45.湯かたびら
夏の風呂上がりといえば、ゆかたを着る。
アカネ(高2)、コウジ(中1)、チャコ(年中)は、風呂から出て、ゆかたを着ようとしていた。
コウジは、自分が何か着る前に、まずチャコの体を拭いてやっていた。
ついで、下着を身に着けさせた。
コウジがチャコに浴衣を着せてやっていると、チャコがコウジにたずねた。
「兄ちゃん、どうして、やかたはやかたっていうの?」
「やかたじゃないよ、ゆかた」
「ゆかたは、どうしてゆかたっていうの?」
「えーー、それはだな……。姉さん、知ってる?」
しゃがんでチャコにゆかたを着せてやっていたコウジが、振り返ってアカネに聞いた。
ちょうど、アカネが自分の体を拭き終えたところだった。
「ありがとうコウジ。代わるわ」
コウジと代わり、アカネは自分がゆかたを着る前に、チャコにゆかたを着せるのを続けた。
コウジは、ゆかたを着始めた。
アカネが話し始めた。
「私も最近知ったんだけど……。忍者が着るあみあみのやつをかたびらっていうでしょう?」
「そうなの?」
アカネから「かたびら」といきなり言われても年中のチャコには分からない。
「コウジは知ってる?」
「なんか聞いた事あるかも。くさりかたびらとか」
「そうそう。くさりでできているから、くさりかたびら。ゆかたはね、昔は『湯かたびら』っていったんだって」
「湯かたびら?」
「昔は、服を着てお湯に入っていた時があったのよ。お湯に入る時着ていたから『湯かたびら』。それが短くなって、『ゆかた』になったんだって」
「へーー、そうなんだ。姉さんよく知ってるね」
「一応、生徒会長ですから」
「それは関係ないと思うけど。あ、僕、代わるよ。姉さん、湯冷めしちゃう」
ゆかたを着終えたコウジは、再びアカネと交替した。
「そうよね。さんきゅ」
アカネも風呂から出たままだったその身に、やっと湯かたびら――ゆかたをまとい始めた。