278.変形、融合、超電攻撃2
大カマキリのカマが木の幹に突き刺さった。
チャコの姿は消えていた。
大カマキリは、カマを木の幹に突き立てたまま、きょろきょろと三角の頭を振った。
チャコを捜しているのだ。
チャコとダイゴを捜しているのはコウジも同様だった。
ダイゴはどうなったのだろう?
草むらに隠れたのだろうか。
それでコウジの視界から消えたのだろうか。
だとしても、上空の大カマキリからは見えただろう。
なぜ、ダイゴは大カマキリに発見されなかったのだろう。
また、チャコはどうなったのだろう?
木の後ろに隠れたのだろうか?
それでコウジの視界から消えたのだろうか。
いや、木はフェンスに密着している。
木の後ろに隠れられるようなスペースは無い。
チャコとダイゴは一体どこへ消えたのか?
コウジがそんな事を考えている一瞬の間に、大カマキリは木の幹に刺さったカマを引き抜き、次の標的タダシに向かって飛び始めた。
「タダシ!」
またもコウジの叫び声が夕方の公園に響いた。
「えーい!」
タダシは地面の石を拾い、飛んでくる大カマキリに向かって投げ付けた。
石は真っ直ぐ大カマキリへ。
小学1年生にしてはなかなかのコントロールだ。
見事に命中――するかに見えたが、そうはならなかった。
石は空中で真っ二つに切断されたのだ。
大カマキリがカマを振るったためだった。
やはり、通常のカマキリではない。
「タダシ、そいつはガイチュラだ! 逃げるんだ!!」
しかし大カマキリはタダシの目前に迫っていた。
逃げられない。
大カマキリがタダシに到達するかという瞬間――
バチッと閃光が走った。
閃光の中心はタダシと大カマキリだった。
大カマキリがタダシに何かをした結果として起きた現象なのだろうか。
右手の甲を目元にかざしながら、コウジには訳が分からなかった。
閃光は直ぐに収まった。
「タダシーーーッ」
タダシのもとに駆け寄るコウジ。
チャコやダイゴの時と違い、タダシの姿は消えていなかった。
そこに呆然とした様子で立っていた。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
「カマきりは?」
「そこ」
タダシが指差した先の地面には――
黒焦げになった大カマキリが仰向けになって落ちていた。
「こ、これ……、タダシがやったのか?」
「分かんない……、夢中で……、気が付いたら、こうなっていた」
ぽつぽつとタダシは答えた。
「電撃だ……」
ファイタスの話では、異世界の地球においてタダシは電撃を放つ超能力者だったという。
その時のタダシの年齢は12歳。
今のコウジと同じ歳だ。
「まさか? ――と、言う事は……」
コウジは、先ほどダイゴが姿を消した辺りに慎重に歩み寄った。