300.パイロットへのスカウト3
「もともと平凡に暮らしていた俺たちだったが、突然、宇宙からガイチュラという怪物がやってきて戦う羽目になってしまった。俺達の戦う理由はなんだ?」
「そりゃあ、生きるためだろ? だって、ガイチュラは人間の天敵なんだ。喰われるわけにはいかない」
ツヨシ(大2)の問いにハヤト(高1)が答えた。
「その通りだ。正義のためとか、平和のためとかいう前に、俺達は生きるために戦わなくてはならない。事実、ガイチュラがこの世界に出現し始めてから、少なくない人々が犠牲になっている。そして、俺達自身だって襲われた」
「もし、チカラに目覚めなかったら、私たちだって今ごろどうなっていたか……」
アオイ(大1)がツヨシの言葉を継いだ。
「ああ。だから、俺達は、何よりもまず、自分達自身が生き延びるために戦うんだ。でも、自分ために戦うという事だけでいいか?」
「そりゃ、だめだよ。だって仲のいい友達とかいなくなったら、悲しいもん」
モモコ(小2)が応じた。
「そうだな。極端な話、地球上で俺達12人だけが生き残ったとして……、そんな地球で暮らしたいか?」
「モモちゃんが言った通りだよね。寂しいし、そんなのつまんない。僕だってヤダ」
タダシ(小1)が返した。
「俺達が、悲しくなく、寂しくなく、暮らすためには、友達にも、周りの人にも生きていてもらうことが大事なんだ。だから、人を守るってこと、人のために戦うってことは、自分のために戦うってことと同じなんだな」
弟妹達がツヨシにうんうんとうなずいた。
「その、リョウ君とマリさんがもってきた話――。それだって、2人のお父さんが世の中の人のために作ったロボットを動かす手伝いをしようって話なんだろう? だったら、みんなのために戦う、つまり、自分のために戦うってことで、戦うという点では同じなんじゃないか」
「じゃ、にーには賛成ってことなんだな?」
ハヤトが確認した。
「ああ。――みんなはどうだ?」
ツヨシは弟妹達の顔を見た。
「僕、さんせーー。かっこよさそうだし」
「あたしもーー」
ダイゴ(年少)とチャコ(年中)にどこまで話が通じているかは分からないが、ともかくこの2人ははなから賛成であった。
「アニキ、怪我しないでよね」
「乗り物酔いもね」
「乗り物酔いは、小さい頃の話だろ!」
案じてくれる妹のモモコ(小2)とミドリ(小5)に、ハヤトは苦笑しながら答える。
「アニキが風邪とか引いて乗れない時は、俺を乗せてくれよ」
「そんで、ヒロ兄がおなか壊したりしたときは、僕ーー」
ヒロシ(小4)とタダシ(小1)はハヤトの補欠に立候補した。
「いざとなったら、俺達バックアップするよ」
「うん、テレポートでさっとアニキのこと助けに行くから」
コウジ(中1)とキイロ(中2)も賛成した。
「じゃあ、キマリのようね」
「明日、坂野先輩とマリにOKの返事しよっか」
アオイとアカネ(高2)も、ハヤトに賛意の笑顔を向けた。




