70.ネットチャイドル志武じゃんぷ
モモコ(小2)はダンスが好きだ。
テレビやネットの動画を参考に、音楽をかけては自己流で踊っている。
「モモコ~~、それも撮ってネットで流すか?」
踊っているモモコを見てコウジ(中1)が聞いた。
「ほんと? やるやる!」
「一応、個人情報には気をつけて……。顔は隠そう。覆面アイドルということで」
目の部分だけを覆うマスクを着け、あとはコウジの描いた“志武おんぷ”のイラストと同じ衣装をモモコは身に着けた。
衣装はキイロ(中2)のお手製だ。
コウジの作った歌を歌いながら踊る。
それをビデオに収め、ネットにアップした。
ネット上は騒然となった。
アニメ絵だけだったネットアイドル“志武おんぷ”が現実に現れたからだ。
目元はマスクで隠しているものの、声の感じから、“本人”に間違いないだろうという事でネットの住人たちの見解も落ち着いた。
モモコ演じる実物の“志武おんぷ”が明らかに子ども(何しろ小2だ)なので、ネットチャイドル“志武おんぷ”という事で、アニメ絵の“志武おんぷ”とは区別されるようになった。
2本目、3本目の動画もアップするべく、モモコが踊ってコウジが撮影していると、チャコ(年中)も一緒に隣で踊り出した。
踊りといっても、リズムに合わせて結構ぴょんぴょん跳んでいるだけだったりするのだが。
「チャコも一緒に踊りたいの?」
「うん、踊りたい!」
モモコに聞かれて、チャコは元気に答えた。
「じゃあ、一緒にやろうか。コウジ兄さん、いいよね?」
「全然かまわないぞ。じゃあ、チャコにも何か名前を付けよう。“志武おんぷ”の妹分だから……」
嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねているチャコを見ている内にコウジは思いついた。
「“志武じゃんぷ”だ!」
覆面ネットチャイドル“志武おんぷ&じゃんぷ”姉妹は、ネット上で日に日に評判を高めていった。