53.「サウナ」は「風呂」で「湯気の部屋」
志武12兄弟姉妹は、スーパー銭湯に来ていた。
先日来た時、女湯に入ったダイゴ(年少)も、今日はずっと男湯だ。
前回、多くのお姉さんたちに囲まれて圧倒されてしまったので。
ハヤト(高1)、コウジ(中1)、ヒロシ(小4)の3人はサウナに入っていた。
「ふー、汗がどんどん出るなー」
と、コウジが言えば、
「もうちょっとがんばるぞーー。これもしゅぎょうだ」
と、ヒロシも応じる。
「子どもって“しゅぎょう”が好きだよなーー」
ハヤトが言うと、
「アニキだって高校生なんだから、まだ子どもみたいなもんだろ」
とコウジが言った。
そう、ハヤトだけは、時々弟妹たちからアニキと呼ばれているのだ。
「まーな。ところでさ、サウナ風呂って言い方、重複した言い方だって知ってたか?」
「ちょうふく?」
とつぜんの聞き慣れない表現に、ヒロシがハヤトに質問する。
「ダブってるって事さ」
「『馬から落ちて落馬した』みたいな?」
今度はコウジが兄に問うた。
「そう。もともと風呂の“風”は“湯気”で“呂”は“部屋”って意味だったんだと。だから、風呂は“湯気の部屋”。つまりサウナって意味の言葉だったんだ」
「へえー、アニキなかなか詳しいね」
コウジとヒロシがちょっと尊敬の眼差しでハヤトを見る。
「たまたま、こないだ高校の歴史で習ったんだよ。アカネ姉さんが以前“湯かたびら”の話をしていたと言ってたろ? 湯かたびらもその時着ていたんだとさ。汗を吸ってくれるようにな」
「へえーー」
汗をだらだら流しながらコウジが相槌打った。
「アニキところでさ」
真っ赤な顔でヒロシ。
「?」
「話終わった? もう出ていい?」
「おう、出ようぜ出ようぜ」
思いのほか話し込んでしまい、3兄弟はちょっとふらふらになりながらサウナ室から出た。