した。
直後、太い火焔が地上を舐めるように焼き払う。上手くブレスを避けて丸焼きは避けれたが、ギリースーツに火が付いて大慌てでギリースーツを脱ぎ棄てた。
あ、危ネー。脱ぎ捨てなかったらローストチキンになる所だったぞ。
ギリスーツを脱ぎ捨てていると頭上を巨大な黒い影が掠めていく。
そして後ろから再びブレス。背中に炎の熱を感じながら駆ける。
ワイバーンの翼から巻き起こる風を体に受けて転びそうになる。
まずいな。炎に挟まれた。しかも今のでしっかり此方の姿を見られた。
だが、手にはしっかりバレットを握っている。銃は最後まで手放さない。チャンスはある。
前と後ろからの一騎ずつ。挟み撃ち。周りは炎に囲まれている。赤々と炎が燃え盛っている。まるで葬火だな。黒煙がジョン・ドゥを全身を包み込む。
ワイバーンが包囲するように上空旋回して飛び回っている。ワイバーンの咆哮が響き、時折地上へブレスを吐く。
炎と黒煙が立ち込めるそんな中、バレットをしっかり構える。
黒煙が立ち込める、押し寄せてくる炎と熱気に耐えつつ狙撃のチャンス機会を窺う。
またワイバーンが迫りつつある。ジョン・ドゥはその場から動かない。
ワイバーンの咆哮と翼の風切り音が一体となり威圧するように響き迫って来る。
“ココだ!!”ジョン・ドゥは右手の指が引き金を引き、銃口からマズルフラッシュの閃光が煌めく。
黒煙で見えないが確実に致命傷を与えた。直後、地面に何かが落ちた震動を響く。
そして後ろから大量の熱気と火の粉が襲い掛かった。燃えあがるような熱さが全身を包んだが直後、風圧が黒煙と火の粉を吹き飛ばしながらジョン・ドゥの眼前を黒い巨体が通過した。
直後、引き金を引いた。そう。黒煙で向うは此方が見えない。だがコッチは一瞬でも見えたら落とせる。
発砲と同時に転がるように炎の外へと出た。煙に名一杯咽びながらも空を見上げ、周囲を見渡して警戒する。
――――どうやら、撃ち落とせたようだ。7騎のドラグーン相手にたった1人で戦い全て撃墜。
向こうでならシルバースターモノの活躍だな。伝説、作っちまったぜ。
「Yippee-ki-yay、ざまぁみろ、クソったれ」
まぁ、そんな事はどうでもいい。今すぐ逃げねば。ワイバーンのブレスで山火事になってきてる!
ヤベ、怒られる!と云うか退路!退路、何処だ!け、煙で咽る!バレットを担ぎ直しながら大慌てで山を駆ける。
頼もしい相棒の重みを感じながら脱兎の勢いで山の木々の中を駆け抜けて行った。
これが後にシモ・ヘイへやカルロス・ハスコックばりに戦果を挙げて雑賀衆のような鉄砲集団を組織し、率いて戦い抜いた【救国の魔弾の射手】と呼ばれるようになるスナイパーの伝説の始まりだったのである。