298.パイロットへのスカウト1
「なんすか? こんなところに呼び出して……」
高校の昼休み。
ハヤトは、先輩の坂野マリに呼び出されて校舎の屋上に来ていた。
眼下では先日巨大ガイチュラに破壊された校舎の修復工事が行われている。(270話参照)
「ハヤト君、この校舎を見てどう思う?」
「どう思うって……、ガイチュラさえ現れなければ、こんな事にはならなかったわけだし……。『ガイチュラどもめ、いなくなってしまえ』って思いますよ。そういうマリ先輩は? まさか校舎の修復工事の感想を聞くために俺を呼び出したわけじゃないでしょう?」
先日、坂野マリが志武家を訪ねたのをきっかけに、2人は「志武君」「坂野先輩」から「ハヤト君」「マリ先輩」と呼び合うようになっていた。(102話参照)
「私の父ね、実はロボットの研究しているの」
「ロボット?」
「こないだ、うちの高校がガイチュラに襲われた時かけつけてくれた巨大ロボットがいたでしょう? あんな感じのやつ」
「え、そうなんですか――?」
ファイタスが操るバグストライカーの他に、この世界にもロボットがあったとは。
「きたるべき危機に備えて、秘密裏に開発されていたんだけど……、ガイチュラが現れた事で、計画を早める必要が出てきたんですって」
「はあ……」
次から次へと、驚く事が提示される。
それにしても、なぜマリはハヤトにそんな秘密の事を打ち明けるのだろうか。
「それで、ハヤト君にお願いがあるの」
「お願い?」
「その……、私の父のロボットの……、パイロットの1人になってもらえないかしら?」
「ロボットのパイロット! 俺がですか?」
「だめかな?」
「駄目も何も……、話がイキナリ過ぎて……。第一、なんで俺なんですか?」
「それは……、父のロボットはパイロットが3人必要だからなの。2人は決まってるわ。あと1人がいなくて……。誰でもいいってわけじゃない。運動神経のいい若者でなければ……。それに、3人でチームワークがとれることも欠かせない」
「運動神経はまあ……、でも、チームワークたって、俺、その2人のこと知らないすよ」
ハヤトの背後から声がした。
「知ってるさ。1人は俺だ」
「?」
ハヤトは振り返った。
立っていたのは、ハヤトの姉アカネの先代の生徒会長であり、マリの兄でもある坂野リョウだった。(105話参照)
「坂野……リョウ先輩。じゃ、待ってください。もう1人というのは?」
ハヤトが見ると、マリが黙ってうなずいた。
「お願いハヤト君。私たちと一緒に、ガイチュラを倒すのに力を貸してもらえないかしら?」