306.ザンビリオン対峙
志武ツヨシ(大2)、アオイ(大1)、アカネ(高2)、キイロ(中2)、コウジ(中1)、ミドリ(小5)、ヒロシ(小4)、モモコ(小2)、タダシ(小1)、チャコ(年中)、ダイゴ(年少)の11兄弟姉妹は、太平洋上にテレポートしてきた。
キイロの瞬間移動能力によってだ。
全員、海上10メートくらいの高さの宙に浮いている。
アオイの観念動力によってだ。
その姿は、完全な透明というわけではないが、うっすらとしか見えない。
ミドリの透明化能力によってだ。
完全な透明にしなかったのは、お互いの姿が見えるようにとの、ミドリの配慮からだった。
姿が見えないと、観念動力を発動させる対象がはっきりしないため、アオイも11人をうまく空中に浮かせておくことができない。
彼らの斜め上空には、ザンビリオンとセミ型ガイチュラが対峙している。
どちらもまだ動かない。
「にーに、どうする。俺たちが先にガイチュラを攻撃するか?」
コウジが手刀を構えた。
その手刀を振れば、真空の刃がガイチュラを切り裂くだろう。
「待て。まずは、ザンビリオンの戦い振りを見てみよう。サポートにはいつでも入れる。できれば、ザンビリオンだけでガイチュラを倒してもらいたいからな」
そう答えながら、ツヨシも拳を握りしめていた。
やはり、弟ハヤトの事が心配だ。
その拳を振えば、凄まじい拳圧がガイチュラを吹っ飛ばすだろう。
「あ、ザンビリオンが動き出したよ」
モモコが指差した。
念じれば、その指先からは火炎が放射され、ガイチュラを焼き尽くすだろう。
「なんだろう。ミサイル射つのかな?」
「いやいや、やっぱ、ここはビームだろう」
タダシとヒロシは、ちょっとわくわくしている様子だった。
ザンビリオンの両眼が輝いた。
次の瞬間、2条の光線が、ガイチュラに向けて発射された。
光線は、正確にガイチュラを狙っていた。
しかし、光線が射抜いたのは、ガイチュラの残像にすぎなかった。
ザンビリオンの両眼が輝いた瞬間、ガイチュラが、ものすごいスピードで体1つ分だけ横に移動したのだ。
「今のは? あいつも瞬間移動したの?」
キイロが驚きの声を上げる。
「違うわキイロ。ものすごい速さで横に移動したのよ。あまりの速さのため、テレポートのように見えたのね」
そのスピードを捉える事ができたのは、11人の中では、超感覚をもつアカネ(高2)だけだった。
あともう1人、ザンビリオンのパイロットの内、高速能力をもつハヤト(高1)がガイチュラの動きを捉えていた。




