91.えへ、ばれた?
「コウジ兄ちゃん」
「どうしたミドリ」
「私たちって兄妹だけど、結婚しようと思えばできるんだよね、知ってた?」
「うん」
「私、こないだ知った」
「そうなんだ」
「私、小さい頃、お兄ちゃんの内の誰かのお嫁さんになるんだって言ってたんだよ。覚えてる?」
「あったな、そんな事」
「でも、その後、兄妹では結婚できないって知って、けっこうショックだったな」
「お気の毒」
「他人事みたいに。お兄ちゃんはショック受けなかったの?」
「俺は順番の方がショックだったぞ」
「順番?」
「ミドリのお婿さん候補の順番だよ。1番がツヨシ兄さんで、2番がハヤトアニキで、3番が俺だったからな」
「えーー、そうだったっけ?」
「そーだよ!」
「じゃ、今はコウジ兄ちゃんが1番!」
「またまた。とか言って、兄さんの前では兄さんに1番とか言うんじゃないの?」
「えへ、ばれた?」
「あのなあ。――まあ、でも」
「ん?」
「しないだろ、俺たち」
「何を?」
「結婚だよ。兄妹なんだから」
「でも、本当はいとこなんだよ」
「でも、血のつながり具合は本当の兄妹と一緒なんだから」
「つまんないの。――チャコなんか、兄弟の誰のお嫁さんになろうか今から悩んでるのに」
「6人いるからよりどりみどり――って、それ、悩む必要ないよな」
「どうして?」
「俺を1番にすればいいから!」
「お兄ちゃんったら……、じゃあ、お兄ちゃんは私とチャコだったら、どっちをお嫁さんにしてくれるの?」
「そりゃあ――」
「そりゃあ?」
「ミドリだよ!」
「またまた。とか言って、チャコの前では『チャコだよ』とか言うんじゃないの?」
「えへ、ばれた?」
「あーー、マネしたでしょ、もーー」