89.びみょーな私たち
「アカネお姉ちゃん」
「なあにミドリ」
「兄弟姉妹って結婚できないんだよね」
「そうね」
「でも、今日、学校で聞いたんだけど、いとこ同士なら結婚できるんでしょ。」
「うん、できるね」
「私たち姉妹6人と兄弟6人は、本当はいとこ同士じゃない。だったら、結婚できるんじゃないの」
「……。私たちの場合は、ちょっと特殊なのよ」
「とくしゅ?」
「私たち姉妹6人の両親と、兄弟6人の両親が、一卵性の双子同士の夫婦だという事は知ってるわよね」
「うん。私たち姉妹のタケル父さんと兄弟の父さんのヤマトおじさんが双子同士。それから私たちのコト母さんとミコおばさんが双子同士よね」
「ちょっと難しいかもしれないけど……。一卵性の双子というのは遺伝子が一緒なの。私たち姉妹はタケル父さんとコト母さんから生まれ、兄弟たちはヤマトおじさんとミコおばさんから生まれたけれど、それは同じ親から生まれたのと同じ事なのよ」
「何だかむずかしい」
「ごめんね、分かりにくかった? とにかく、いとこであるにも関わらず、私たち12人の血のつながり方は、本当の兄弟姉妹と同じなの」
「そうなんだ」
「でも――」
「でも?」
「法律上は結婚できるんだよ。ミドリが言ったとおり日本では認められているから」
「日本では? ダメな国もあるんだ」
「あるんだって」
「じゃあ、私たちは日本人だからいとこ同士で結婚していいの?」
「いいんだけど、私たちは本当の兄弟姉妹といっしょだから……」
「びみょーなんだね、私たちって」