49.しゅぎょう
アカネ(高2)、チャコ(年中)、ダイゴ(年少)で入っていた冬のお風呂。
「そろそろ出ようか。あ、そうそう湯冷めしないように、ちょっと待って」
アカネは、シャワーを湯から水に切り替え、自分の手のひらに当てて温度を確かめた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
ダイゴが聞いた。
「水を浴びてから出ると、湯冷めしにくいのよ」
「そうなの? 何だかかえって寒くなっちゃいそうだけど」
チャコが言う。
「やってみるから。じゃあ、チャコからね」
アカネは、手でチャコの脚をこすりながら、そうっとシャワーの水をかけた。
「あん、冷たい。それに、ふふ、なんだか、きゃは、くすぐったいよ」
チャコは身をよじった。
「はい、おしまい。じゃ、今度はダイゴね」
「冷たくない?」
「そりゃ、冷たいわよ」
「こわい」
「こわくないから」
アカネはダイゴを自分のひざに抱くと、つま先からそっと水をかけてやった。
「ほら、大丈夫でしょう?」
「うん」
「もうちょっと上までかけるね」
「うん、平気」
「はい、おしまい」
「もう、おしまい? もっと大丈夫だよ。ぼく、しゅぎょうする。こないだテレビで、滝で頭から水かぶるのやってるの見た」
「お風呂で修行しなくてもいいのよ。それにダイゴ、まだ頭から水かけられるのできないんじゃなかった?」
「あ、そうだった」
ダイゴは頭をかいた。