315.ザンビリオン二弾
「にーに、感心している場合じゃないぜ、やつが来る!」
コウジが叫んだ。
ハヤトの右耳の中に残ったツヨシ、アカネ、コウジ、ミドリ、モモコ、タダシ、チャコ、ダイゴの8人は、全員手をつなぎ、アカネの透視能力を“共有”して、外の様子を見ていた。
セミ型からヤゴ型に姿を変えたガイチュラが、さきほど甲殻が爆発して飛散した時に巻き上げられた海底の砂に紛れながら、ザンビリオンに向かってきたのだ。
手をつないでいる列の端のアカネは、もう片方の手で耳の内壁に触れていた。
そうすれば、ハヤトにも透視能力が共有できる。
ハヤトもまた、共有したアカネの透視能力により、海底の砂煙の中からガイチュラが迫り来る事に気付いていた。
「先輩たち、奴はまだ生きています! こっちへ来る。回避を!!」
ザンビリオンマリンフォームの胸部パイロットとなったハヤトは索敵担当だ。
透視能力でガイチュラの接近にいちはやく気付いたが、レーダーにも迫り来る光点が映し出されていたので、ガイチュラの接近をリョウとマリに告げたのは、特に不自然な振る舞いというわけではない。
ハヤトはレーダーで捉えたガイチュラの位置を攻撃担当の頭部パイロット、マリに送った。
マリはその位置をターゲットにしてビーム砲を放った。
だがしかし、ビーム砲は外れた。
空中戦の時と一緒だった。
ザンビリオンは、ビーム砲を放つ一瞬、まずその両眼が輝く。
ガイチュラはその変化が危険である事を本能で敏感に察し、回避行動をとるのだろう。
「マリ、あいつにビームは駄目だ。ホーミングミサイルを射て!」
兄のリョウの指示で、マリはミサイル発射ボタンを押した。
マーメイドの姿を模したザンビリオンマリンフォームは、両胸がロケットのように大きくとがっている。
その両胸がホーミングミサイルとなっているのだ。
左右の両弾同時にホーミングミサイルが発射された。
と同時に、腰部パイロットの防御担当リョウは、ザンビリオンの尾びれを振って、その場を離れた。
ザンビリオンもまたガイチュラからの回避行動を取らなければ危険だ。
煙幕の中からヤゴ型となったガイチュラが姿を現した。
しかし、ザンビリオンに襲い掛かるというよりは、追ってくるミサイルを振り払おうと泳いでいた。
ザンビリオンはスカイフォームの時は腹から1発ずつミサイルを射つが、マリンフォームの時は両胸から2発同時に射てる。
マリは2発の軌道を別々に蛇行するようにセットし、予測されにくいようにした。
そのためガイチュラも、空中戦の時よりはミサイル回避に苦戦している様子だった。