334.変身のススメ3
「ファイタス、さっき“いろいろ”って言ってたけど、他にも何かあるの?」
「おう、ミドリ。ちゃんと先生の話聞いてたな。エライ、エライ」
ファイタスは、ポケットから小さな箱を取り出し、テーブルの上に置くとふたを開けた。
ツヨシとミドリが額をくっつけるようにして覗き込む。
中には小さな銀色の玉が入っていた。
まるでパチンコ玉だ。
全部で12粒。
だが、ファイタスがわざわざパチンコ玉を届けに訪ねて来たとは思えない。
ツヨシとミドリは、箱の中の銀の玉を、それぞれ手に取って見た。
よく見ると、銀色の小型メカだった。
「これは?」
「ああ、ツヨシ。それはな、通信機だ」
「通信機だと。この小さいのがか?」
「俺たちの世界の方が、おまえたちのこの世界より科学が進んでいる。これはな、手術で頭に埋め込むんだ。そうすると、埋め込んだ者同士、心で思うだけで会話ができる」
「頭に手術で埋め込むなんて、ちょっとな……」
「ははは、何言ってんだミドリ。おまえたちにはチャコがいるじゃないか」
「チャコ……? あ、そうか」
ミドリは、直ぐに思い当たった。
ツヨシも気付いた。
チャコの融合能力を使えば、手術をしなくても、簡単に体内に物を埋め込んだり取り出したりする事ができるのだ。
「ザンビリオンの時も、ボンバーマスクの時も、おまえたちは恐らく連携プレーで戦っていたんだろう? でも、お互いの連絡手段が無くて、不便だったんじゃないか?」
ファイタスの言う通りだった。
ザンビリオンの時、ハヤトの耳の中に居た者たちはお互いに会話ができていたが、テレポートで外に出ていたアオイ、キイロ、ヒロシは、他の兄弟姉妹たちと連絡する手段が無かったのである。
ボンバーマスクの時も、ツヨシは他の兄弟たちと意思疎通ができなかた。
閉ざされた視界が回復した理由もその時は分からず、後で弟妹たちから聞いて知ったのだ。
「この通信機、電池はどれくらいもつの?」
「いい質問だなミドリ。先生ウレシーぞ。人間の体には『生体電流』といって、微弱な電流が流れているのを知っているか。この小型通信機はその生体電流を使ってバッテリーを充電するんだ。だから、半永久的に使用できる」
「へえーー、便利ね」
「最後は、これだ」
ファイタスは、USBのメモリースティックをテーブルの上に置いた。
「これは?」
「ツヨシ、そいつはな、バグストライカーの設計データだ」
「なんだって! ファイタス……、いいのか?」
「いいも悪いもない。このデータをザンビリオンに応用してくれ。多分、100%は無理だろうが、かなり反映できるはずだ。ザンビリオンが大幅にパワーアップすること、保証するぜ」
「ファイタス……、どうしてそこまでしてくれるの?」
「ミドリ。住む世界が違っても、俺たち人間にとってガイチュラが天敵である事に違いは無い。人間がガイチュラと戦うにあたって力になれるのなら、俺もこんなに嬉しい事はない。理由はな、ただそれだけだ」




