301.ザンビリオン搭乗
坂野ロボット研究所。
坂野兄妹の父、坂野剛造が所長を務めるロボット研究所だ。
志武12兄弟は、招かれて、坂野所長を中心とするプロジェクトチームが完成させたスーパーロボット「ザンビリオン」の前に立っていた。
身長は40m。
ファイタスの操縦する「バグストライカー」が30mに満たないサイズ(28m)なので、はるかに大きい。
ザンビリオンとバグストライカーの身長比は10:7。
バグストライカーを身長140cmの小学生とすれば、ザンビリオンは身長2mのプロレスラーだ。
身近な例で例えれば、長190cmのファイタスと、身長135cmの小4のヒロシぐらいの体格差である。
「ザンビリオンという名前の由来はね――」
口を開いたのは坂野剛造。
ここはザンビリオンの格納庫。
ザンビリオンの胸元の前にデッキがあり、そこに志武12兄弟、坂野親子らが並んで巨大ロボットの顔を見上げていた。
「――『三位一体』と、10億・兆を表す『ビリオン』からきているんだ。三位一体というのは、陸・海・空の3つのどの状況下においても1体で対応できるという事であり、ビリオンというのはそのまま巨大なパワーを表している」
「もともとは、サンミリオンという名前だったの。『三位一体』の『サンミ』と、100万を意味する『ミリオン』から」
父、坂野剛造の言葉に、娘、マリが続けた。
「ま、でも、サンミリオンより濁らせて『ザンビリオン』の方が強そうだろ? それで、名前を変えたのさ。ちなみに変えたのは俺」
マリの兄、リョウが説明を続けた。
「すごいなあ」
「かっこいい!」
小1のタダシと幼稚園年少のダイゴが歓声を上げる。
幼い男の子はロボットが大好きだ。
ましてや、本物の巨大ロボットが目の前に立っているのである。
「では、早速操縦訓練に入ってもらおう。リョウは第1コクピット、マリは第2コクピット、ハヤト君は第3コクピットにそれぞれ乗り込んでくれ」
既にリョウとその妹マリ、そしてハヤトはパイロットスーツに着替えていた。
「アニキ、しっかりな!」
「気をつけてね……」
ヒロシ(小4)は元気に、ミドリ(小5)は心配げに、それぞれ兄ハヤトを送り出した。
坂野所長に先導され、リョウ、マリ、ハヤトは乗り込み口に消えた。
キイロ(中2)が小声で言った。
「このザンビリオンとバグストライカー、戦ったらどっちが強いのかな?」
「ザンビリオン、大きいもんね」
「強そうよねーー」
アオイ(大1)とアカネ(高2)がやはり小声で答える。
「バグストライカー」という名前は、志武兄弟たちが暮らす今の世界では、世間的には“不明”という事になっている。
謎のロボットなのだ。
その名前どころか、実はバグストライカーは異世界の地球から来たのだという事までを知っているのがバレたら、志武兄弟たちも、たちまち世間の好奇の目にさらされる事になるだろう。