333.変身のススメ2
ミドリが淹れてくれたコーヒーを一口飲むと、ファイタスは話し始めた。
「知ってるぜ。スーパーロボット・ザンビリオン対ガイチュラ。また、覆面レスラー・ボンバーマスク対ガイチュラ。これ、お前たちだろ?」
「ああ、まあな」
ツヨシも別に隠し立てはしない。
志武十二兄弟姉妹の前世において、ファイタスは共にガイチュラと戦った男だ。
「そんで思ったんだけどな。お前たち不便じゃなかったか?」
「不便?」
「ああ。他の人間たちに見られている中でガイチュラと戦うに当たって、正体を隠すのが不便じゃなかったかという事だ」
「なるほど……。確かに不便といえば不便だったな」
ザンビリオンの戦いをサポートするに当たっては、兄弟たちが小さくなったり透明になったりして目立たないようにしなければならなかった。
ツヨシがボンバーマスクになった時は、覆面の視界を閉ざされた時、素顔をさらすわけにいかないためマスクを脱ぐ事ができなかった。
「それでな、今日はいろいろ持ってきたんだよ」
「持ってきたって?」
ツヨシがたずねる。
「これだ」
ファイタスは、腕時計のような物をテーブル上に出した。
焦げて壊れている。
「なに、これ?」
ミドリが顔を近づけた。
「お前たちが以前、前世で俺の世界に居た時な、変身ヒーローやってた事があるんだよ」
「「変身ヒーロー?」」
ツヨシとミドリの声がハモる。
「ま、これは前世の時のツヨシから聞いたんだがな。このブレスレットに、お前たちの超能力を“仕込んで”、一瞬で顔も含めた全身を戦闘服で覆えるようにしていたんだ。正体隠しと能力強化の一石二鳥になっていたんだな」
ミドリがブレスレットを手にとった。
「でも、これ壊れているじゃない」
「まあ……、それはおまえたちの最後の戦いの後に残っていたやつだからな」
いくら生まれ変わっているとはいえ、やはり兄弟たちが命を落とした時の話は、ファイタスも言いにくそうだった。
「おまえたちは、今後もガイチュラと戦っていく事になるだろう。これはもう運命としか言いようがない。しかし、自分達の一般人としての生活だって守りたいだろう? だったら、今後は、前世でやっていたように、変身ヒーローになる事を勧めるぜ。そのブレスレットは参考にしてくれ」
「分かった、感謝する。ファイタス」