28.優しくしてね
アオイ(大1)に背中を流してもらい終え、ツヨシ(大2)は言った。
「よし、じゃあ背中流すの交替しよう」
「私も流してくれるの?」
「ああ、お返し」
「優しくしてよ。ヒロシやタダシにやってもらうと、力まかせにやられるから、結構痛いのよね」
「分かった、分かった。こんなんでどうだ?」
ツヨシは、力加減に気を配りながら、アオイの背中を流し始めた。
「ねえ、ツヨシ兄さん」
「今日はずっとその呼び方か?」
「じゃあ、お兄ちゃん」
「おっと、今度はそっちか!」
「私も昔は、兄さんの事『お兄ちゃん』って呼んでたよね」
「そうだったな。今でもミドリから下の子は『お兄ちゃん』と呼んでいるぞ」
「私も『お姉ちゃん』って呼ばれてるよ」
「ああ」
「兄さんの事また『お兄ちゃん』って呼んじゃおうかな」
「好きにしろ」
「じゃあ、『ツヨシお兄ちゃん』」
「な、なんだ」
「えへへ、呼んでみただけ」
「アニキをからかうのも、いい加減にしろ!」
ツヨシはシャワーをアオイの頭からかけた。
「やだもう兄さん!」
「おっと、とっさの場合だとやっぱり『兄さん』に戻るな」
「ああー、試したでしょ。お返しーー!」
アオイは振り向き、ツヨシの持っているシャワーを取り上げると、ツヨシの頭からかけ返した。
「うわー、参った。やめろ、やめろーー」




