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56.だって男だもん

 スーパー銭湯の女湯にアオイ(大1)とアカネ(高2)が浸かっていると、幼い声をかけられた。

「こんにちは」

 声のした方を、アオイとアカネが見ると――。

 湯気の向こうに見えたのは、幼稚園年少クラスでダイゴと同級生のアンナだった。

「あら、アンナちゃん」

「よく、私たちのことおぼえてたわね」

 以前、アンナはスーパー銭湯の男湯で、ダイゴと会っていた。

「今日ダイゴくん来てないの?」

 アンナは、てっきり今回もダイゴが女湯に入っているものと思ったようだ。

「来てるわよ」

「あ、でも男湯の方だけどね」

「なんだ、そうなんだ」

 アンナはちょっとがっかりした様子だった。

「一緒に入りたかったの?」

 アカネに聞かれると、アンナはうなずいた。

「じゃあ、パパと一緒にまた男湯に行っちゃえば?」

と、アオイ。

「今日、ママと来たから。パパはお仕事」

 アンナの直ぐ近くにいる若い女性がアンナの母親だ。

 アオイとアカネは会釈した。

「姉さん、そろそろ私たち時間だよ」

 浴室内の時計を見て、アカネがアオイに言った。

「そうだね。――アンナちゃん、私たちもう出るね。ダイゴたちも男湯出るころだけど?」

 アオイがアンナに言ったが、

「アンナ来たばかりなの」

と、アンナは残念そうだ。

「じゃあ、また今度ね」

 アオイとアカネは、アンナ母子に挨拶すると、4人の妹たちにも声をかけて浴室を出た。


 広々とした休憩室の畳の上では、先に6人の兄弟たちが来てくつろいでいた。

 もうソフトクリームを食べている。

「あーー、ずるーい」

 それを見て、最初にソフトクリームを食べたいと言い出したキイロ(中2)が言った。

「ずるくないって。ほら、買ってこい」

 ツヨシ(大2)が財布をキイロに渡した。


 チョコレート、バニラ、ミックス、ストロベリー、抹茶、マンゴー――、姉妹たちもそれぞれ好みの味のソフトクリームを購入した。

「ダイゴ、そういえばアンナちゃんに会ったわよ」

 アオイが、口の周りをソフトクリームだらけにして食べているダイゴに言った。

「え?」

 ダイゴがちょっと、びくっとする。

「僕もう今日はお風呂入らないよ」

「ふふふ、もう『女湯入れ』って言わないから大丈夫よ」

 アカネがダイゴの口の周りを拭いてやりながら言った。

「ダイゴ、お姉ちゃんたちと入るのは平気なのに、どうして女湯はいやなの?」

 ミドリ(小5)がたずねた。

「だって男だもん」

 ダイゴの答えは単純明快だった。

「そりゃそうだよ。僕だってやだもん」

 弟に同意してタダシ(小1)が言い、

「確かに」

「それもそうか」

と、なごやかに笑う12人であった。

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