81.誰が好き?
ダイゴ(年少)は給食も食べさせてもらえる事になった。
欠席の子の分を回して貰えたのだ。
グループは兄のタダシ(小1)と一緒。
ダイゴは1年生の女の子たちからも大人気だった。
「ダイゴ君、好きなもの何?」
「はっこうにゅう」
「よかったね、ちょうど今日、発酵乳だよ」
「タダシ君、どんなお兄ちゃん?」
「タダシ兄ちゃん? やさしいよ」
「へえーー、タダシ君、優しいお兄ちゃんなんだ」
同じグループのマロンが、「ふーん」というような顔でタダシを見た。
「ダイゴ君さあ、このお姉ちゃんたちの中で、誰がいちばんタイプ?」
「たいぷって?」
「誰が好きかってこと」
「だれがすきか……」
ちょうどその時、お昼の放送が始まった。
「これから、お昼の放送を始めます。今日の担当は5年、志武ミドリ……」
この日の担当は、タダシやダイゴの5年生の姉、ミドリだった。
姉の声を聞いて触発されたのか、ダイゴの答えは、
「僕ね、ミドリお姉ちゃんが好き」
だった。
「あー、ミドリちゃんかーー」
「ミドリちゃん、かわいいもんねー」
そっかーという感じで、ちょっとがっかりな感じの1年女子たち。
「タダシ君もさー、やっぱお姉ちゃんの事が好きなの?」
マロンがタダシに話をふった。
「好きも何も……、普通でしょ。姉弟なんだから」
「じゃ、好きなんだ」
「好きだよ」
タダシは、マロンを正面から見て言った。
もちろん、これはタダシの自分の姉の事を指しての「好きだよ」で、マロンもそれは分かっていたのだが、面と向かって「好きだよ」とタダシから言われ、マロンは顔が真っ赤になってしまった。
「マロンちゃん、顔赤いよ」
発酵乳を飲みながら無邪気にダイゴが言った。
「そ、そ、そ、そんな事ないよ。あ、ほら、ダイゴ君こぼしてるーー」
マロンはあわてて話題を変え、ダイゴの口元を拭いてやった。
「悪いね、ありがと。ほら、ダイゴもお礼言って」
「ありがとうマロンちゃん。僕、マロンちゃん好き」
「今、拭いてあげたから? ダイゴ君、気が多いね」
マロンの言葉にみんなは笑った。