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286.剛力と念力6

 ツヨシは自分に絡み付いていた学生達をふりほどいた。

 床に倒れる学生達。

 ツヨシは前方から近づいてくる3つの人影に気付いた。

 太った男が1人、痩せた男が1人、小柄な男が1人だった。

 ツヨシには彼らがガイチュラだろうと直ぐに察しがついた。

 なぜなら、さきほど倒した興梠こおろぎと同じ柄のスーツを着ていたからだ。

「驚いたぞ。まさか人間が我々の仲間を倒すとは」

 太った男が言った。

「それだけではない。我々の催眠術にもかからない。一体どういう事だ」

 痩せた男が言った。

「だが人間である事にかわりはない。人間は我々のエネルギー源。おとなしく我々の糧になるべきなのだ」

 小柄な男が言った。

「誰が、あんたたちの餌食なんかになるものですか」

 アオイが言った。

 アオイはツヨシの横に来ていた。

「威勢がいいな、人間のメス。だが、その威勢のよさが、いつまで続くかな」

 痩せた男の額の両側から突如2本の角が生えた。

 それらはみるみる長さを増し、鞭のようにしなってアオイに襲い掛かってきた。

 ガイチュラの触覚だ。

 だが、その触覚は突如、カーブを描いたまま空中で静止した。

「む? な、なんだ?」

 痩せた男の顔色が変わる。

 アオイが念力を放ったのだ。

「う、動けない」

 痩せた男は触覚だけでなく、全身の動きを封じられていた。

 カーブを描いたまま静止していた触覚が再び動き出した。

 しかしそれは、ガイチュラの意思で動いたのではない。

 アオイの力だ。

 2本の触覚はガイチュラの首にぐるぐるに巻き付いた。

「ぐ、ぐあああ……、よ、よせ」

 触覚は痩せた男の首をぐいぐい締め上げた。

 男は目を剥き、やがてものを言わなくなった。

 そのまま転倒。

 もう、2度と立ち上がる事はなかった。

「ぬう?」

「おまえら!」

 太った男と小柄な男が身構えた。

「やめておけ」

 ツヨシが言った。

「自分で判る。俺達は力に目覚めた。もはや、おまえ達は俺達の敵ではない。俺達の世界から立ち去るのだ」

 太った男と小柄な男の顔が怒りに歪んだ。

「人間の分際で生意気なあああああ!」

 太った男が、今度は、ツヨシに襲いかかってきた。

 その両手は、いつの間にか太く鋭い爪を生やしたガイチュラのものに変わっていた。

 突き出してきた爪がツヨシの顔に命中。

 しかしツヨシは微動だにしなかった。

「な……、バ、バカな!?」

「バカはおまえだったな」

 太った男の胸をツヨシは手の平で押した。

 それは軽い動きに見えたが、太った男は廊下のはるか向こうまで弾き飛ばされ、壁にめり込んでいた。

 そしてやはり、2度と動く事はなかった。

「まさか……、そ、そんな!」

 小柄な男の顔が恐怖に青ざめた。

 それを見下ろすツヨシとアオイ。

 背の高い2人から見下ろされ、小柄な男の恐怖感は更に増長された。

「うわあああああっ」

 小柄な男はスーツをびりびりに引き裂いてガイチュラの姿に変身した。

 興梠こおろぎと同じコオロギ型ガイチュラだった。

 そして羽根を広げると、窓ガラスを突き破って猛スピードで外へ飛び出した。

「待て!」

 ツヨシとアオイが窓に駆け寄ったが遅かった。

 ガイチュラは既に飛び去った後だった。

 ツヨシとアオイは振り返って廊下を見た。

 ガイチュラに操られていた多くの学生達が倒れていた。

 救急車のサイレン音が近づいてきた。

 誰かが通報したのだろう。

「にーに、どうしよう?」

「いろいろ聞かれても困るな。正直に答えたところで面倒な事になりそうだ。引き上げよう」

 2人は、そっとその場を後にした。

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