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67.雨の日のお迎え

 朝の内は晴れていたのに、急に空模様が怪しくなってきた。

 天気予報でも1日晴れとの事だったが、最近では地球温暖化の影響なのか、局地的に雨が降る時がある。

「あの子たち今日カサ持って行かなかったから、迎えに行った方がいいかな」

 アオイ(大1)はカサを4本持って、小学校に弟妹たちを迎えに行った。

 案の定、途中で雨が落ちてきたので、迎えに出て正解だった。

 幸い、今日は全学年下校時刻が同じ曜日。

 多少の差はあれ、どの学年の子たちも児童昇降口からランドセルを背負って出てきた。

「あ、お姉ちゃんだ」

 最初に出てきたのはタダシ(小1)だった。

 アオイの姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってきた。

「お帰り。今日はちゃんと先生にプリント渡した?」

 カサを渡しながらアオイがタダシに聞いた。

「うん、ちゃんと渡したよ」

 カサを開きながらタダシが答えた。

「タダシ君、バイバ~イ」

「あれ、タダシ君のママ?」

「きれーい」

「ずいぶん若いね」

 タダシの同級生たちが声をかける。

「違うよ。いちばん上のお姉ちゃん」

「タダシ君って、ミドリちゃん、モモコちゃんの他にもお姉ちゃんいたの?」

 タダシが12兄弟だという事を知らないのだろう、姉が3人も居る事に驚いている子も居た。


 次にモモコが出てきた。

「あ、アオイお姉ちゃん」

 モモコも嬉しそうにアオイに走ってきた。

「お帰り、はいカサ」

「ありがとう」

 モモコもカサを差す。


 ヒロシが出てきた。

「アオイ姉ちゃん。来てくれたの」

「そ。嬉しい?」

「うん、まあ」

 小4ぐらいになると、さすがに走って姉のところには来ない。

 友だちの目も気にしてか、家にいる時よりちょっとよそよそしい感じだ。


 最後にミドリが出てきた。

「お姉ちゃん、ありがとう、迎えに来てくれて」

「どういたしまして。あ!」

 ミドリにカサを渡そうとして、アオイは声を上げた。

「どうしたの?」

「カサ4本しか持ってこなかった。4人迎えに行くからって思って自分のカサ忘れちゃった」

「じゃあ、アオイお姉ちゃん僕と入ろうよ」

 タダシが言った。

「入れてくれる? ありがと」

「らぶらぶ相合ガサだね~~」

 タダシは嬉しそうだ。


 小学生用のカサは小さい。

 アオイがカサを持って、タダシが濡れないように差してやっていたので、家に着く頃にはアオイは体の半分がびっしょりになり、体も冷え切ってしまった。

 さっそく風呂に入る。

 直ぐにタダシが入ってきた。

「お姉ちゃん大丈夫? 冷たくなっちゃった?」

 タダシが濡れた方のアオイの肩をさすった。

「僕もマッサージするよ」

 ヒロシも入ってきた。

 外ではちょっとよそよそしかったが、ヒロシもまた、濡れているアオイを心配していたのだ。

「ありがと。お姉ちゃん思いの弟が2人もいて、私は幸せだわ~~」

 アオイが言えば、タダシもまた、

「僕もお姉ちゃんがいて幸せ~~」

と言い、ヒロシも

「僕も~~」

と、学校での時とは違った甘えた声を出した。

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