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294.風よ光よ3

「俺、登って取ってくるよ」

「いや、コウジ。俺に任せておけ」

 シュウトは自分の持っていたかばんを、コウジの胸に押し付けた。

「シュウト、木登りなんかしたことあるのか?」

「ないけど……、あれぐらい、平気だろ」

 キイロの前でかっこつけたいのかもしれない。

 まあ、やりたいようにやらせておくかとコウジは思った。

 危なっかしい感じで、シュウトは木を登っていった。

 風船の引っかかっている枝の高さまで幹を登り、シュウトはそこから手を伸ばした。

「も、もう少しなんだがな……」

 懸命に手を伸ばすシュウトの声が震えている。

「シュウト君、気をつけて」

「ま……、任せてくださいよ、キイロさん」

 やっとシュウトの指が風船のひもに届いた。

 そこから注意深く人差し指を引っ掛け、ゆっくりと自身の方に風船を引っ張り寄せた。

「うまい!」

「いいぞ、シュウト」

 下からキイロとコウジが絶賛した。

「い……、言っただろ、任せておけって……」

 シュウトは片手に風船のひもを握ったまま、慎重に木を降りようとし始めた。

 片手では、なかなかうまく降りられなさそうだった。

 これがボールか何かだったら、下に落としてしまえば両手が空く。

 しかし、風船を放せば、空に飛んでいってしまう。

 木を降りるのに難儀しているシュウトは、見るからに危なっかしい。

「おい、シュウト、無理するな。危ないと思ったら、風船を放せ」

「そ……、そんな事できるかよ」

 コウジの言葉にもかかわらず、シュウトはあくまで風船を持って降りるつもりの様子だった。

 そんなシュウトの努力にもかかわらず、突然風船がパァーーンと割れた。

 枝か何かに引っかかったわけでもない。

 唐突だった。

 風船の中からは何やら白い粉が飛び出した。

「うわっ!!」

 シュウトはもろにその白い粉を浴びた。

 そして、幹をつかんでいた手を放してしまった。

 5~6メートルの高さから落ちたら、大怪我だ。

「危ない!」

 キイロはとっさにテレポートしていた。

 シュウトの間近に現れたキイロはシュウトの体に触れ、シュウトと共に地上まで再びテレポートして戻った。

 一瞬の出来事だった。

「う? ――こ、これは……」

 キイロは地面に両膝をついた。

「アネキ、どうした!」

「こないで!!」

 異変を心配して駆け寄ろうとしたコウジをキイロは制した。

「体がしびれるの。今の白い粉のせいよ」

 もろに粉を浴びたシュウトは既に気を失って倒れていた。

 キイロもシュウトほどではないが、粉を浴びてしまったのだ。


 くすくすくす……


 笑い声がした。

 幼い女の子の声。

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