64.見参! カメンダーマスク
「俺は正義のヒーロー、カメンダーマスク!」
怪人に改造されそうになったステージ上の子どもたちを助けに現れたのは、子どもたちの英雄カメンダーマスクであった。
客席の子どもたちから一斉に歓声が上がった。
戦闘員たちは、抱きかかえていた子どもたちを降ろすと、カメンダーマスクに飛び掛っていった。
カメンダーマスクは、かかってくる戦闘員たちを次々になぎ倒した。
「アニキどれかな?」
観客席のヒロシ(小4)が言うと、
「あ、今やられたのがそうだよ。さっきダイゴを抱っこしてたから」
ミドリ(小5)が指差して兄弟たちに教えた。
カメンダーマスクと怪人の1対1の戦いになった。
カメンダーマスク有利。
あと少しで倒せそうだ。
その時。
「カメンダーマスク、これを見ろ!」
別の怪人の声がした。
ステージ上の子どもたちは、1か所に集められ戦闘員たちに取り囲まれていた。
そして新たに登場した2人目の怪人が、子どもを1人抱き上げていた。
その抱き上げられているのはダイゴ。
顔は満面の笑みで嬉しそうだ。
「カメンダーマスク。おとなしくするのだ。さもないと、子どもたちがどうなるか」
2人目の怪人が言った。
「おのれ、ひきょうだぞ」
「わははは、何とでも言え!」
もう少しでやられそうだった1人目の怪人も、突然元気になり、カメンダーマスクを痛めつけ始めた。
カメンダーマスクピンチ!
「カメンダーマスク!」
「がんばれーー」
会場の子どもたちの声援がひときわ大きくなった。
「待ちなさい!」
若い女性の声がした。
ステージ上の一段高くなっている所に、女性戦士が登場していた。
「何者だ?」
怪人に問われ、女性戦士は答えた。
「私は、カメンダーマスクのパートナー、カメンダーレディ!」
「あ、カメンダーレディだ!」
「テレビより早く登場した!」
タダシ(小1)とチャコ(年中)が叫んだ。
すでに雑誌の最新号でその写真は確認済みだったが、実物がテレビより早くヒーローショーに登場したのだ。
カメンダーレディのマスクは口元が露出している。
「ねえ、あれって……?」
「もしかして、アカネ姉さん?」
キイロ(中2)とコウジ(中1)が叫んだ。
背格好や口元からカメンダーレディのスーツを着ているのが女性である事は分かる。
たとえ一部でも、兄弟の顔の見分けは直ぐにつく。
まちがいなく、カメンダーレディのスーツアクターはアカネだった。