46.みかん湯
冬の日の入浴。
コウジ(中1)とヒロシ(小5)が浴室に入ると湯に何かが浮かんでいた。
「なんだこれ?」
つまみ上げてヒロシが見る。
布にくるまれたこれは……、みかんの皮だった。
「今日はみかん湯にしてみたの」
アカネ(高2)が浴室に入ってきた。
「みかん湯?」
コウジが聞き返す。
「そう。みかんの香りでリラックスできるし、体もぽっかぽか。お肌にもいいのよ」
「お姉ちゃん、美容関係のこと好きだねー」
と、ヒロシが言えば、
「それ以上きれいになってどうすんの?」
と、コウジもちょっとよいしょする。
「やーねー、もーほんとのこと言わないで、照れるじゃない」
アカネが、弟たちの肩をぱんぱんたたいた。
「ページェントでも優勝したしね」
と、コウジ。
「男子版があったら、僕も出たかったよ」
ヒロシは力こぶを作って見せた。
「へえー、どらどら?」
アカネがヒロシの力こぶをナデナデする。
「どわ、や、やめてーー」
くすぐったがり屋のヒロシが早くも大笑いモードに突入の気配だ。
「おっと、いけない、いけない」
また大騒ぎを聞きつけて全兄弟姉妹たちが駆けつけてきては大変なので、アカネはヒロシのナデナデをそこまでにしておいた。