309.ザンビリオン思索
ザンビリオンの3つのコクピット内の遮音システムは完璧だった。
セミ型ガイチュラの大音量攻撃にあっても、その影響は無かった。
ザンビリオンのセンサーが自動で判断し、適度な音量に変換してコクピット内にその音を流していた。
「マリ、ハヤト。
どうやらアイツはこの耳障りな音を武器として、敵を攻撃しているらしいな」
「でも、ザンビリオンの遮音システムは完璧ね。
この音響攻撃にもビクともしないわ」
坂野兄妹のやり取りを聞きながら、ハヤトは考えていた。
『確かに、今はザンビリオンの遮音システムが効いている。
しかし、あまり長い時間この音にさらされていると、ザンビリオンの機体に少なくない影響を受けるだろう。
アカ姉が超音波で敵を粉砕する攻撃を行うが、コイツも同じような攻撃手段をもっているのだ。
このまま、この音にさらされ続けるのはマズい。
かといって、ザンビリオンの攻撃はあのガイチュラの高速回避にかわされてしまう。
一体どうすれば……』
そこまで考えた時、ハヤトの耳に兄の声が聞こえてきた。
「ハヤト。
聞こえるかハヤト」
「その声は、にーに。
いったい、どうやって俺に話しかけているんだ?」
「今、ハヤトの耳の中にいるんだよ」
「え、耳の中?」
「小さくなって、テレポートしてきた。11人全員いるぞ」
「え、ホントかよ」
ツヨシとハヤトの会話に弟妹たちが割り込んできた。
「アニキ~~」
「聞こえるーー?」
「でも、ここだと外の様子判らないね」
「せっかくロボットの中に来たのに……」
モモコ、タダシ、チャコ、ダイゴが次々としゃべった。
「うわ、本当にみんないるんだな。――と、いけね。マイクのスイッチ、オフにしないと」
ザンビリオン内3つのコクピットはインターホンで常時会話できるようにつながっている。
「アニキ、心配ないよ。
マイクの周りだけ真空空間で包んでおいた」
「コウジ、準備がいいぜ」
空気が無ければ音は伝わらない。
「それにしても、どうやってあのガイチュラやっつけようか」
「あたしたちじゃなくて、ザンビリオンが倒さなくちゃいけないのよね」
アオイとアカネが思案する。
「俺が無数の水滴弾で全方向から撃てば、アイツは蜂の巣だぞ。全方向から撃つから、どう逃げたって当たる。ここにはいくらでも水があるしな」
「でもそれじゃ、ザンビリオン以外の誰かがガイチュラを倒したって判っちゃう」
ヒロシが息巻いたがミドリが制した。
「いや、待て」
ヒロシの言葉に、ツヨシにある案が浮かんだ。