314.ザンビリオン透視
「え、見えるって何が?」
アカネの問いに
「ヤゴみたいなのって、あのガイチュラでしょう?」
チャコと
「へえーーー、初めて見たあ」
ダイゴがはしゃぎながら答えた。
「チャコ、ダイゴ、見えるってどういう事だ?」
ツヨシが不思議がる。
「私もさっぱり……」
アカネが、チャコとダイゴの頭の上に置いた両手を離して、ツヨシに体を向けた。
「あ」
「僕、また見えなくなったあ!」
チャコとダイゴが大声を出す。
「む? ――と、いう事は?」
ツヨシはアカネの手を握った。
「あん、にーに、何?」
「! そうか、なるほど、分かった」
今度はツヨシまで大声を出した。
「にーに、一体どういう事?」
コウジが不思議がる。
「コウジもアカネの手を握ってみろ。分かるから」
「手を?」
アカネはツヨシと右手をつないでいるので、コウジはアカネの左手を握った。
「ああ、ホントだ!!」
コウジまで叫び声を上げた。
「一体、なに?」
「どうしたの?」
「私たちにも分かるように言って」
タダシ、モモコ、ミドリも、アカネと手をつないでいるツヨシ、コウジの周りに集まった。
「説明するより、やった方が早い。アカ姉、ミドリとモモコとタダシにも触ってよ」
コウジに促され、
「こう?」
と、アカネ自身わけの分からないまま、アカネはミドリ、モモコ、タダシをまとめて抱きかかえるようにした。
「「「ああーーー!!」」」
ミドリ、モモコ、タダシも大声を出した。
「おいおい、さっきから何なんだよ?」
耳の穴の中で大騒ぎされているハヤトが、とうとう問いを発した。
もちろん、坂野リョウとマリに聞かれないよう、内線マイクのスイッチはオフにして。
「そうだった、そうだった。アカ姉、アニキの耳の壁にも触って。どうも手で触らないとだめみたい」
コウジに言われ、アカネはしゃがんでハヤトの耳にも触った。
「おおーー、なるほどーー!」
と、今度はハヤト。
「んもーー、私が意味わかんないんだけど?」
アカネにだけ、何が起きているのか分からない。
「アカネ。実はな、アカネに手で触れられると、俺達も壁を透して物を見ることができるんだよ」
「え、にーに、ほんとなの?」
思わぬ能力に、その能力の持ち主であるアカネ自身がびっくりした。
「そうか――。それでさっき、チャコとダイゴの頭に私が触ったから、2人は外のガイチュラを見ることができたのね」
アカネにもやっと合点がいった。
「こんな形で能力の共有ができるとはな……。
実は気付いていないだけで、俺達の能力にはまだまだ隠された部分があるのかもしれない」
ツヨシが感慨深げに言った。