30.むかしは
アカネ(高2)、キイロ(中2)、コウジ(中1)の3人で風呂に入っていた。
「知ってた? 昔の日本の銭湯って混浴だったんだって」
「混浴? 普通の銭湯が? 男湯と女湯の区別が無かったの?」
コウジがキイロに聞き返した。
「あ、それ、私も聞いた事あるわ」
「姉さんも? じゃあ、やっぱり本当なんだ」
「どういう事なの?」
キイロがコウジに説明を始めた。
「昔の銭湯って、今みたいに男女の区別が無かったんだって。だから、見知らぬ男女同士なのに、みんないっしょにお風呂に入っていたらしいよ」
「へえーー。僕らみたいに姉弟ならまだ分かるけど、それって抵抗あるな。恥ずかしいじゃん」
「昔の銭湯のお客さんって、ナチュリストみたいなもんだったのかな。そういうところって、昔の日本はおおらかだったのね」
「じゃあ、どうして混浴じゃなくなったの?」
今度はアカネが説明した。
「何回か禁止されたんだけれど、本格的に男湯と女湯が別れたのは、明治時代になって、日本に外国の文化が入ってきたからね。外国人が多くの男女がいっしょにお風呂に入っているのを見て驚いたっていう話だわ。当時の日本は外国に追いつこうとしていたから、外国人に驚かれるような事は無くしていったのよ」
「へえーー。じゃあ、もしそんな事が無かったら、今でも銭湯は普通に混浴だったかもしれないんだね」