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85.きれいにしてあげるね
今日は夏の大掃除。
兄弟たちは手分けして、家のガラクタを処分していた。
「ねえー、これ、どうしようか?」
アカネ(高2)が手に持っているのは、小さなクマのぬいぐるみ。
長女のアオイから始まって、次女アカネ、三女キイロ、四女ミドリ、五女モモコ、六女チャコと代々受け継がれてきた物だ。
けっこう汚れて、あちこちほころびている。
「チャコ、これ、どうする?」
アカネからぬいぐるみを受け取り、モモコ(小2)がチャコ(年中)に聞いた。
「とっとく」
「え、とっとくの?」
「うん」
「とっとくんだって」
モモコがアカネに言った。
「じゃあ、私がほころび直してあげるね」
モモコからぬいぐるみを受け取り、キイロ(中2)が言った。
その夜、ほころびをつくろわれたぬいぐるみと一緒に、キイロ、モモコ、チャコ(年中)がお風呂に入り、ぬいぐるみもまたきれいにしてあげたのであった。