71.粘土細工の匠
今日は、チャコ(年中)とダイゴ(年少)が通っている幼稚園の保育参観日。
兄姉の中で唯一都合がついたツヨシ(大2)が、幼稚園を訪れた。
幼稚園児たちの親だと、若い母親は20歳ぐらいだ。
19歳のツヨシとそれほど違わないが、父親となるともう少し年が上の場合が多い。
加えて、平日の昼間となると参観に来られる父親はほとんどいないので、若くて185cmと長身のツヨシは目立った。
「あの人、誰のパパかしら?」
と、若い母親たちがひそひそやっている。
ダイゴのクラスは、小麦粉粘土だった。
保護者と一緒に作品を作り、色も着ける。
マンガ家のツヨシはこういうの得意だが、ツヨシが作ってやるわけにはいかないので、ダイゴにメインで作らせる。
ダイゴの作品を見てツヨシは聞いた。
「ダイゴ、これは何だ?」
「キリン」
「(カバかと思ったぞ……)そうか。じゃ、これは?」
「ゾウ」
「(ブタじゃないんだな……)なるほど。で、これは?」
「犬」
「(い、犬なのか……。どう見てもミミズかヘビだが)なかなかうまいじゃないか」
ちゃんと誉めて伸ばす方針でツヨシはダイゴに接していた。
首を長くし、黄色い体に茶色の模様を付けたら、ちゃんとカバはキリンになった。
鼻さえ付ければ、ブタもゾウらしくなった。
ミミズかヘビだったものも、見事ダックスフンドに大変身。
「ダイゴ君、上手だね~~」
粘土細工リフォームの匠となったツヨシが裏方として尽力した甲斐あって、周りの友だちやお母さん方から作品を絶賛され、ダイゴは大得意だった。