310.ザンビリオン一矢
「兄さん、わずかずつではあるけどザンビリオンのボディーが、あの怪物の音響攻撃でダメージを受け始めているわ」
マリがモニターを見ながら兄のリョウに報告した。
「どれくらいだ?」
「1分当たり2パーセントってとこ」
「――てことは、100%まで50分。
あと1時間この攻撃を受け続けると、ザンビリオンがやばいって事か」
「兄さん、50分もこのままおとなしくアイツの音響攻撃を受けている気?」
「まさか。実は、ミサイルを見舞ってやろうかと思案していたとこさ」
「ミサイル?
でも、さっきビームを射った時は、高速でかわされちゃったのよ」
「忘れたのかマリ。
ザンビリオンのミサイルにはホーミングシステムがある。
一度ロックオンした標的は、命中するまで追いかけ続けるんだ」
「なるほど!」
「よし、射つぞ。
ミサイル発射!」
言うやいなや、リョウはザンビリオンのミサイル発射スイッチを押した。
ザンビリオンの腹部が開き、ミサイルが発射された。
例によって高速回避するガイチュラ。
ところが、ミサイルは方向を変え、かわしたと思って油断していたガイチュラに背後から命中した。
「やったぞ!」
「いけるわね、兄さん!」
ガイチュラからの音響攻撃も止まった。
「ようーーし、更に2発目、3発目をぶち込んでやる!」
リョウは立て続けに追加のミサイル2発を放った。
しかし、ガイチュラも今度は同じ手を食わなかった。
振動波を収束させ、ミサイルに向けて放射したのだ。
ミサイル2発は、ザンビリオンとガイチュラの中間で爆破された。
「く……、虫ケラの癖に、頭を使ってやがる」
リョウは歯噛みした。
ガイチュラはザンビリオンへの大音響攻撃を再開させた。
「ま、まずいわ、兄さん。
怒らせちゃったみたい。
攻撃のパワーが上がっている。
ザンビリオンの受けるダメージが、1分当たり8パーセントにアップしたわ」
「攻撃力さっきの4倍かよ……。
洒落にならんな」
ところが――。
唐突に、ガイチュラの大音響攻撃が止んだ。
それどころか、ガイチュラは海に向かって下降し始めたのだ。
正確には落下だった。
ついさっきまでザンビリオンに対して大音響攻撃をしかけていた4枚の羽がぼろぼろになっていた。
羽を失い、ガイチュラは音を放つどころか、空に飛んでいる事もできなくなったのである。
ガイチュラは海中に没した。
「ど、どういう事だ?」
「いったい何が起こったの?」
不思議がる坂野兄妹。




