313.ザンビリオン命中
「マリ、さっきザンビリオンのビームがやつの甲羅にひびを入れている。
もう1発ぶち込めば、破壊できるはずだ!」
「そうね! もう羽も無いし、あいつも水の中では空中のように素早く動けない筈だわ」
マリンフォームのザンビリオン頭部パイロットとなったマリが、今度は攻撃を担当する。
胸部パイロットとなったハヤトが索敵、腰部パイロットとなったリョウが防御担当だ。
海底に仰向けに引っくり返り、もがくしかできないガイチュラに向け、ザンビリオンは両眼からビームを放った。
狙いは、さきほどリョウがビームを当てて亀裂を走らせたガイチュラの胸の甲殻だ。
マリの放ったビームは見事命中。
一瞬でガイチュラの全身に無数の亀裂が走った。
「や、やったの?」
自分がビームを命中させたガイチュラの動向を固唾を飲んで見守るマリ。
次の瞬間、ガイチュラの体は木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「すげえ! ガイチュラをやっつけたぞ」
離れたバスケットボール大の空気の塊の中にいるヒロシが歓声を上げた。
「お疲れ様です、マリ先輩」
ハヤトが1歳年長者のマリをねぎらう。
だが、そのハヤトに冷徹な現実を告げる声があった。
「いえ、まだよ、ハヤト」
アカネだった。
返事をしようとして、ハヤトは黙った。
ここで会話を始めると、リョウやマリに不審に思われてしまう。
さきほど、ハヤトがリョウやマリと内戦通話を再開させるに当たり、コウジがマイクの真空コーティングを解除しておいたのだ。
「そのまま黙って聞いて。
吹き飛んだのは、ガイチュラの外側だけ。
中から、別の姿となったガイチュラが現れてきている」
「ガイチュラの奴も、フォームチェンジできるのかよ?」
ハヤトへのアカネの言葉を隣で聞いていたコウジが忌々しそうに言った。
「アカネ、今度のガイチュラはどん姿なんだ?」
「そうね……、例えて言えば、ヤゴのような……。
恐らく、水中戦用に姿を変えたんだと思う」
ツヨシに答えるアカネ。
「じゃあ、あいつは、わざとザンビリオンに甲羅を破壊させて、その水中用の姿に変身したっていうの?」
ミドリが言うものの、答える者はいない。
判るはずもないからだ。
ミドリにしても、誰かに答えを期待して言ったわけではない。
「ヤゴって、どんな形なの?」
「あたしも見たいなあ」
薄暗がりの中で、ダイゴとチャコが言った。
当然の事ながら、ハヤトの耳の穴の中は――誰の耳の穴の中であってもだが――暗い。
そこ光をもたらしているのはミドリだった。
光を操る能力者であるミドリが、その全身をホタルのように光らせて光源となっているのであった。
「そうね、2人にも見せてあげられるといいんだけど」
アカネは、末の弟、妹の頭上にそれぞれ手を置いた。
「あれ? 僕、見えるよ」
「あ、ホントだ。あたしも見える」
ダイゴとチャコが嬉しそうな声を上げた。