73.おしくらまんじゅうスキンシップ
「ただいまーー」
ハヤト(高1)が学校から帰ってきた。
「おーー、お帰りーー」
ツヨシ(大2)が飛んできて、ハヤトを抱きしめた。
「よく無事に帰ってきたな。我がいとしい弟よ」
「な、なんだ兄さん、いきなり」
戸惑うハヤト。
「ツヨシ兄さんったら、今日はみんなにそれなのよ」
さっき帰ってきてツヨシに抱きしめられた――ちなみにちょっと嬉しかった――ばかりのキイロ(中2)が言った。
「いや、もっとみんなとスキンシップをとろうと思ってな。みんなが帰ってくる度に、抱きしめて迎えてやろうと思ったんだが」
「そうか、気持ちはありがたいが……。兄さん、気持ちだけでいいよ」
「そう遠慮するな」
ハヤトを抱きしめるツヨシの腕に力が入った。
「ほんとに気持ちだけでいいってーー!!」
ハヤトの声にも力が入った。
「ただいまーー」
アオイ(大1)とアカネ(高2)も帰ってきた。
「あら? 男同士で抱き合って何やってんの」
「ちょっとスキンシップの最中だ」
アオイに聞かれてツヨシが答えた。
「今日は私たちが1人帰ってくる度にこうしてるのよ」
キイロが姉2人に説明する。
「じゃあ、次は私たち?」
アカネが言うと、
「おう、じゃあ、2人一緒にな」
ツヨシはハヤトを放すと、両腕を広げて、アオイとアカネを抱きかかえた。
ちょっと抱えきれない。
「じゃあ、俺も手伝うよ」
反対側からハヤトが、アオイとアカネを抱きかかえた。
ツヨシとハヤトで、アオイとアカネをサンドイッチにしている形だ。
「じゃ、私もーー」
その外側から、キイロが抱き付いた。
「なになに?」
「なにやってんの」
声を聞きつけて、弟妹たちがみんな玄関に集まってきた。
「あ、面白そう。僕もやるーー」
「私もーー」
弟妹たちが次々外側から抱き付き、大きなかたまりになった。
アオイとアカネが声をそろえて言った。
「これじゃ、おしくらまんじゅうじゃん!」