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319.ボンバーマスク1

 3人の家族連れが歩いていた。

 1人は20歳前後の青年。

 右手で花束を抱えている。

 もう1人は同じくらいの年齢の女性。

 左手に小箱を提げていた。

 もう1人はその若い男女の真ん中で両手をつないで歩いている男の子。

 3歳ぐらいか。

 3人が入っていった白い大きな建物は病院だった。


 5階の501号室にその男は入院していた。

 全身に包帯が巻かれ、仰向けに寝ている。

 立派な体格だ。

 歳もまだ若い。

 だが、体を思うように動かせないので本を読む事もできない。

 ただただ横になっているだけで、男は退屈していた。

 病室のドアがノックされた。

「どうぞ」

 男が答えると、先程の3人連れが入ってきた。

「よう、飛鳥あすか。元気か」

 3人の内の1人、20歳ぐらいの青年が言った。

志武しぶ。来てくれたのか」

 飛鳥と呼ばれた、病室のベッドに横になっていた男の顔が輝いた。

「飛鳥先輩、お久しぶりです」

 3人の内の若い女性が言った。

「おーー、アオイちゃん。ん? ――待てよ、という事は……」

 飛鳥は視線をアオイの背後に恥ずかしそうに隠れた男の子に移した。

「ま……、まさか、その子、オマエたちの? ふ、ふたり、ケ、ケッコンしたのかあ!」

 飛鳥が目を見開いた。

「何言ってんだ、違うよ。この子は俺たちの弟。ダイゴっていうんだ。ほら、ダイゴ、挨拶して」

 ツヨシがアオイの後ろに隠れているダイゴの手を引いて、飛鳥の眼前に促した。

 目の高さが、ちょうど一致する。

「こ、こんにちは」

 ダイゴが恥ずかしそうに言った。

「こんにちは……。いやあ……、てっきり俺はおまえたちが結婚したのかと……」

 ダイゴに挨拶を返した後、飛鳥は視線をツヨシとアオイに戻した。

 ツヨシとアオイは、病室にあった丸椅子をベッドに寄せて座った。

 2人が立ったままだと、視線を上に向ける飛鳥が辛そうだったからだ。

「俺たち兄妹なんだぞ。結婚するわけないだろ」

「もう、先輩ったら……」

 ダイゴを膝に抱いたアオイが苦笑する。

「だけど、おまえたち、本当は兄妹じゃなくていとこ同士なんだろ? 俺はてっきり……」

 志武12兄弟姉妹は、正確には6人兄弟と6人姉妹の組み合わせなのだ。

 兄弟6人と姉妹6人は、いとこ同士である(第89話参照)。

「それより怪我の方はどうなんだ、飛鳥」

 ツヨシが話題を変えた。

「ああ……、見ての通りさ。情けない」

 飛鳥の顔が曇った。

 彼の名は飛鳥竜太郎。

 職業はプロレスラーである。

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