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288.見えないチカラ2

「食べる物と食べられる物の関係は、ずっと続いているのだ。海の小さなプランクトンを魚が食べ、魚を人間が食べる。土の中の栄養を植物が吸って大きくなり、それを牛が食べ、牛を人間が食べる。人間は食べる食べられる関係の、いちばん上にいる」

 男性が抜いた画用紙の下の画用紙に描かれていたのは、食物連鎖ピラミッドの絵だった。

 三角が描かれ、その三角が横に3つに区切られている。

 いちばん下の広い部分には草の絵が、下から2番目の部分には豚や牛など草食動物の絵が、いちばん上の小さな三角の部分にはライオンやオオカミなど肉食動物の絵が描かれていた。

「食物連鎖ってやつだな」

「へえーー、よく知ってるね」

「こないだ先生が言ってたぜ」

「ちゃんと授業聞いてるんじゃん」

「ったりめーだろ」

 ミドリとヒロシがこそこそ話している間にも、男性の話は続く。

「地球上で、この三角のもっとも上に位置する生物がいる。それは人間だ。人間は植物だろうが、動物だろうが、あらゆる物を食べる」

 ヒロシがまたミドリにささやく。

「これ一体なんの紙芝居なんだ? なんか学校の授業みたいじゃん」

「そうだねーー」

 ミドリも小声で同意する。

 男性が更に1枚画用紙を抜いた。

 そこには、気持ち悪い昆虫の絵が描かれていた。

 昆虫と判ったのは、体が頭・胸・腹の3つに分かれており、脚が6本あったからだ。

 昆虫の特徴を満たしている。

 しかし、見た事も無い昆虫だった。

 バッタのようなカマキリのようなクワガタのような……、たくましい後ろ脚をもち、前脚にはカマをもち、頭部には角が生えている。

 そして、気持ちの悪いまだら模様が全身に走っていた。

 紙芝居を見ている子どもたちからも、「うえーーー」「何これ? 気持ち悪い!」といった声があがった。

「おい、ねえね、まさかこれって……」

「ウン」

 ミドリとヒロシに緊張が走った。

「しかし今、地球には人間の上に位置する生物が現れた。それはガイチュラ! 人間の天敵! ガイチュラこそ、食べる食べられる関係――食物連鎖の最も上に君臨する生物なのだ!」

 ざわざわし始める子どもたち。

「がいちゅら? がいちゅらって……」

「たしかこないだ現れた、カブトムシやクワガタのおばけのことだよ!」

「なに、がいちゅらって……、僕たちガイチュラに食べられちゃうって事?」

「おじさん、なんでそんな事知ってるの」

 男性は、けっけっけっと歯を見せて笑い始めた。

「それは……、わしがそのガイチュラだからさ!」

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