311.ザンビリオン追撃
話は数分さかのぼる。
ザンビリオン腰部のコクピット内のパイロットを務める志武ハヤト。
そのハヤトの右耳の穴の中で交わされた、小さく小さくなった志武兄弟姉妹たちの会話だ。
「にーに、何か考えでも?」
「いや、待て」と発したツヨシにキイロがたずねた。
「ああ、今のヒロシの案でいこう。
作戦はこうだ。
アオイとキイロとヒロシで、外へテレポートする。
目立たないようにサイズは今の小さいままでな。
アオイのテレキネシスで3人で上空に浮かびながら、ヒロシが水滴弾をガイチュラに見舞うんだ。
ただし、ザンビリオンからは見えないよう、ガイチュラの背中からだけな」
アオイ、キイロ、ヒロシは、数ミリサイズのまま、ザンビリオンとガイチュラの上空にテレポートした。
このサイズなら肉眼にもレーダーにも捉えられない。
「よーし、そんじゃ早速……」
水滴弾を発動させようとするヒロシをアオイが制した。
「待って。ザンビリオンが攻撃態勢に入るみたい」
ちょうど、ザンビリオンがガイチュラにホーミングミサイルを放つ時だった。
ガイチュラはミサイルをかわしたが、ミサイルはホーミングシステムにより方向を変え、ガイチュラに命中した。
「当たったわ! これなら、ザンビリオンいけるかも?」
キイロはちょっと嬉しそうだ。
「キイロ、ヒロシ、ちょっと様子を見ましょう」
上空からミニサイズのアオイ、キイロ、ヒロシの3人が見守る中、ザンビリオンは2発目、3発目のホーミングミサイルを放った。
しかし、今度はガイチュラの振動波により、中間で爆破されてしまった。
「ああーー、残念」
悔しそうなキイロ。
「ヒロシ、やるなら、今よ!」
アオイが合図した。
「りょーーかいいい!!」
ヒロシが念じた。
彼らのはるか眼下の海面から、無数のパチンコ玉大の水滴が宙に浮き上がった。
続いて、それらの水滴は、意志をもっているかのように整列すると、ガイチュラの背後から超スピードで襲い掛かった。
たとえ水の粒といえども、超スピードで衝突すれば、その破壊力は絶大だ。
それが、無数に命中したのだ。
まともにくらったガイチュラは、あっという間に背中の4枚の羽をぼろぼろにされてしまった。
羽をこすり合わせる事による大音響攻撃と、空中に飛ぶという、2つの役割を担っていた羽を失い、ガイチュラは音を出す事も飛んでいる事もできなくなり、海に落下したのである。
「ど、どういう事だ?」
「いったい何が起こったの?」
不思議がる坂野兄妹に対し、ハヤトが叫んだ。
「状況分析は後にしましょう。一気に追撃して止めを刺すんです!」