51.水着きてた?
「なんかさー、一時期、修学旅行のお風呂で水着きて入るのが問題になったんだって」
キイロ(中2)とヒロシ(小4)とタダシ(小1)で入浴している時、キイロが言った。
「水着きて? なんで」
ヒロシが不思議がる。
「はずかしいから」
キイロが答えた。
「だって、男女別なんでしょ? なんではずかしいの」
「たとえ、男同士、女同士でも、はずかしい人ははずかしいのよ」
タダシの疑問にキイロが答える。
「お姉ちゃんが小学校だった時の修学旅行はどうだった?」
「ヒロシも6年生になったら行くもんね。水着は禁止だったわよ。他のお客さんの迷惑になるからって。でも具合が悪い子以外は、みんな服を脱いで普通に入ってたわ」
「男湯も?」
タダシが聞いた。
「男湯も。――って、知らないわよ、見てないし」
「あ、そうか。男女別なんだもんね。いつもお姉ちゃんたちやチャコと一緒に入っているから、それが当たり前になってたよ」
「まあ、うちはそうだけどね。あ、でもタダシが幼稚園の時のお泊り保育では、男女でお風呂別だったでしょ?」
「うん別だった。でも――」
「でも?」
「ようち園の先生が一緒に入ったよ。水着もきてなかった」
「へえ、そうなんだ。ヒロシの時はどうだった?」
「えー、ぼくの時は……」
「時は?」
「むかし過ぎて忘れた」
「むかしって、ちょっと前の事じゃない」
がくっとなってからキイロがヒロシに言う。
ヒロシが逆に聞いた。
「じゃあ、お姉ちゃんの時はどうだったの?」
「あたし? えー、あたしの時は……」
「時は?」
「えへ、やっぱりむかし過ぎて忘れちゃった」
こんどはヒロシとタダシががくっとなった。




