90.微妙な俺たち
「アニキ」
「なんだコウジ」
「僕らって、両親が2組4人いたようなもんだよね」
「そうだな。俺たち兄弟の両親ヤマトとミコ。姉妹の両親タケルとコト。父親同士、母親同士が一卵性の双子で、みんないっしょに暮らしていたからな」
「僕ら兄弟と姉妹は、いとこ同士なんだけれど、昔から本当の兄弟姉妹のようだったよね」
「ああ」
「知ってる? 僕らって結婚できるんだよ」
「俺とコウジがか?」
「あのさあ」
「分かってるよ。姉さん妹たちとだろ」
「兄弟姉妹なのに、結婚可能だなんて不思議だよね」
「日本の法律では、いとこ同士は結婚できるからな。俺たち兄弟6人と姉妹6人は、法律上はいとこ同士だ」
「でも遺伝上の血のつながりは本物の兄弟姉妹と一緒」
「両親が一卵性の双子同士だとそうなるんだとさ」
「実質、兄弟姉妹同士での結婚なんだけど、結婚しても法律違反にはならないんだよね」
「ま、道義的にどうなのかってところなんだろうな。本来、血のつながった兄弟姉妹は結婚できないから」
「僕らは血のつながった兄弟姉妹なのに、しようと思えば結婚できてしまうんだね」
「できてしまうんだなあ」
「できるけど、しちゃいけないのか」
「そういう事だな」
「微妙だね」
「微妙だな」